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屋外作業場等における作業環境管理に関するガイドライン
1 趣旨
本ガイドラインは、有害な業務を行う屋外作業場等について、必要な作業環境の測定を行い、その結
果の評価に基づいて、施設又は設備の設置又は整備その他の適切な措置を講ずることにより、労働者の
健康を保持することを目的とする。
なお、本ガイドラインは、有害な業務を行う屋外作業場等について、事業者が構ずべき原則的な措置
を示したものであり、事業者は、本ガイドラインを基本としつつ、事業場の実態に即して、有害な業務
を行う屋外作業場等における労働者の健康を保持するために適切な措置を積極的に講ずることが望まし
い。
2 屋外作業場等における作業環境管理の基本的な考え方
屋外作業場等においては、屋内作業場等と同様に有害物質等へのばく露による健康障害の発生が認め
られているため、屋外作業場等の作業環境を的確に把握し、その結果に基づいた作業環境の管理が求め
られているところである。
しかしながら、屋外作業場等については、自然環境の影響を受けやすいため作業環境が時々刻々変化
することが多く、また、作業に移動を伴うことや、作業が比較的短時間であることも多いことから、屋
内作業場等で行われている定点測定を前提とした作業環境測定を用いることは適切でないとされ、屋外
作業場等における作業環境の測定は、一部の試験的な試みのほかは実施されていなかったところである。
厚生労働省では、屋外作業場等の作業環境の測定及びその結果の評価に基づく適正な管理のあり方に
ついて調査検討を進めてきたところであるが、今般、「屋外作業場等における測定手法に関する調査研
究委員会報告書」がまとめられ、屋外作業場等については個人サンプラー(個人に装着することができ
る試料採取機器をいう。以下同じ。)を用いて作業環境の測定を行い、その結果を管理濃度の値を用い
て評価する手法が提言されたところである。屋外作業場等における作業環境管理を行うには、この手法
が現在では最も適当であることから、今後は、この手法による作業環境管理の推進を図ることとしたも
のである。
3 作業環境の測定の対象とする屋外作業場等
屋外作業場等とは、労働安全衛生法等において作業環境測定の対象となっている屋内作業場等以外の
作業場のことであり、具体的には、屋外作業場(建家の側面の半分以上にわたって壁等の遮へい物が設
けられておらず、かつ、ガス・粉じん等が内部に滞留するおそれがない作業場を含む。)のほか、船舶
の内部、車両の内部、タンクの内部、ピットの内部、坑の内部、ずい道の内部、暗きょ又はマンホール
の内部等とする。
測定は、以下の屋外作業場等であって、当該屋外作業場等における作業又は業務が一定期間以上継続
して行われるものについて、行うものとする。なお、「一定期間以上継続して行われる」作業又は業務
には、作業又は業務が行われる期間が予定されるもの、1回当たりの作業又は業務が短時間であっても
繰り返し行われるもの、同様の作業又は業務が場所を変えて(事業場が異なる場合も含む。)繰り返し行
われるものを含むものとする。
(1)土石、岩石、鉱物、金属又は炭素の粉じんを著しく発散する屋外作業場等で、常時特定粉じん作業
(粉じん障害予防規則(昭和54年労働省令第18号)第2条第1項第3号の特定粉じん作業をいう。以下同じ。)
が行われるもの
(2)労働安全衛生法施行令(昭和47年政令第318号。以下「令」という。)別表第3第1号若しくは第2号
に掲げる特定化学物質を製造し、若しくは取り扱う屋外作業場等又は石綿等(令第6条第23号の石綿
等をいう。)を取り扱い、若しくは試験研究のため製造する屋外作業場等((4)及び(5)に掲げる
ものを除く。)
(3)令別表第4第1号から第8号まで、第10号又は第16号に掲げる鉛業務(遠隔操作によって行う隔離室に
おけるものを除く。)を行う屋外作業場等
(4)令別表第6の2第1号から第47号までに掲げる有機溶剤業務(有機溶剤中毒予防規則(昭和47年労働省令
第36号。以下「有機則」という。)第1条第1項第6号の有機溶剤業務をいう。)及び特定化学物質障害
予防規則(昭和47年労働省令第39号。以下「特化則」という。)第2条の2第1号に規定する特別有機溶
剤業務(同令第36条の5に掲げる特定有機溶剤混合物に係るものに限る。)のうち、有機則第3条第1項
の場合における同項の業務以外の業務を行う屋外作業場等((5)に掲げるものを除く。)
(5)労働安全衛生法第28条第3項の規定に基づき厚生労働大臣が定める化学物質(平成3年労働省告示第57
号)に定められた化学物質について、労働安全衛生法第28条第3項の規定に基づく健康障害を防止する
ための指針に基づき、作業環境の測定等を行うこととされている物を製造し、又は取り扱う屋外作業
場等
(注)(1)から(4)までは、令第21条第1号、第7号、第8号及び第10号中「屋内作業場」を「屋外作業場
等」とし、省令に委任されている内容を明確化したものである。この場合において、特定粉じん作業
の定義の中に「屋内」等の語が含まれるものがあるが、適宜「屋外」等と読み替えるものとする。
ただし、上記(1)の作業又は業務のうち、ずい道等建設工事の粉じんの測定については、平成12年12
月26日付け基発第768号の2「ずい道等建設工事における粉じん対策に関するガイドライン」第3の4(1)
に示されている「粉じん濃度等の測定」による。
4 作業環境の測定の実施
測定は、以下に定めるところにより、屋外作業場等において取り扱う有害物質の濃度が最も高くなる
作業時間帯において、高濃度と考えられる作業環境下で作業に従事する労働者に個人サンプラーを装着
