動カプレス機械構造規格の施行について
(平成23年2月18日 基発0218第3号により廃止)
基 発 第 34 号
昭和53年1月19日
動カプレス機械構造規格の施行について
動力プレス機械構造規格(昭和52年労働省告示第116号)は昭和52年12月26日に公布され、昭和53年1月
1日から適用された。
今回の規格は、スライドによる危険を防止するための機構を有する動力プレス機械(安全プレス)の型
式検定の実施に伴い、従来の動カプレス機械構造規格(昭和46年労働省告示第2号。以下旧規格という。)
の内容を全面的に検討し、
[1] 金型の間に手が入らない又は手を入れない作業方式(ノーバンド・イン・ダイ)と金型の間に手を入
れる作業方式(ハンド・イン・ダイ)の区分を考慮して、構造上の基準を明らかにすること。
[2] ハンド・イン・ダイを伴うものにあっては、特に、構造上の規制を厳しくすること。
[3] 金型の取付け、調整等の非定常作業における安全を確保するため、構造上の基準を明らかにするこ
と。
[4] 型式検定の対象となる安全プレスの機能及び構造上の基準を明らかにすること。
[5] 国際的な規制レベル及び国内の技術レベルを考慮すること。
等により動力プレスの安全を確保することとしたものであり、これに伴い旧規格は廃止された。
ついては、今回の規格制定の趣旨を十分理解し、関係者への周知徹底を図るとともに、特に下記事項
に留意の上これが運用に遺憾のないようにされたい。
なお、昭和46年3月29日付け基発第251号通達は、本通達をもって廃止する。
記
第1 改正の主要点
(1) 急停止機構及び非常停止装置について、それぞれの要件を定めたこと。(第2条〜第4条)
(2) 金型の調整等の作業のために寸動機構の備付けを定めたこと。(第5条)
(3) 金型の取付け等の作業のために安全ブロック等の備付けを定めたこと。(第6条、第33条第38条)
(4) 行程の切替えスィッチ及び操作の切替えスィッチの要件を定めたこと。(第8条)
(5) 運転可能状態を示す表示ランプ等の備付けを定めたこと。(第9条)
(6) 電気回路のフェイル・セーフ機能について、その要件を定めたこと。(第11条)
(7) スライドの作動に関連するばねについての要件を定めたこと。(第14条)
(8) 主電動機駆動時の危険を防止するための要件を定めたこと。(第16条)
(9) クラッチの構成部分に使用できる鋼材の範囲を拡大したこと。(第18条)
(10) クラッチの構成部分に使用する鋼材の調質方法を改め、かつ、表面硬さ値の範囲を縮小したこと。
(第19条)
(11) クランク軸等の回転角度を示す表示計を備付ける対象を拡大したこと。(第25条)
(12) クランク軸等の偏心機構を有するもので、急停止機構を有するものについて、オーバーラン監視
装置の備付けを定めたこと。(第27条)
(13) クラッチ又はブレーキを制御する回路に設ける電磁弁は複式とすることを定めたこと。(第29条)
(14) 油・空圧の過度の上昇を防止するための装置及び油・空圧の所要圧力以下に低下した場合におけ
るスライドの停止機構の備付けを定めたこと。(第30条)
(15) カウンターバランスについての要件を定めたこと。(第32条)
(16) 足踏み操作式のポジチブクラッチプレスについて危険を防止するためのスライドの作動中に身体の
一部が危険限界に入らないか又は急停止機構を有するかのいずれかの構造とすることを義務づけたこ
と。(第34条)
(17) 急停止機構を有してはならないポジチブクラッチプレスの範囲を定めたこと。(第35条)
(18) 安全プレスの危険防止機能を定めたこと。(第41条)
(19) ガード式の安全プレスの要件を定めたこと。(第42条)
(20) 両手操作式の安全プレスの要件を定めたこと。(第43条〜第46条)
(21) 先線式の安全プレスの要件を定めたこと。(第47条〜第50条)
(22) 表示事項として、機械仕様の内容を拡大したこと及び製造番号を追加したこと。(第51条)
第2 細部事項
