安全衛生情報センター
平成23年に栃木県鹿沼市で発生した交通事故等、業務で自動車を運転する労働者が、運転中の意識の消 失等を発生したことが主な要因と思われる重大な死傷事故が発生する等しており、労働者の健康状態を的 確に把握すること等により、いかに同種事故を防止するかが課題となっている。 このため自動車運転免許に関しては、平成25年6月14日に道路交通法の一部を改正する法律が公布され、 免許の拒否事由等とされている一定の病気等に該当する者を的確に把握するため、免許を受けようとする 者等に対する病気の症状に関する公安委員会の質問制度等の規定が整備され、これらの内容については、 本年6月1日から施行される。 一方、労働安全衛生関係法令においては、事業者による労働者の健康状況の把握及び適切な事後措置の 重要性に鑑み、現行制度下でも、労働者に対して行う一般健康診断において、自覚症状及び他覚症状の有 無を検査することとされているところであるが、特に業務として自動車を運転する労働者等に対しては、 健康診断及び健康診断後の措置等について、下記の点に留意するよう関係事業者等への指導を徹底された い。 なお、関係団体に対しては別添の通り要請を行ったので、了知されたい。
1 業務上、自動車(大型特殊等を含む)運転に従事する者(業務上、移動手段として自動車を利用する者を 含む)等に対しては、労働者の健康・安全の確保のために必要な場合は、雇入れ時又は定期の一般健康 診断において、意識を失った、身体の全部又は一部が一時的に思い通りに動かせなくなった、活動して いる最中に眠り込んでしまった等の症状の有無を確認することが望ましいこと。 2 健康診断結果及び健康診断結果を受けての医師からの意見聴取等により、労働者の健康・安全の確保 の観点から、必要と認められる場合は、健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針(健 康診断結果措置指針公示第7号)2(4)に留意し、労働者の意見等も勘案しつつ、適切な事後措置等を講じ る等、必要な対策をとること。 3 1で確認することとした労働者に係る情報は、極めて機微に触れる情報であることから、事業者は、 労働者の健康情報については漏洩等の防止、それを取り扱う者に対する監督等、その取扱いに十分留意 すること。 なお、医師はもとより健康診断事務担当者等の健康診断等業務従事者に対しては、労働安全衛生法(昭 和47年法律第57号)第105条に規定されている守秘義務の規定が適用されることに留意すること。 別添 陸上貨物運送事業労働災害防止協会 公益社団法人 日本バス協会 公益社団法人 全日本トラック協会 一般社団法人 全国ハイヤー・タクシー連合会 労働安全衛生法第66条の5第2項の規定に基づく健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針 (改正 平成20.1.31 健康診断結果措置指針公示第7号(平20.4.1適用)) 健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針(抄) 2 就業上の措置の決定・実施の手順と留意事項 (4) 就業上の措置の決定等 イ 労働者からの意見の聴取等 事業者は、(3)の医師等の意見に基づいて、就業区分に応じた就業上の措置を決定する場合には、 あらかじめ当該労働者の意見を聴き、十分な話合いを通じてその労働者の了解が得られるよう努め ることが適当である。 なお、産業医の選任義務のある事業場においては、必要に応じて、産業医の同席の下に労働者の 意見を聴くことが適当である。 ロ 衛生委員会等への医師等の意見の報告等 衛生委員会等において労働者の健康障害の防止対策及び健康の保持増進対策について調査審議を 行い、又は労働時間等設定改善委員会において労働者の健康に配慮した労働時間等の設定の改善に ついて調査審議を行うに当たっては、労働者の健康の状況を把握した上で調査審議を行うことが、 より適切な措置の決定等に有効であると考えられることから、事業者は、衛生委員会等の設置義務 のある事業場又は労働時間等設定改善委員会を設置している事業場においては、必要に応じ、健康 診断の結果に係る医師等の意見をこれらの委員会に報告することが適当である。 なお、この報告に当たっては、労働者のプライバシーに配慮し、労働者個人が特定されないよう 医師等の意見を適宜集約し、又は加工する等の措置を講ずる必要がある。 また、事業者は、就業上の措置のうち、作業環境測定の実施、施設又は設備の設置又は整備、作 業方法の改善その他の適切な措置を決定する場合には、衛生委員会等の設置義務のある事業場にお いては、必要に応じ、衛生委員会等を開催して調査審議することが適当である。 ハ 就業上の措置の実施に当たっての留意事項 事業者は、就業上の措置を実施し、又は当該措置の変更若しくは解除をしようとするに当たって は、医師等と他の産業保健スタッフとの連携はもちろんのこと、当該事業場の健康管理部門と人事 労務管理部門との連携にも十分留意する必要がある。