労働安全衛生規則の一部を改正する省令の施行について

基発0929第1号
令和5年9月29日
都道府県労働局長 殿
厚生労働省労働基準局長

労働安全衛生規則の一部を改正する省令の施行について

 労働安全衛生規則の一部を改正する省令(令和5年厚生労働省令第121号。以下「改正省令」という。)に
ついては、令和5年9月29日に公布され、令和7年4月1日から施行することとされたところである。その改
正の趣旨、内容等については、下記のとおりであるので、関係者への周知徹底を図るとともに、その運用
に遺漏のなきを期されたい。 
第1 改正の趣旨
 本改正省令は、労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令(令和5年政令第265号。以下「改正政令」
という。)の施行に伴い、改正政令による改正後の労働安全衛生法施行令(昭和47年政令第318号。以下
「令」という。)第18条第2号及び令第18条の2第2号の規定に基づき譲渡又は提供に当たって容器等への名
称等の表示及び文書の交付等をしなければならない化学物質(以下「ラベル・SDS対象物質」という。)の
物質名を労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号。以下「安衛則」という。)で定める等の所要の改正
を行ったものである。 

第2 改正の要点
1 ラベル・SDS対象物質の裾切値に係る規定の削除(安衛則第30条第34条の2及び別表第2関係)
  改正政令による改正後の令第18条第3号及び令第18条の2第3号の規定により、ラベル・SDS対象物質を
 含有する製剤その他の物に係る裾切値を告示で規定することに伴い、安衛則における当該裾切値に係る
 規定を削除したこと。

2 ラベル・SDS対象物質の個別列挙(安衛則第30条第34条の2及び別表第2関係)
  改正政令による改正後の令第18条第2号及び令第18条の2第2号の規定に基づき、ラベル・SDS対象物質
 を安衛則別表第2に列挙したこと。

3 その他
  その他所要の改正を行ったものであること。

4 施行期日(改正省令附則第1項関係)
  改正省令は、令和7年4月1日から施行すること。

5 経過措置(改正省令附則第2項関係)
  改正省令附則第2項に規定した項に掲げる物については、令和8年3月31日までの間は、労働安全衛生
 法(昭和47年法律第57号。以下「法」という。)第57条並びに第57条の2第1項及び第2項の規定は適用し
 ないこと。