1 第1条関係
「一行程一停止機構」とは、押しボタン等を押し続けてもスライドが一行程で停止し、再起動しな
い機構をいうこと。
2 第2条関係
(1) 第1項の「急停止機構」とは、危険その他の異常な状態を検出して、動力プレスを使用して作業
する労働者(以下「プレス作業者」という。)等の意思にかかわらずスライドの作動を停止させる機
構をいうこと。
この場合、急停止機構には、スライドを急上昇させる装置が含まれること。
(2) 第1項第1号の「身体の一部が危険限界に入らない構造」とは、ストローク長さが8mm以下、上型
と下型の間が8mm以下等の構造をいうこと。
3 第3条関係
(1) 「非常停止装置」とは、危険限界に身体の一部が入っている場合、金型が破損した場合その他異
常な状態を発見した場合において、プレス作業者等が意識してスライドの作動を停止させるための
装置をいうこと。
(2) 「始動の状態にもどした後」とは、スライドの位置を寸動で始動の位置にした後をいうこと。
4 第4条関係
(1) 第1号の「突頭型」とは、押しボタンが、ボタンケースの表面から突出し、容易に押すことがで
きるような形状をいうこと。
(2) 第2号の「操作ステーション」とは、当該動力プレスを操作する作業者が位置する場所をいうこ
と。
5 第5条関係
「寸動機構」とは、スライドの上昇又は下降のいずれの場合においても、押しボタン等を操作して
いる間のみ、スライドが作動し、押しボタン等から手を離すと直ちにスライドの作動が停止するもの
をいうこと。
6 第6条関係
「安全ブロック」とは動力プレスの金型の取付け、取外し等の作業において、身体の一部を危険限
界に入れる必要がある場合に、当該動力プレスの故障等によりスライドが不意に下降することのない
ように上型と下型の間又はスライドとボルスターの間に挿入する支え棒をいうものであること。
7 第8条関係
(1) 「行程の切替え」とは、連続行程、一行程、安全一行程、寸動行程等の行程の切替えをいうこと。
(2) 「操作の切替え」とは両手操作を片手操作に切り替える場合、両手操作をフートスィッチ又はペ
ダル操作方式に切り替える場合等の操作の切替えをいうこと。
(3) 第1項に規定する切替えスィッチのキーは、切替え位置において抜取る方式のものであることを
示したものであるが、安全プレスに設ける切替えスイッチは、それぞれの切替え位置において安全
が確保できることから、キーを設ける必要がないものであること。
8 第9条関係
「ランプ等」の「等」には、機械的なマーク表示方法が含まれること。
9 第10条関係
(1) 「リレー、トランジスター等」の「等」には、コンデンサー、低抗器が含まれること。
(2) 「防振措置」とは、緩衝材を使用する等の措置をいうこと。
10 第11条関係
(1) 第2項の「停電等」の「等」には電圧降下が含まれること。
(2) 第2項の「スライドが不意に作動するおそれのないもの」とは、故障等が生じた場合にこれを検
出して、警報を出し、又はスライドを停止させる機能を有するものをいうこと。
11 第13条関係
(1) 「外部電線」とは、操作盤と操作スタンドとの間等の電気機器の相互を接続する電気配線をいう
こと。
(2) 「同等以上の絶縁効力、耐油性、強度及び耐久性を有するもの」には、金属製電線管又は金属製
可とう電線管に納められたものが含まれること。
12 第14条関係
(1) 「破損、脱落等」の「等」にはへたりを含むこと。
(2) 第2号の「ロッド、パイプ等に案内される」とは、ばねの内側にロッドを通し、パイプの中にば
ねを入れる等、当該ばねが円滑に圧縮されたり、押し戻したりすることができるようにすることを
いうこと。
13 第15条関係
「緩み止め」には、ばね座金があること。
14 第17条関係
(1) 「スライディングピンクラッチ」とは、ポジチブクラッチの一種で、フライホイール又はメイン
ギヤーとクランクシャフト間のクラッチの掛け外しをクラッチピンの着脱により行うものをいうこ
と。
