外国人労働者に対する安全衛生教育の推進等について

基発0328第28号
平成31年3月28日
都道府県労働局長 殿
厚生労働省労働基準局長

外国人労働者に対する安全衛生教育の推進等について

 出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律(平成30年法律第102号)については、
平成30年12月14日に公布され、一部の規定を除き平成31年4月1日から施行される予定である。同法により
在留資格「特定技能」が創設され、人材を確保することが困難な状況にあるため外国人により不足する人
材の確保を図るべき産業上の分野として、特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する基本方針(平成
30年12月25日閣議決定)の別紙に示された14分野(以下「特定産業分野」という。別紙。)においては、新
たな外国人労働者(以下「特定技能外国人労働者」という。)の受入れが開始される。
 特定技能外国人労働者に限らず、外国人労働者については、一般に、日本語や我が国の労働慣行に習熟
していないこと等から、今後、在留外国人の増加が見込まれる中で、外国人労働者を使用する事業場にお
いては、外国人労働者の安全衛生の確保のため適切かつ有効な安全衛生教育を実施することが求められて
いる。
 こうした状況を踏まえ、平成3年1月21日付け基発第39号「安全衛生教育及び研修の推進について」(以
下「第39号通達」という。)の一部を下記1のように改め、外国人労働者に対する必要な安全衛生教育及び
研修の推進を図ることとしたので、事業者団体等に対しこの旨周知するとともに、安全衛生団体等との連
携を図り、地域の実情にも応じた安全衛生教育及び研修の推進について指導・援助されたい。
 また、危険又は有害な業務について、外国人労働者に対する安全衛生教育において事業者が特に留意す
べき事項を下記2にまとめたので、関係事業者に対して周知及び指導の徹底を図ること。さらに、下記3の
事項について外国人労働者を使用する事業者が適切に実施するよう周知及び指導に努められたい。
1 第39号通達の改正
  第39号通達の一部を次のように改正する。
  別紙「安全衛生教育等推進要綱」5(5)を次のように改める。
 (5) 外国人労働者
   外国人労働者については、一般に、日本語や我が国の労働慣行に習熟していないこと等から、外国
  人労働者に対し安全衛生教育を実施するに当たっては、当該外国人労働者の母国語等を用いる、視聴
  覚教材を用いる等、当該外国人労働者がその内容を確実に理解できる方法により行うこと。特に、外
  国人労働者に使用させる機械等、原材料等の危険性又は有害性及びこれらの取扱方法等が確実に理解
  されるよう留意すること。併せて、事業場内における労働災害防止に関する標識、掲示及び表示等に
  ついては、図解等を用いる、母国語で注意喚起語を表示する等、外国人労働者がその内容を理解でき
  るようにするとともに、当該内容が確実に理解されるよう留意すること。
   具体的な対応は、次のとおり。
  イ リスクアセスメントの実施
    外国人労働者を従事させる業務に関して、機械設備、原材料、作業環境、作業方法等に起因する
   危険性又は有害性等の調査(リスクアセスメント)を実施する際には、一般に外国人労働者にとって
   日本語で表示された作業標準等の理解が困難であることを踏まえてリスクの洗い出しや見積りを行
   うこと。
    当該リスクアセスメントの結果に基づき、必要に応じて、リスクを低減するため機械設備等の見
   直し等の措置を講じた上で、外国人労働者に対して実施する安全衛生教育の内容を整理すること。
  ロ 安全衛生教育の準備
    母国語に翻訳された教材・視聴覚教材など、上記イにより整理した安全衛生教育の内容に適した
   教材を入手、整備等すること。
    教材としては、厚生労働省ホームページに掲載されている資料のほか、公益財団法人国際研修協
   力機構、外国人技能実習機構、一般財団法人国際建設技能振興機構等の資源が活用できると考えら
   れること。
  ハ 安全衛生教育の実施及びフォローアップ
    外国人労働者の日本語の理解度を把握し、視聴覚教材等を活用して、合図、標識、掲示及び表示
   等についても教育すること。また、安全衛生教育の実施責任者の管理の下、当該外国人労働者と同
   じ言語を話せる日本語の上手な労働者(当該外国人労働者と同じ国・地域出身の上司や先輩労働者な
   ど)に通訳や教育の補助役等を依頼して実施することが望ましいこと。さらに、安全衛生教育の理
   解度を確認しながら、継続的に教育を繰り返すことが望ましいこと。
  ニ 労働災害防止のための日本語教育等の実施
    外国人労働者が労働災害防止のための指示、注意喚起等を理解することができるようにするため、
   必要な日本語及び基本的な合図等を習得させるよう努めること。
  ホ 労働安全衛生法等関係法令の周知
    労働安全衛生法等関係法令の定めるところにより当該法令の内容についての周知を行うこと。そ
   の際、外国人労働者がその内容を理解できる資料を用いる等、外国人労働者の理解を促進するため
   必要な配慮をするよう努めること。特に、労働安全衛生法等に定める健康診断、面接指導及び心理
   的な負担の程度を把握するための検査の実施については、これらの目的・必要性等についても当該
   外国人労働者が理解できる方法により説明するよう努めること。
  ヘ 派遣労働が認められている業種での留意事項
    派遣労働者に対する安全衛生教育を必要十分な内容及び時間をもって行うため、派遣元事業場と
   派遣先事業場が十分に連絡・調整することが望ましいこと。派遣労働が行われる場合、派遣労働者
   である外国人労働者に対する雇入れ時等教育は派遣元事業者の責任で行うこと。派遣先事業者との
   協議により、雇入れ時等の安全衛生教育の実施を派遣先事業者に委託する場合、派遣元事業者は派
   遣先事業者から報告を受け、安全衛生教育の実施状況を確認すること。また、当該教育の実施に当
   たっては、派遣先における安全衛生事情にも留意すること。
    (注) 特定技能外国人労働者は原則として直接雇用されるものであるが、農業分野及び漁業分野に
     おいては労働者派遣が認められていること等に留意が必要である。