また、就業上の措置の実施に当たっては、特 に労働者の勤務する職場の管理監督者の理解を得ることが不可欠であることから、プライバシーに 配慮しつつ事業者は、当該管理監督者に対し、就業上の措置の目的、内容等について理解が得られ るよう必要な説明を行うことが適当である。 また、労働者の健康状態を把握し、適切に評価するためには、健康診断の結果を総合的に考慮す ることが基本であり、例えば、平成19年の労働安全衛生規則の改正により新たに追加された腹囲等 の項目もこの総合的考慮の対象とすることが適当と考えられる。しかし、この項目の追加によって、 事業者に対して、従来と異なる責任が求められるものではない。 なお、就業上の措置は、当該労働者の健康を保持することを目的とするものであって、当該労働 者の健康の保持に必要な措置を超えた措置を講ずるべきではなく、医師等の意見を理由に、安易に 解雇等をすることは避けるべきである。 また、就業上の措置を講じた後、健康状態の改善が見られた場合には、医師等の意見を聴いた上 で、通常の勤務に戻す等適切な措置を講ずる必要がある。 労働安全衛生法(抄) (昭和四十七年六月八日法律第五十七号) (作業環境測定の結果の評価等) 第六十五条の二 事業者は、前条第一項又は第五項の規定による作業環境測定の結果の評価に基づいて、 労働者の健康を保持するため必要があると認められるときは、厚生労働省令で定めるところにより、施 設又は設備の設置又は整備、健康診断の実施その他の適切な措置を講じなければならない。 2 事業者は、前項の評価を行うに当たつては、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働大臣の定 める作業環境評価基準に従つて行わなければならない。 3 事業者は、前項の規定による作業環境測定の結果の評価を行つたときは、厚生労働省令で定めるとこ ろにより、その結果を記録しておかなければならない。 (健康診断) 第六十六条 事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行な わなければならない。 2 事業者は、有害な業務で、政令で定めるものに従事する労働者に対し、厚生労働省令で定めるところ により、医師による特別の項目についての健康診断を行なわなければならない。有害な業務で、政令で 定めるものに従事させたことのある労働者で、現に使用しているものについても、同様とする。 3 事業者は、有害な業務で、政令で定めるものに従事する労働者に対し、厚生労働省令で定めるところ により、歯科医師による健康診断を行なわなければならない。 4 都道府県労働局長は、労働者の健康を保持するため必要があると認めるときは、労働衛生指導医の意 見に基づき、厚生労働省令で定めるところにより、事業者に対し、臨時の健康診断の実施その他必要な 事項を指示することができる。 5 労働者は、前各項の規定により事業者が行なう健康診断を受けなければならない。ただし、事業者の 指定した医師又は歯科医師が行なう健康診断を受けることを希望しない場合において、他の医師又は歯 科医師の行なうこれらの規定による健康診断に相当する健康診断を受け、その結果を証明する書面を事 業者に提出したときは、この限りでない。 (面接指導等) 第六十六条の八 事業者は、その労働時間の状況その他の事項が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働 省令で定める要件に該当する労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による面接指導 (問診その他の方法により心身の状況を把握し、これに応じて面接により必要な指導を行うことをいう。 以下同じ。)を行わなければならない。 2 労働者は、前項の規定により事業者が行う面接指導を受けなければならない。ただし、事業者の指定 した医師が行う面接指導を受けることを希望しない場合において、他の医師の行う同項の規定による面 接指導に相当する面接指導を受け、その結果を証明する書面を事業者に提出したときは、この限りでな い。 3 事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、第一項及び前項ただし書の規定による面接指導の結 果を記録しておかなければならない。 4 事業者は、第一項又は第二項ただし書の規定による面接指導の結果に基づき、当該労働者の健康を保 持するために必要な措置について、厚生労働省令で定めるところにより、医師の意見を聴かなければな らない。 5 事業者は、前項の規定による医師の意見を勘案し、その必要があると認めるときは、当該労働者の実 情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講ずる ほか、当該医師の意見の衛生委員会若しくは安全衛生委員会又は労働時間等設定改善委員会への報告そ の他の適切な措置を講じなければならない。 (健康診断等に関する秘密の保持) 第百四条 第六十五条の二第一項及び第六十六条第一項から第四項までの規定による健康診断並びに第六 十六条の八第一項の規定による面接指導の実施の事務に従事した者は、その実施に関して知り得た労働 者の秘密を漏らしてはならない。