第3 細部事項
1 ラベル・SDS対象物質の個別列挙(安衛則別表第2関係)
 (1) アルキル基を有する物質のうち、第128項「2−[(アルキルオキシ)メチル]オキシラン(アル
  キル基の炭素数が12から14までのもの及びその混合物に限る。)」等の改正省令により新たにラベル
  ・SDS対象物質に追加された物質については、構造を示す接頭辞がない場合は直鎖アルキル基のみを
  指すものであること。一方、アルキル基を有する物質のうち、改正政令による改正前の令別表第9と
  同一の名称で規定された以下のアからツまでの物質については、従前通り、すべての異性体の総称で
  あり、その適用範囲に変更はないこと。
  ア 第361項 オクタン
  イ 第603項 酢酸ブチル
  ウ 第604項 酢酸プロピル
  エ 第607項 酢酸ペンチル(別名酢酸アミル)
  オ 第1395項 トリブチルアミン
  カ 第1515項 ノナン
  キ 第1705項 ブタノール
  ク 第1714項 フタル酸ジヘキシル
  ケ 第1716項 フタル酸ジペンチル
  コ 第1720項 ブタン
  サ 第1730項 ブチルイソシアネート
  シ 第1738項 ブチルリチウム
  ス 第1780項 プロピルアルコール
  セ 第1861項 ヘキサン
  ソ 第1882項 ヘプタン
  タ 第1894項 ペルフルオロノナン酸
  チ 第1944項 ペンタン
  ツ 第2135項 メチルプロピルケトン
 (2) 第358項「オクタブロモジフェニルエーテル」、第419項「キシリジン」等の構造異性体((1)に該
  当する物を除く。)を有する物質については、すべての異性体の総称であること。なお、これにより、
  改正政令による改正前の令別表第9と同一の名称で規定された物質について、その適用範囲に変更は
  ないこと。
 (3) 備考欄の「高圧のガスの状態のもの」とは、日本産業規格Z7252(GHSに基づく化学品の分類方法)
  (以下「JISZ7252」という。)における高圧ガスの判定基準で定める圧縮ガス、液化ガス、深冷液化
  ガス又は溶解ガスに区分されたものをいうこと。
 (4) 第40項の「アスファルト」について、建設業者が舗装・防水工事後、施主に引き渡す際には、当
  該アスファルト単体又はアスファルトを含有する製剤その他の物は「主として一般消費者の生活の用
  に供するためのもの」に該当するので、ラベル表示及びSDS交付等並びに法第57条の3第1項のリスク
  アセスメント実施の対象にならないものとして取り扱って差し支えないこと。
 (5) 第127項「アルカノール(炭素数が10から16までのもの及びその混合物に限る。)」(令和8年4月1日
  施行)の成分には、第1317項「1−ドデカノール(別名ノルマル−ドデシルアルコール)」(令和7年
  4月1日施行)が含まれるが、当該2物質の混合物にあっては当該成分を重複してSDSに記載する必要は
  なく、令和8年4月1日以降は「アルカノール(炭素数が10から16までのもの及びその混合物に限る。)」
  としてラベル表示・SDS交付等を行えばよいこと。
 (6) 第136項「アルファ−シアノ−3−フェノキシベンジル=2−(4−クロロフェニル)−3−メチ
  ルブチラート」の成分には第137項「(S)−アルファ−シアノ−3−フェノキシベンジル=(S)
  −2−(4−クロロフェニル)−3−メチルブチラート(別名エスフェンバレレート)」が含まれる
  が、R体とS体の混合物にあっては当該成分を重複してSDSに記載する必要はなく、「アルファ−シア
  ノ−3−フェノキシベンジル=2−(4−クロロフェニル)−3−メチルブチラート」としてラベル
  表示・SDS交付等を行えばよいこと。第139項「アルファ−シアノ−3−フェノキシベンジル=3−
  (2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシラート(別名シペルメト
  リン)」と第140項「(S)−アルファ−シアノ−3−フェノキシベンジル=3−(2,2−ジクロ
  ロビニル)−2,2−ジメチル−シス−シクロプロパンカルボキシラート」についても同様であるこ
  と。
 (7) 第186項の「一酸化窒素」には、当該物質が水と反応してできる亜硝酸は含まれないこと。
 (8) 第201項の「ウレタン」とは、カルバミン酸エチルをいうこと。
 (9) 第316項の「塩化ビニル」とは、塩化ビニルのモノマー(単量体)をいうこと。
 (10) 第577項の「けつ岩油」とは、油けつ岩の乾留によって得られる油状物質をいうこと。
 (11) 第580項の「ゲルマン」とは、モノゲルマン(GeH4)をいうこと。
 (12) 第583項の「固形パラフィン」には、炭素数が20〜32の飽和炭化水素が含まれること。
