じん肺法 第二章
健康管理 (第七条−第二十三条) |
じん肺法 目次
第一節 じん肺健康診断の実施
(就業時健康診断)
第七条 事業者は、新たに常時粉じん作業に従事することになつた労働者(当該作業に従事することとな
つた日前一年以内にじん肺健康診断を受けて、じん肺管理区分が管理二又は管理三イと決定された労働
者その他厚生労働省令で定める労働者を除く。)に対して、その就業の際、じん肺健康診断を行わなけ
ればならない。この場合において、当該じん肺健康診断は、厚生労働省令で定めるところにより、その
一部を省略することができる。
(定期健康診断)
第八条 事業者は、次の各号に掲げる労働者に対して、それぞれ当該各号に掲げる期間以内ごとに一回、
定期的に、じん肺健康診断を行わなければならない。
一 常時粉じん作業に従事する労働者(次号に掲げる者を除く。) 三年
二 常時粉じん作業に従事する労働者でじん肺管理区分が管理二又は管理三であるもの 一年
三 常時粉じん作業に従事させたことのある労働者で、現に粉じん作業以外の作業に常時従事している
もののうち、じん肺管理区分が管理二である労働者(厚生労働省令で定める労働者を除く。) 三年
四 常時粉じん作業に従事させたことのある労働者で、現に粉じん作業以外の作業に常時従事している
もののうち、じん肺管理区分が管理三である労働者(厚生労働省令で定める労働者を除く。) 一年
2 前条後段の規定は、前項の規定によるじん肺健康診断を行う場合に準用する。
(定期外健康診断)
第九条 事業者は、次の各号の場合には、当該労働者に対して、遅滞なく、じん肺健康診断を行わなけれ
ばならない。
一 常時粉じん作業に従事する労働者(じん肺管理区分が管理二、管理三又は管理四と決定された労働
者を除く。)が、労働安全衛生法第六十六条第一項又は第二項の健康診断において、じん肺の所見が
あり、又はじん肺にかかつている疑いがあると診断されたとき。
二 合併症により一年を超えて療養のため休業した労働者が、医師により療養のため休業を要しなくな
つたと診断されたとき。
三 前二号に掲げる場合のほか、厚生労働省令で定めるとき。
2 第七条後段の規定は、前項の規定によるじん肺健康診断を行う場合に準用する。
(離職時健康診断)
第九条の二 事業者は、次の各号に掲げる労働者で、離職の日まで引き続き厚生労働省令で定める期間を
超えて使用していたものが、当該離職の際にじん肺健康診断を行うように求めたときは、当該労働者に
対して、じん肺健康診断を行わなければならない。ただし、当該労働者が直前にじん肺健康診断を受け
た日から当該離職の日までの期間が、次の各号に掲げる労働者ごとに、それぞれ当該各号に掲げる期間
に満たないときは、この限りでない。
一 常時粉じん作業に従事する労働者(次号に掲げる者を除く。) 一年六月
二 常時粉じん作業に従事する労働者で、じん肺管理区分が管理二又は管理三であるもの 六月
三 常時粉じん作業に従事させたことのある労働者で、現に粉じん作業以外の作業に常時従事している
もののうち、じん肺管理区分が管理二又は管理三である労働者(厚生労働省令で定める労働者を除く。)
六月
2 第七条後段の規定は、前項の規定によるじん肺健康診断を行う場合に準用する。
(労働安全衛生法の健康診断との関係)
第十条 事業者は、じん肺健康診断を行つた場合においては、その限度において、労働安全衛生法第六十
六条第一項又は第二項の健康診断を行わなくてもよい。
(受診義務)
第十一条 関係労働者は、正当な理由がある場合を除き、第七条から第九条までの規定により事業者が行
うじん肺健康診断を受けなければならない。ただし、事業者が指定した医師の行うじん肺健康診断を受
けることを希望しない場合において、他の医師の行うじん肺健康診断を受け、当該エツクス線写真及び
じん肺健康診断の結果を証明する書面その他厚生労働省令で定める書面を使用者に提出したときは、こ
の限りでない。
