石綿による健康障害防止対策の緊急的な対応について
基発第0715001号
平成17年7月15日
都道府県労働局長 殿
厚生労働省労働基準局長
石綿による健康障害防止対策の緊急的な対応について
過去に石綿含有製品を製造し又は取り扱う作業(以下「石綿取扱い作業等」という。)に従事していた元
労働者等に、肺がん、中皮腫等の健康障害が多数発生していることから、石綿による健康問題が社会的な
関心を集めているが、これまでの我が国における石綿の使用状況等から、石綿による健康障害が今後も増
加することが懸念されており、本課題への緊急的な対応が求められているところである。
このような状況に鑑み、石綿取扱い作業等従事労働者の健康障害防止対策の更なる徹底とともに、過去
に石綿取扱い作業等に従事していた退職者の健康管理の充実等を図るため、下記により、緊急対応を行う
こととしたので、遺憾なきを期されたい。
記
1 現に石綿含有製品を製造し又は取り扱っていない事業場であって石綿による健康障害が発生した事
業場への立ち入り調査等
現に石綿含有製品を製造し又は取り扱っていない事業場であって石綿にさらされる業務による労災認
定が行われたことがある事業場に対しては、速やかに立ち入り調査等による調査を行い、石綿取扱い作
業等を開始した後から現在までの間に石綿取扱い作業等に従事していた者に対する石綿障害予防規則
(以下「石綿則」という。)第40条に規定する健康診断(以下「石綿健康診断」という。)等による健康管
理の実施状況、石綿取扱い作業等従事労働者の把握状況等について確認すること。
2 現に石綿含有製品を製造し又は取り扱っている事業場への指導
ジョイントシート、シール材等の石綿含有製品を現に製造し又は取り扱っている事業場については、
石綿による新たな健康障害の発生を防止すること等を目的に、製造、使用等の禁止が猶予されていると
ころではあるが、同事業場に対しても、速やかに、監督指導又は個別指導を行い、石綿則等の関係法令
の遵守の徹底を改めて図ること。
3 石綿取扱い作業等に従事していた退職者の健康管理の充実
石綿取扱い作業等に従事していた退職者の健康管理の充実を図るため、石綿取扱い作業等を有してい
る事業場及び過去に石綿取扱い作業等を行っていた事業場に対して、石綿取扱い作業等に従事していた
退職者を把握し、当該把握された退職者(健康管理手帳所持者を除く。)に対する石綿健康診断の速やか
な実施に努めるよう、要請を行うこと。
また、事業を廃止する場合には石綿則第49条の規定に基づく届出義務があることを指導すること。
さらに、過去に石綿取扱い作業等を行っていたが、現在では廃止されている事業場において石綿取扱
い作業等に従事していた者等の健康管理の充実を図るため、報道発表、地方公共団体の広報誌等に別添
例の掲載を依頼する等の手法により、過去に石綿取扱い作業等に従事していた者に石綿健康診断の受診
の呼びかけを行うこと。
4 健康管理手帳制度及び労災補償制度の周知徹底
前記1から3の指導、広報等の機会をとらえ、関係部署が連携し、労働安全衛生法第67条に基づく健康
管理手帳制度及び石綿による疾病の認定基準をはじめ労災補償制度に関する周知を行うこと。
5 労働者、事業者等からの相談への的確な対応
各局署において、石綿に関する健康管理手帳制度、労災補償制度等に関する労働者、事業者等からの
相談に的確に対応するため、各局署の相談窓口の連絡先等を広報し、活用の促進を図ること。
また、特定の相談相手については、以下のとおり、対応する窓口があるので、相談の内容に応じ、こ
れらの関係機関を紹介すること。なお、労働者、事業主等が一般的な健康相談を受け付けている保健所
に相談することも考えられるので、当該管内の保健所等との連携に留意すること。
(1) 中央労働災害防止協会(事業者からの石綿のばく露防止対策に関する相談)
(2) 建設業労働災害防止協会(事業者からの建築物の解体作業等における石綿のばく露防止対策に関す
る相談)
(3) 独立行政法人労働者健康福祉機構の産業保健推進センター(産業保健関係者、石綿による健康障害
を受けられた労働者及びその家族からの健康に関する相談)
(4) 独立行政法人労働者健康福祉機構の労災病院(石綿ばく露歴のある者、その家族、開業医等からの
診断・治療、健康診断に関する相談)
6 労災補償の迅速・適正な実施等
石綿による疾病の労災補償に関しては、発症までの潜伏期間が長期にわたる等の特殊性があることに
鑑み、特に次のことに留意して対策を実施するとともに、医療機関の理解・協力を得るための対応も併
せて行うこと。
(1) 石綿による疾病については、病理診断に必要な検査を早期に実施する必要があることから、特に
計画的かつ、迅速な認定事務を行うよう努めること。
(2) 石綿による疾病については、ばく露作業への従事歴等の特定に困難をきたす事例もあるが、その
ような労災請求事案についても同僚労働者からの聴取調査等を基にばく露作業を推定する等により迅
速な認定に努めること。
(3) 医療機関に対する石綿による疾病の評定基準の周知を徹底して行うこと。
(4) 石綿による疾病に対する的確な対応が喫緊の課題となっていること等に鑑み、石綿による肺がん
又は中皮腫の患者(以下「アスベスト患者」という。)が療養している医療機関や総合病院等アスベス
ト患者が療養する可能性の高い医療機関であって、現在労災指定医療機関となっていないものに対し
て、労災指定医療機関の申請を行うよう積極的に勧奨すること。
7 関係団体等への要請等
石綿による健康障害防止対策への的確な対応に資するため、本省においては、別紙1から4により、業
界団体、関係省庁等に対して要請を行ったところである。
各局においても、関係業界団体等に対する要請を行うなどすることにより対策の一層の促進を図ること。
8 建築物の解体作業等における石綿ばく露防止措置の徹底
建築物の解体作業等における石綿ばく露防止については、湿潤化、保護具の使用等の対策を規定した
石綿則の周知、別途指示するところによる監督指導等を重点的かつ効果的に実施し、石綿粉じんの飛
散防止等の徹底を図ること。
9 使用等の禁止が猶予された石綿含有製品の代替化の促進
使用等の禁止が猶予されたジョイントシート、シール材等の石綿含有製品の代替化の一層の促進を図
るため、本省において、化学工業等の関係業界団体等に対する要請を行っているところであるが、各局
においても、関係業界団体等に対し、改めて、本取組の促進を要請すること。
10 その他
なお、石綿関連情報を以下のホームページに掲載しているので、活用すること。
アドレス:http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/sekimen/index.html
別紙1
別紙2
別紙3
別紙4
「石綿に関する健康管理手帳」の交付について
各種相談窓口の設置