2 危険又は有害な業務に係る安全衛生教育において特に留意すべき事項
  事業者は、外国人労働者を危険又は有害な業務につかせるときは、上記1による改正後の安全衛生教
 育等推進要綱の記の5に基づき、雇入れ時等の安全衛生教育において、当該危険又は有害な業務に伴う
 労働災害発生のおそれとその防止対策等について正確に理解させること。その際、下記の事項について
 も十分に理解させる必要があること。
 ① 転倒災害の防止のため、整理整頓等による安全な作業床の保持、危険箇所の表示、手すりや滑り止
   めの使用方法及び積雪時に滑りにくい履き物や安全な歩行方法
 ② 高所作業に従事させる場合は、作業手順及びその意味、墜落制止用器具の適切な使用方法及び昇降
   設備の適切な使用方法
 ③ 機械設備、車両系建設機械等によるはさまれ・巻き込まれ、激突、切れこすれ等のおそれのある作
   業に従事させる場合には、作業手順及びその意味、安全装置の適切な使用方法及び立入禁止等に係
   る掲示
 ④ 化学物質を取り扱う作業に従事させる場合には、当該化学物質の危険性又は有害性及びその取扱い
   方法、呼吸用保護具や化学防護手袋等の保護具の適切な使用方法、局所排気装置等の換気装置の適
   切な使用方法
 ⑤ 石綿を含む建築物等の解体等の作業に従事させる場合には、石綿の有害性及び当該含有品の取扱い
   方法並びに呼吸用保護具等の適切な使用方法
 ⑥ 東京電力福島第一原子力発電所構内や事故由来廃棄物等処分事業場で行われる放射線業務及び除染
   特別地域等で行われる除染等業務に従事させる場合には、電離放射線の生体に与える影響、被ばく
   線量の管理方法、設備や保護具の使用を含む機器の取扱い方法、健康管理の必要性等
 ⑦ 夏季期間における屋外作業等の暑熱環境における作業に従事させる場合には、熱中症の症状、こま
   めな塩・水分補給等予防方法や応急措置等の緊急時の対処等
   なお、厚生労働省は、特定産業分野における主要な安全衛生上の留意点を内容とする視聴覚教材を
   平成31年度に作成・公表する予定であるので、必要に応じて活用すること。

3 健康管理手帳制度の周知等について
  事業者は、特定化学物質や石綿等を取り扱う業務に従事する外国人労働者に対しては、雇入れ時に当
 該業務に関して発生するおそれのある疾病の原因等及び健康診断の目的や内容について母国語等を用い
 る等、当該外国人労働者が理解できる方法により説明すること。
  また、がんなどの遅発性の健康障害を生ずるおそれのある化学物質、石綿及び粉じんの取扱作業につ
 いては、当該業務に従事していた外国人労働者の離職後もその健康管理が重要であることから、事業者
 は労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第67条に基づく健康管理手帳制度について離職前に説明の上、
 要件に該当する当該外国人労働者に対して離職後、速やかに管轄の都道府県労働局に申請するよう促す
 こと。なお、この際、申請に必要な書類について、事業者自らが準備し当該外国人労働者に対して離職
 前に手交する等円滑な手続きが行われるよう支援に努めること。
  また、併せて、特定化学物質等による疾病はその潜伏期間が長期に渡る場合があることを踏まえ、帰
 国後であっても、労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)に基づく労災保険給付の請求を行うこと
 ができることについて、外国人労働者に周知すること。

4 資料の入手先一覧
  ○厚生労働省
   https://www.mhlw.go.jp/index.html
   →安全衛生に関するポータルサイト(職場のあんぜんサイト)
   http://anzeninfo.mhlw.go.jp/
   →外国人労働者の安全衛生対策について
   https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000186714.html
   →アスベスト(石綿)情報
   https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/sekimen/
   index.html
   →職場における熱中症予防
   https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000116133.html
   →外国人労働者向け労災保険給付パンフレット
   https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/gaikoku-pamphlet.html

  ○公益財団法人国際研修協力機構(JITCO)
   https://www.jitco.or.jp/

  ○外国人技能実習機構(OTIT)
   https://www.otit.go.jp/

  ○一般財団法人国際建設技能振興機構(FITS)
   https://www.fits.or.jp/index.php/ho





                                             別紙

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