第二節 じん肺管理区分の決定等
(事業者によるエツクス線写真等の提出)
第十二条 事業者は、第七条から第九条の二までの規定によりじん肺健康診断を行つたとき、又は前条た
だし書の規定によりエツクス線写真及びじん肺健康診断の結果を証明する書面その他の書面が提出され
たときは、遅滞なく、厚生労働省令で定めるところにより、じん肺の所見があると診断された労働者に
ついて、当該エツクス線写真及びじん肺健康診断の結果を証明する書面その他厚生労働省令で定める書
面を都道府県労働局長に提出しなければならない。
(じん肺管理区分の決定手続等)
第十三条 第七条から第九条の二まで又は第十一条ただし書の規定によるじん肺健康診断の結果、じん肺
の所見がないと診断された者のじん肺管理区分は、管理一とする。
2 都道府県労働局長は、前条の規定により、エツクス線写真及びじん肺健康診断の結果を証明する書面
その他厚生労働省令で定める書面が提出されたときは、これらを基礎として、地方じん肺診査医の診断
又は審査により、当該労働者についてじん肺管理区分の決定をするものとする。
3 都道府県労働局長は、地方じん肺診査医の意見により、前項の決定を行うため必要があると認めると
きは、事業者に対し、期日若しくは方法を指定してエツクス線写真の撮影若しくは厚生労働省令で定め
る範囲内の検査を行うべきこと又はその指定する物件を提出すべきことを命ずることができる。
4 事業者は、前項の規定による命令を受けてエツクス線写真の撮影又は検査を行つたときは、遅滞なく、
都道府県労働局長に、当該エツクス線写真又は検査の結果を証明する書面その他その指定する当該検査
に係る物件を提出しなければならない。
5 第十一条本文の規定は、第三項の規定による命令を受けてエツクス線写真の撮影又は検査を行なう場
合に準用する。
(通知)
第十四条 都道府県労働局長は、前条第二項の決定をしたときは、厚生労働省令で定めるところにより、
その旨を当該事業者に通知するとともに、遅滞なく、第十二条又は前条第三項若しくは第四項の規定に
より提出されたエツクス線写真その他の物件を返還しなければならない。
2 事業者は、前項の規定による通知を受けたときは、遅滞なく、厚生労働省令で定めるところにより、
当該労働者(厚生労働省令で定める労働者であつた者を含む。)に対して、その者について決定された
じん肺管理区分及びその者が留意すべき事項を通知しなければならない。
3 事業者は、前項の規定による通知をしたときは、厚生労働省令で定めるところにより、その旨を記載
した書面を作成し、これを三年間保存しなければならない。
(随時申請)
第十五条 常時粉じん作業に従事する労働者又は常時粉じん作業に従事する労働者であつた者は、いつで
も、じん肺健康診断を受けて、厚生労働省令で定めるところにより、都道府県労働局長にじん肺管理区
分を決定すべきことを申請することができる。
2 前項の規定による申請は、エツクス線写真及びじん肺健康診断の結果を証明する書面その他厚生労働
省令で定める書面を添えてしなければならない。
3 第十三条第二項から第四項まで及び前条第一項の規定は、第一項の規定による申請があつた場合に準
用する。この場合において、第十三条第二項中「前条」とあるのは「第十五条第二項」と、同条第三項
及び第四項中「事業者」とあるのは「申請者」と、前条第一項中「当該事業者」とあるのは「申請者及
び申請者を使用する事業者」と「第十二条又は前条第三項若しくは第四項」とあるのは、「前条第三項
若しくは第四項又は次条第二項」と読み替えるものとする。
(随時申請)
第十六条 事業者は、いつでも、常時粉じん作業に従事する労働者又は常時粉じん作業に従事する労働者
であつた者について、じん肺健康診断を行い、厚生労働省令で定めるところにより、都道府県労働局長
にじん肺管理区分を決定すべきことを申請することができる。
2 前条第二項の規定は前項の規定による申請に、第十三条第二項から第四項まで及び第十四条の規定は