 (13) 第584項の「ココアルキルアミン」は、原料がヤシ油由来のもののみが対象となること。なお、
   「ココアルキルアミン」の成分には、第349項「(Z)−オクタデカ−9−エン−1−アミン」、第
   350項「オクタデカン−1−アミン」、第365項「オクチルアミン(別名モノオクチルアミン)」が通
   常含まれるが、この場合であっても「ココアルキルアミン」に含まれる当該成分を重複してSDSに記
   載する必要はなく、「ココアルキルアミン」としてラベル表示・SDS交付等を行えばよいこと。
 (14) 第585項の「ココアルキルジメチルアミン=オキシド」は、原料がヤシ油由来のもののみが対象と
   なること。なお、「ココアルキルジメチルアミン=オキシド」の成分には、第1039項「N,N−ジ
   メチルドデシルアミン=N−オキシド」が通常含まれるが、この場合であっても「ココアルキルジ
   メチルアミン=オキシド」に含まれる当該成分を重複してSDSに記載する必要はなく、「ココアルキ
   ルジメチルアミン=オキシド」としてラベル表示・SDS交付等を行えばよいこと。
 (15) 第589項の「コールタール」には、コールタールピッチが含まれること。
 (16) 第631項の「三酸化二ほう素」には、当該物質が水と反応してできるオルトほう酸(H3BO3)及びメ
   タほう酸(HBO2)は含まれないこと。
 (17) 第638項の「三弗化ほう素」には、当該物質が水と反応してできるフルオロヒドロキシほう酸類は
   含まれないこと。
 (18) 第852項の「ジクロロベンゼン」には、改正政令による改正前の令別表第9第122号「オルト−ジ
   クロロベンゼン」及び同第441号「パラ−ジクロロベンゼン」が含まれること。
 (19) 第920項の「ジニトロフェノール」には、改正政令による改正前の令別表第9第272号の3「2,4
   −ジニトロフェノール」が含まれること。
 (20) 第989項の「ジペンテン」は、第2220項「d−リモネン」とl−リモネンの等量混合物であること。
   なお、「ジペンテン」に成分として含まれる「d−リモネン」を重複してSDSに記載する必要はなく、
   「ジペンテン」としてラベル表示・SDS交付等を行えばよいこと。
 (21) 第1116項の「シラン」とは、モノシラン(SiH4)をいうこと。
 (22) 第1118項の「人造鉱物繊維」には、ガラス長繊維は含まれないこと。
 (23) 第1151項の「ダイオキシン類」とは、ダイオキシン類対策特別措置法(平成11年法律第105号)第2
   条に掲げる「ポリ塩化ジベンゾフラン」、「ポリ塩化ジベンゾ−パラ−ジオキシン」及び「コプラ
   ナーポリ塩化ビフェニル」をいうものであるが、このうち「コプラナーポリ塩化ビフェニル」は令
   別表第3第1号「第一類物質」の「3 塩素化ビフエニル(別名PCB)」に該当し、当該規定により
   ラベル・SDS対象物質となっていることから、備考欄の「令別表第3第1号3に掲げる物に該当するも
   の」として除外したものであること。
 (24) 第1315項の「灯油」とは、日本産業規格K2203に該当するものをいうこと。
 (25) 第1746項の「ブテン」は、1−ブテン、cis−2−ブテン、trans−2−ブテン及びイソブテンを
   含むこと。
 (26) 第2081項の「メチルナフタレン」は、1−メチルナフタレン及び2−メチルナフタレンを含むこ
   と。
 (27) 第2161項の「1,1’−メチレンビス(イソシアナトベンゼン)」には、改正政令による改正前
   の令別表第9第599号「メチレンビス(4,1−フェニレン)=ジイソシアネート(別名MDI)」
   及びその異性体である2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートが含まれること。
 (28) 第2274項の「ロジン」とは、天然松等の油状抽出成分をいうこと。

第4 その他
1 ラベル・SDS対象物質から除外される物質
  改正政令による改正前の令別表第9第400号「トリフェニルアミン」については、国が行うGHS分類の
 結果、急性毒性区分5と区分されているが、当該区分はJISZ7252で採用されていないため、ラベル・SDS
 対象物質として規定しないこととしたこと。これにより「トリフェニルアミン」は、令和7年4月1日以
 降、ラベル・SDS対象物質から除外されること。

2 ラベル・SDS対象物質の一覧
  CAS登録番号を併記したラベル・SDS対象物質の一覧は、厚生労働省ホームページで公表する予定であ
 ること。 
 
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