して行う。測定の実施には、個人サンプラーの取扱い等について専門的な知識・技術を必要とすること
から、作業環境測定士等の専門家の協力を得て実施することが望ましい。
(1)測定頻度
測定は、作業の開始時及び1年以内ごとに1回、定期に行うこと。ただし、原料、作業工程、作業方
法又は設備等を変更した場合は、その都度その直後に1回測定すること。
(2)測定方法
ア 測定点
測定の対象となる物質を取り扱う労働者は、その周辺にいる労働者よりも高濃度の作業環境下で
作業に従事していると考えられることから、測定点は、当該物質を取り扱う労働者全員の呼吸域
(鼻又は口から30cm以内の襟元、胸元又は帽子の縁をいう。以下同じ。)とし、当該呼吸域に個人サ
ンプラーを装着すること。ただし、作業環境測定士等の専門家の協力を得て実施する場合には、そ
の専門家の判断により測定点の数を減らすことができる。
イ 測定時間
測定点における試料空気の採取時間は、別表第1に掲げる管理濃度又は基準濃度(以下「管理濃度
等」という。)の10分の1の濃度を精度良く測定でき、かつ、生産工程、作業方法、当該物質の発散
状況等から判断して、気中濃度が最大になる時間帯を含む10分間以上の継続した時間とすること。
ウ 試料採取方法及び分析方法
試料採取方法及び分析方法は、測定の対象となる物質の種類に応じて作業環境測定基準(昭和51
年労働省告示第46号)に定める試料採取方法及び分析方法とすること。ただし、上記3の(5)に係る
化学物質の試料採取方法及び分析方法は、別表第2に掲げる物の種類に応じて、同表中欄に掲げる
試料採取方法又はこれと同等以上の性能を有する試料採取方法及び同表右欄に掲げる分析方法又は
これと同等以上の性能を有する分析方法とすること。
なお、拡散式捕集方法(パッシブサンプラー)等の他の方法であっても、管理濃度等の10分の1の
濃度を精度良く測定できる場合は、当該方法によることができる。
5 作業環境の測定の結果及びその評価並びに必要な措置
(1)作業環境の測定の結果及びその評価に基づく必要な措置については、衛生委員会等において調査審
議するとともに、関係者に周知すること。
(2)作業環境の測定の結果の評価は、各測定点ごとに、測定値と管理濃度等とを比較して、測定値が管
理濃度等を超えるか否かにより行うこと。
評価の結果、測定値が管理濃度等を1以上の測定点で超えた場合には、次の措置を講ずること。
ア 直ちに、施設、設備、作業工程又は作業方法の点検を行い、その結果に基づき、施設又は設備の
設置又は整備、作業工程又は作業方法の改善その他作業環境を改善するため必要な措置を講じ、当
該場所の測定値が管理濃度等を超えないようにすること。
イ 測定値が管理濃度等を超えた測定点については、必要な措置が講じられるまでは労働者に有効な
呼吸用保護具を使用させるほか、その他労働者の健康の保持を図るため必要な措置を講じること。
ウ 上記アによる措置を講じたときは、その効果を確認するため、上記4によりあらためて測定し、
その結果の評価を行うこと。
また、管理濃度等の設定されていない物質については、作業場の気中濃度を可能な限り低いレベ
ルにとどめる等ばく露を極力減少させることを基本として管理すること。
6 作業環境の測定の結果及びその評価の記録の保存
(1)測定結果
ア 記録事項
測定を行ったときは、その都度次の事項を記録すること。
(ア)測定日時
(イ)測定方法
(ウ)測定箇所
(エ)測定条件
(オ)測定結果
(カ)測定を実施した者の氏名
(キ)測定結果に基づいて労働者の健康障害の予防措置を講じたときは、その措置の概要
イ 記録の保存
記録の保存については、次のとおりとする。
(ア)上記3の(1)に係る測定については7年間。
(イ)上記3の(2)に係る測定については3年間。
ただし、令別表第3第1号1、2若しくは4から7までに掲げる物又は同表第2号3の2から6まで、8、
8の2、11の2、12、13の2から15の2まで、18の2から18の4まで、19から19の5まで、22の2から22の
5まで、23の2、24、26、27の2、29、30、31の2、32若しくは33の2に掲げる物に係る測定並びにク
ロム酸等(特化則第36条第3項に規定するクロム酸等をいう。以下同じ。)を製造する作業場及び
クロム酸等を鉱石から製造する事業場においてクロム酸等を取り扱う作業場について行った令別表
第3第2号11又は21に掲げる物に係る測定については30年間、石綿に係る測定については40年間。
(ウ)上記3の(3)に係る測定については3年間。
(エ)上記3の(4)に係る測定については3年間。
(オ)上記3の(5)に係る測定については30年間。
(2)測定結果の評価
ア 記録事項
評価を行ったときは、その都度次の事項を記録すること。
(ア)評価日時
(イ)評価箇所
(ウ)評価結果
(エ)評価を実施した者の氏名
イ 記録の保存
記録の保存については、次のとおりとする。
(ア)上記3の(1)に係る評価については7年間。
(イ)上記3の(2)に係る評価については3年間。
ただし、令別表第3第1号6若しくは7に掲げる物又は同表第2号3の3から6まで、8の2、11の2、13
の2から15の2まで、18の2から18の4まで、19から19の5まで、22の2から22の5まで、23の2、24、27
の2、29、30、31の2若しくは33の2に掲げる物に係る評価並びにクロム酸等を製造する作業場及び
クロム酸等を鉱石から製造する事業場においてクロム酸等を取り扱う作業場について行った令別表
第3第2号11又は21に掲げる物に係る評価については30年間、石綿に係る評価については40年間。
(ウ)上記3の(3)に係る評価については3年間。
(エ)上記3の(4)に係る評価については3年間。
(オ)上記3の(5)に係る評価については30年間。