前項の規定による申請があつた場合に準用する。この場合において、第十三条第二項中「前条」とある
のは「第十六条第二項の規定により準用する第十五条第二項」と、第十四条第一項中「第十二条又は前
条第三項若しくは第四項」とあるのは「前条第三項若しくは第四項又は第十六条第二項の規定により準
用する次条第二項」と読み替えるものとする。
(エツクス線写真等の提出命令)
第十六条の二 都道府県労働局長は、常時粉じん作業に従事する労働者又は常時粉じん作業に従事する労
働者であつた者について、適正なじん肺管理区分を決定するため必要があると認めるときは、厚生労働
省令で定めるところにより、事業者に対して、エツクス線写真及びじん肺健康診断の結果を証明する書
面その他厚生労働省令で定める書面(次項において「エツクス線写真等」という。)を提出すべきこと
を命ずることができる。
2 第十三条第二項から第四項まで及び第十四条の規定は、前項の規定によりエツクス線写真等の提出が
あった場合に準用する。この場合において、第十四条第一項中「第十二条又は前条第三項若しくは第四
項」とあるのは「前条第三項若しくは第四項又は第十六条の二第一項」と読み替えるものとする。
(記録の作成及び保存等)
第十七条 事業者は、厚生労働省令で定めることろにより、その行つたじん肺健康診断及び第十一条ただ
し書の規定によるじん肺健康診断に関する記録を作成しなければならない。
2 事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、前項の記録及びじん肺健康診断に係るエツクス線写
真を七年間保存しなければならない。
(審査請求)
第十八条 第十三条第二項(第十五条第三項、第十六条第二項及び第十六条の二第二項において準用する
場合を含む。次条第一項及び第二項において同じ。)の決定又はその不作為についての審査請求におけ
る審査請求書には、行政不服審査法(平成二十六年法律第六十八号)第十九条第二項から第四項まで及
び第五項(第三号に係る部分に限る。)に規定する事項のほか、厚生労働省令で定める事項を記載し
なければならない。
2 前項の審査請求書には、厚生労働省令で定めるところにより、当該決定に係るエツクス線写真その他
の物件及び証拠となる物件を添附しなければならない。
(審査請求の裁決)
第十九条 第十三条第二項の決定についての審査請求の裁決は、中央じん肺診査医の診断又は審査に基づ
いてするものとする。
2 第十三条第二項の決定の不作為についての審査請求の裁決は、地方じん肺審診査医の診断又は審査に
基づいてするものとする。
3 厚生労働大臣は、第一項の審査請求について、当該決定を取り消す旨の裁決をするときは、裁決で、
労働者又は労働者であつた者についてじん肺管理区分を決定するものとする。
4 第十三条第三項及び第四項の規定は、第一項の審査請求があつた場合に準用する。この場合にお
いて、これらの規定中「都道府県労働局長」とあるのは「厚生労働大臣」と、「地方じん肺診査医」と
あるのは「中央じん肺診査医」と、「前項の決定」とあるのは「裁決」と、「事業者」とあるのは「審
査請求人」と読み替えるものとする。
5 第十三条第三項及び第四項の規定は、第二項の審査請求があつた場合に準用する。この場合において、
これらの規定中「都道府県労働局長」とあるのは「厚生労働大臣」と、「前項の決定」とあるのは「裁
決」と、「事業者」とあるのは「審査請求人」と読み替えるものとする。
6 厚生労働大臣は、裁決をしたときは、前条第二項の規定又は前二項において準用する第十三条第三項
若しくは第四項の規定により提出されたエツクス線写真その他の物件をその提出者に返還しなければな
らない。
7 厚生労働大臣は、裁決をしたときは、行政不服審査法第五十一条第四項の規定によるほか、裁決書の
謄本を厚生労働省令で定める利害関係者に送付するものとする。
