石綿含有建築材料の施工作業における石綿粉じんばく露防止対策の推進について |
改正履歴
石綿粉じんによる健康障害の防止については、特定化学物質等障害予防規則(以下「特化則」という。)
に定める措置及び昭和51年5月22日付け基発第408号「石綿粉じんによる健康障害予防対策の推進につい
て」等数次にわたる通達により、積極的にその推進を図ってきたところであり、建設業においても、建築
物の解体又は改修の工事における労働者等の石綿粉じんへのばく露による健康障害の防止のために所要の
対策を講じてきたところである。
最近の国内における石綿の使用量は年間約30万トン前後で推移しているが、その約80パーセントは石綿
スレート、石綿セメント板等の石綿含有建築材料として使用されている。これらの石綿含有建築材料は、
そのままでは石綿粉じんを発散することはほとんどないが、施工にあたっての電動工具を用いた切断等の
作業においては石綿粉じんを発散し、これらの作業に従事する労働者の健康障害を引き起こすおそれがあ
る。
このようなことから、建設業における石綿粉じん対策として特化則に規定する事項についてはもとより、
建築物の解体、改修工事におけるばく露防止に関し従来より進めてきた対策及びじん肺等の粉じん障害防
止のための対策に加え、石綿含有建築材料の施工作業におけるばく露防止のための対策の推進を図ること
としたので、下記の事項に留意のうえ、あらゆる機会をとらえて関係事業者及び関係事業者団体等に対し
石綿による健康障害の防止対策が適正に行われるよう指導されたい。
なお、今般、下記3により、石綿含有建築材料の施工業務従事者の労働衛生教育を推進していくことと
したので、併せてその円滑な運用に努められたい。
記
1 ばく露防止のための対策等について
(1) 電動丸のこによる石綿含有建築材料の切断等の作業において、散水等の措置により湿潤な状態で
作業を行う以外の場合には、当該電動丸のこに除じん装置を取り付けて使用することが切断時の発
じんを防止するために有効であるので、除じん装置付きの電動丸のこを使用すること。また、同様
の場合で作業が極めて短時間である場合等にはダストボックス付きの電動丸のこを使用すること。
なお、これらの場合には、防じんマットを併用すると発じん防止のために効果的であるので、防
じんマットを使用すること。
(2) (削除)
(3) 石綿粉じんの再飛散防止のため、切断加工作業終了後は後片付け、清掃を徹底し、廃棄物の処理
を適正に行うこと。
(4) 建築現場での切断作業を少なくするために、建築材料のメーカー、建築工事の設計者、施工者等
の協力を得て、建築材料はあらかじめメーカー等で所定の形状に切断しておく方法(プレカット)
を採用することが望ましいこと。
2 石綿含有建築材料の識別
石綿含有建築材料の識別については、労働安全衛生法第57条の規定により石綿製品の包装等に表示が
なされているほか、石綿業界による自主表示である「a」マークが、個々の石綿製品ごとに押印又は刻
印されているので、これらにより石綿含有建築材料であることを識別できることを周知徹底すること。
3 労働衛生教育の推進について
石綿粉じんの有害性に鑑み、平成3年1月21日付け基発第39号「安全衛生教育の推進について」の3
の(1)に基づき、「特別教育」に準じた教育として、別添のとおり石綿含有建築材料の施工業務従事者
に対する労働衛生教育実施要領を定めたので、事業者をはじめ安全衛生団体等に対し、この旨周知する
とともに、本教育の推進について指導・援助すること。
(別添)
石綿含有建築材料の施工業務従事者に対する労働衛生教育実施要領
1 目的
石綿粉じんによる健康障害防止対策の一環として、石綿含有建築材料の施工業務に従事する者に対し、
(1) 作業環境管理
(2) 作業管理
(3) 健康管理
(4) 災害事例及び関係法令
についての知識を付与することを目的とする。
2 実施者
実施者は、石綿含有建築材料の施工業務に労働者を就かせる事業者又は当該事業者に代わって当該教
育を行う安全衛生団体等とする。
3 対象者
