安全衛生情報センター
昭和63年労働省告示第99号(労働基準法施行規則の規定に基づき労働大臣の指定する疾病を定める件の 一部を改正する件)(別添参照)が、昭和63年12月3日に公布され同日から施行されることとなった。 ついては、下記の事項に留意のうえ、その取扱いに遺漏なきを期されたい。
1.改正の趣旨 今般、「労働基準法施行規則第35条定期検討のための専門委員会」において定期的検討の一環として 業務上の疾病の範囲に関する検討を行った結果、ジアニシジンにさらされる業務による尿路系腫瘍(しゅ よう)を業務上の疾病として規定することとしたものである。 2.ジアニシジンの物理・化学的性質、用途等 ジアニシジンは、自然界には存在せず、工業的に合成される。通常はオルトジアニシジンを指し、化 学名は4,4'-diamino-3,3'-dimethoxybiphenylで、構造式は次のとおりである。
(1) 別名 ピアニシジン、ジアミノパラジメトキシジフェニル、ジメトキシベンジジン、オルトジアニシジン 等 (2) 物理・化学的性質 白色葉状結品で空気にさらすと酸化され紫色となる。 化学式 NH2(OCH3)C6H3C6H3(OCH3)NH2 分子量 244.30 融点 137〜138℃ 溶解性 熱水に可溶。アルコール、エーテル、アセトン、クロロホルム、ベンゼンに易溶 (3) 致死量・中毒量 経口投与-ラット LD50:1,920mg/kg 経口投与-ラット TDL0(toxic dose lowest 最小中毒量):13g/kg・52週 経口投与-イヌ LDLo(lowest published lethal doses 最小致死量):300mg/kg 経口投与-ハムスター TDL0:560g/kg・70週 (4) 中毒症状 接触性皮膚炎を起こす。粉じん吸入によりくしゃみを起こす。 (5) 用途 染料(ファストブルーBベース)中間体として使用される。その他亜鉛、チオシアネート、亜硝酸の 検出試薬として用いられる。 イソシアネート系接着剤やポリウレタン弾性体の成分としても使われる。 (6) 労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)上の措置 ① 製造の許可(法第56条) ② 特定化学物質等障害予防規則(昭和47年労働省令第39号):特別管理物質 3.認定基準について ジアニシジンにさらされる業務による尿路系腫瘍(しゅよう)の認定に当たっては、昭和51年8月4日付 け基発第565号「芳香族化合物のニトロ又はアミノ誘導体による疾病の認定基準について」の本文記の3 によって本省にりん伺することにしているので、留意されたい。