8 行政不服審査法第四十三条第一項の規定は、前条第一項の審査請求については、適用しない。この場
合において、当該審査請求についての同法第四十四条の規定の適用については、同条中「行政不服審査
会等から諮問に対する答申を受けたとき(前条第一項の規定による諮問を要しない場合(同項第二号又
は第三号に該当する場合を除く。)にあっては審理員意見書が提出されたとき、同項第二号又は第三号
に該当する場合にあっては同項第二号又は第三号に規定する議を経たとき)」とあるのは、「じん肺法
(昭和三十五年法律第三十号)第十九号第一項の中央じん肺診査医の診断若しくは審査又は同条第二項
の地方じん肺診査医の診断若しくは審査を経たとき」とする。
(審査請求と訴訟との関係)
第二十条 第十八条第一項に規定する処分の取消しの訴えは、当該処分についての審査請求に対する裁決
を経た後でなければ、提起することができない。
第三節 健康管理のための措置
(事業者の責務)
第二十条の二 事業者は、じん肺健康診断の結果、労働者の健康を保持するため必要があると認めるとき
は、当該労働者の実情を考慮して、就業上適切な措置を講ずるように努めるとともに、適切な保健指導
を受けることができるための配慮をするように努めなければならない。
(粉じんにさらされる程度を低減させるための措置)
第二十条の三 事業者は、じん肺管理区分が管理二又は管理三イである労働者について、粉じんにさらさ
れる程度を低減させるため、就業場所の変更、粉じん作業に従事する作業時間の短縮その他の適切な措
置を講ずるように努めなければならない。
(作業の転換)
第二十一条 都道府県労働局長は、じん肺管理区分が管理三イである労働者が現に常時粉じん作業に従事
しているときは、事業者に対して、その者を粉じん作業以外の作業に常時従事させるべきことを勧奨す
ることができる。
2 事業者は、前項の規定による勧奨を受けたとき、又はじん肺管理区分が管理三ロである労働者が現に
常時粉じん作業に従事しているときは、当該労働者を粉じん作業以外の作業に常時従事させることとす
るように努めなければならない。
3 事業者は、前項の規定により、労働者を粉じん作業以外の作業に常時従事させることとなつたときは、
厚生労働省令で定めるところにより、その旨を都道府県労働局長に通知しなければならない。
4 都道府県労働局長は、じん肺管理区分が管理三ロである労働者が現に常時粉じん作業に従事している
場合において、地方じん肺診査医の意見により、当該労働者の健康を保持するため必要があると認める
ときは、厚生労働省令で定めるところにより、事業者に対して、その者を粉じん作業以外の作業に常時
従事させるべきことを指示することができる。
(転換手当)
第二十二条 事業者は、次の各号に掲げる労働者が常時粉じん作業に従事しなくなつたとき(労働契約の
期間が満了したことにより離職したときその他厚生労働省令で定める場合を除く。)は、その日から七
日以内に、その者に対して、次の各号に掲げる労働者ごとに、それぞれ労働基準法第十二条に規定する
平均賃金の当該各号に掲げる日数分に相当する額の転換手当を支払わなければならない。ただし、厚生
労働大臣が必要があると認めるときは、転換手当の額について、厚生労働省令で別段の定めをすること
ができる。
一 前条第一項の規定による勧奨を受けた労働者又はじん肺管理区分が管理三ロである労働者(次号に
掲げる労働者を除く。) 三十日分
二 前条第四項の規定による指示を受けた労働者 六十日分
(作業転換のための教育訓練)
第二十二条の二 事業者は、じん肺管理区分が管理三である労働者を粉じん作業以外の作業に常時従事さ
せるために必要があるときは、その者に対して、作業の転換のための教育訓練を行うように努めなけれ
ばならない。
(療養)
第二十三条 じん肺管理区分が管理四と決定された者及び合併症にかかつていると認められる者は、療養
を要するものとする。