対象者は、石綿含有建築材料の施工業務に従事する者とする。
4 実施時期
実施時期は、石綿含有建築材料の施工業務に就かせる前とする。
ただし、現に石綿含有建築材料の施工業務に従事している者であって本教育を受けていない者につい
ては、順次実施するものとする。
5 教育カリキュラム
教育カリキュラムは、別紙「石綿含有建築材料の施工業務従事者に対する労働衛生教育カリキュラム」
のとおりとし、その表の左欄に掲げる科目に応じ、それぞれ同表中欄に掲げる範囲について同表右欄に
掲げる時間以上行うものとする。
6 修了の証明等
(1) 事業者は、当該教育を実施した結果について、その旨を記録し、保管するものとする。
(2) 安全衛生団体等が事業者に代わって当該教育を実施した場合は、修了者に対してその修了を証す
る書面を交付する等の方法により、所定の教育を受けたことを証明するとともに、教育修了者名簿
を作成し保管するものとする。
(参考)
1 石綿の種類
わが国で使用されている主な石綿の種類は図1のようなものがあるが、そのほとんどは輸入されてお
り、輸入量の約95%はクリソタイルが占めている。なお、有害性の高いクロシドライトについては現在
わが国では輸入されていない。
2 石綿の物性及び製品
(1) 石綿の物性
石綿は表1のような優れた性質を持ち、しかも経済性に富んでいるため、様々な製品に使用され
ている。
(2) 石綿製品
石綿製品を大きくわけると表2のように分類される。
(3) 石綿製品の用途
我が国の石綿の用途は、建材関係に約80%、摩擦材関係に約7%、産業機械・化学設備に約3%、
その他の用途に約12%となっている。図2に我が国における石綿製品の使用状況を示す。
3 建築材料と石綿
(1) 建築材料に石綿を使用する目的
石綿の持つ高抗張力(引張り強さが極めて大きい)、親和性の良さ(表面積が大きくセメント等
との密着性に優れている)の他、不燃性、耐熱性、耐久性等に優れている特性を活かし、セメント
或いは石灰質、けい酸質原料と混合され、それらを補強する目的に使用される。
石綿セメント製品(石綿スレート、石綿パイプ等)をはじめ、現在の建築材料で石綿を使用して
いるものはほとんどがこの目的のためである。
石綿を使用することにより、薄くても製品の強度があがるため、製品が取り扱い易いこと及び特
に外壁材は紫外線、雨等の気象条件に対する耐久性がよいこと等があげられる。
なお、平成元年の調査によれば石綿含有建築材料における使用石綿の種類及び含有率については
表3のとおりである。
(2) 石綿含有建築材料の見分け方
イ 名称等表示による方法
労働安全衛生法第57条により5%(重量比)を超えて石綿を含有する製品は、石綿の含有率及
び取り扱い等についての注意事項を表示することが義務付けられている(図3参照)。この表示
の方法は包装の有無、荷姿、出荷の形態等により異なるが、概ね表4のとおりとなっており、こ
れにより石綿含有建築材料か否かの判断が可能になる。
ロ 「a」マークによる方法
石綿含有建築材料を製造する業界において、平成元年7月生産分より、5%(重量比)を超え
て石綿を含有する建築材料に図4
に示すマークを、一枚一枚に押印又は刻印で見やすい箇所に表
示しているので、これにより石綿含有建築材料か否かの判断が可能になる。
4 石綿含有建築材料の施工
(1) 加工に使用する工具類
イ 電動丸のこ(図5〜7)
ロ 防じんマット
除じん装置付き電動丸のこを使用する際に、防じんマットを併用すると、除じん装置の吸引風
速が向上し、また二次発じんに対する効果も拡大する。図8に防じんマットを併用して除じん装
置付き電動丸のこを使用した例を示す。
(2) 発じん状況について
通風の不十分な屋内作業場において電動丸のこを使用して切断作業を行う場合には、石綿の管理
濃度(2本/cm3)を超える状況もある。表5、6は除じん装置の付いてない電動丸のこを使用した
場合と除じん装置付きの電動丸のこを使用した場合との個人ばく露濃度を示したものであるが、除
じん装置付きの丸のこを使用すれば石綿粉じんの発じん防止に効果があることがわかる。