安全衛生情報センター
壁、柱、天井等に石綿等が吹き付けられた建築物の解体等の作業を行う場合における当該石綿等を除去 する作業については、石綿障害予防規則(平成17年厚生労働省令第21号。以下「石綿則」という。)に基づ き、労働者の石綿粉じんによるばく露防止対策を講じていただく必要があるところである。 また、石綿則第6条により、当該石綿等の除去等を行う作業場所(以下「石綿除去等作業場所」という。) をそれ以外の作業を行う作業場所から隔離すること、石綿除去等作業場所の排気にろ過集じん方式の集じ ん・排気装置を使用すること、石綿除去等作業場所を負圧に保つこと、及び石綿除去等作業場所の出入口 に前室を設置することが義務付けられているところである。 一方、大気汚染防止法(昭和43年法律第97号。以下「大防法」という。)では、大防法施行規則別表第7 の1の項下欄イからニに掲げる作業基準に従って作業を行う場合、特定建築材料の除去を行う場所(以下 「作業場」という。)を他の場所から隔離し、作業場の出入り口に前室を設置すること、及び作業場を負 圧に保ち、作業場の排気に日本工業規格Z8122に定めるHEPAフィルタを付けた集じん・排気装置を使用す ること等が義務づけられているところである。 平成21年度に環境省が実施し、平成22年7月16日に報道発表を行った「平成21年度アスベスト大気濃度 調査」のうち、愛知県内の解体現場において、敷地境界では特に高い濃度ではなかったものの、前室及び 排気口付近で高濃度が疑われる現場があり、当該現場の前室及び排気口付近で捕集したサンプルについて 分析走査電子顕微鏡法でも分析し、繊維の種類の同定等を行ったところ、高濃度のクリソタイル及びアモ サイトが検出されたところである。 厚生労働省及び環境省において専門家を交えた意見聴取等の調査を行ってきたところ、原因を特定する ことはできなかったが、集じん・排気装置の不具合の可能性が高いと考えられている。なお、解体事業者 の記録等によると、保護具等の着用も励行されており、労働者の健康への影響は確認されておらず、また、 当該解体現場の敷地境界での測定結果から石綿による大気の汚染が無いことも確認されている。 しかしながら、このような事態が再発することによる労働者の健康への影響及び大気の汚染が危惧され、 建築物の解体等の作業における労働者へのばく露防止対策及び大気への飛散防止対策をさらに徹底する 必要があることから、貴職におかれてはそれぞれが所管する法令に基づき、関係部局と連携の上、喫緊に 対応すべき下記の事項について関係事業者への指導に当たり、遺憾なきを期されたい。また、本通知は厚 生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課長から都道府県労働局労働基準部長に対し下記1の事項に ついて、環境省水・大気環境局大気環境課長から各都道府県及び政令市大気環境担当部(局)長に対し下記 2の事項についてそれぞれ通知するものであることを了知されたい。 なお、別添により、下記の事項について関係団体の長あて要請を行ったことを申し添える。記1 建築物の解体等の作業における労働者へのばく露防止対策について (1) 集じん・排気装置の取扱説明書等に基づき、フィルターの目詰まりによる劣化を防止するため、フ ィルターの定期的な交換を徹底すること。 (2) 集じん・排気装置のパッキンの取付け等の不具合による石綿の漏洩を防止するため、使用開始前の 取付け状態の確認を徹底すること。 (3) その他、集じん装置等の定期自主点検指針に示された事項の確認を徹底すること。 なお、上記徹底に当たっては、「建築物等の解体等工事における石綿粉じんへのばく露防止マニュ アル」(建設業労働災害防止協会)を参考にすること。 2 特定粉じん排出等作業における大気汚染の防止について (1) 特定粉じん排出等作業(以下「排出等作業」という。)を行う者に対し、集じん・排気装置の適切な 使用について指導を徹底すること。なお、指導に当たっては「建築物の解体等に係る石綿飛散防止対 策マニュアル」(環境省水・大気環境局大気環境課)を参考にし、特に集じん・排気装置のフィルター の適切な交換や稼働前のフィルターの取付状態の確認等について配慮すること。 (2) 集じん・排気装置が適切に使用されていることを確認する方法として排出等作業の周辺環境の測定 の実施が有効であることから、排出等作業を行う者に対し、指導を徹底すること。貴自治体において 測定方法、測定場所及び測定時期等について条例、マニュアル等により指導を行っていない場合にあ っては「アスベストモニタリングマニュアル」(環境省水・大気環境局大気環境課)を参考に指導する こと。 以上