(2) 「ローリングキークラッチ」とは、ポジチブクラッチの一種でフライホイール又はメインギヤー
とクランクシャフト間のクラッチの掛け外しを転動するキーの起伏により行うものをいうこと。
15 第18条関係
ピンクラッチプレスのクラッチピン、クラッチ作動用カム及びクラッチピン当て金並びにキーク
ラッチプレスの内側のクラッチリング、中央のクラッチリング、外側のクラッチリング、ローリング
キー、クラッチ作動用カム及びクラッチ掛け外し金具は、それぞれ次の図に示すとおりである。
16 第19条関係
(1) 「クラッチ掛け外し金具のうちクラッチ作動用カムに接触する部分」とは、クラッチ掛け外し金
具(ラッチ)の頭部をいうこと。
(2) 「ロックウェルC硬さの値」とはJlSZ2245(ロックウェル硬さ試験方法)に定める試験により求め
られるC硬さの値をいうこと。
17 第20条関係
「ばね緩め型」とは、空気圧力を開放した際ばねの力で摩擦板を戻しクラッチを切る構造をいうこ
と。
18 第21条関係
(1) 第1項の「ストッパー」とは、次の図に示すようにクラッチ作動用カム又はカップリングに設け
られた突起部をいうものであること。
(2) 第2項の「位置決めピン」とは、動力プレスの運転中の衝撃等によりクラッチ作動用カムを支持
するブラケットが位置ずれを起こすのを防止するために、当該ブラケット固定面に設けられる突出
ピン(ノックピン)をいうものであること。
(3) 第3項の「押しもどされない構造」とはスプリング等にょって保持される構造をいうこと。
19 第23条関係
「クランク軸等の偏心の機構」とは、エキセン軸、偏心盤、カム等の偏心機構にょってクランク軸
等の回転運動をスライドの上下運動(往復運動)に換える機構をいうこと。
20 第24条関係
「ばね締め型」とは、ばねの力によりブレーキの作動を行う構造をいうこと。
21 第26条関係
(1) 「クランクピンの設定の停止点」とは、通常上死点をいうこと。なお、可傾型の動カプレス等特
別に設計されたものにあっては、メーカーの指定する位置をもって設定の停止点とすること。
(2) 「クランクピンの停止点」とは、当該動力プレスを停止させた場合に、クランクピンが実際に停
止した位置をいうものであること。
22 第27条関係
「オーバーラン監視装置」とは、クランク軸等の滑り角度の異常を検出して停止の指示を行うもの
をいうこと。
23 第29条関係
(1) 第1号の「複式」とは、1個の電磁弁が2個分に相当する機能を有する型のものをいうこと。
なお、単一の電磁弁を2個使用するものも含まれること。
(2) 第2号の「ノルマリクローズド型」とは、通電したときメインバルブが開いてシリンダー内にエ
ヤーを送給し、停電したとき、メインバルブが閉じてエヤーの送給をとめる型のものをいうこと。
(3) 第3号の「プレッシャーリターン型」とは、停電の際送給されたシリンダ一側の空気圧力によっ
てメインバルブを閉じる型のものをいうこと。
(4) 第4号の「ばねリターン型」とは、停電の際ばねのカによってメインバルブを閉じる型のものを
いうこと。
24 第30条関係
「安全装置」には動力プレスの本体以外の空気圧又は油圧の配管を設けられている場合も含まれる
こと。
25 第31条関係
「装置」にはリミットスイッチがあること。
26 第32条関係
「カウンターバランス」とは、コネクチングロッド、スライド及びスライド付属部品の重量を保持
するための機構をいうこと。
27 第33条関係
(1) 第l項の「安全プラグ」とは押しボタン等の操作用の電気回路に設けられ、金型の取付け、取外
し等の場合に、当該プラグを抜くことにより、操作用の電気回路を開の状態にすることができるも
のをいうこと。
(2) 第1項の「キーロック」とはキーにより主電動機の駆動用電気回路又は起動用電気回路を開の状
態に保持するためのものであること。
28 第37条関係
「慣性下降値」とは、スライドのオーバートラベル(スリップダウン)の距離をいうものであること。
29 第40条関係
「安全装置」には、動カプレスの本体以外の油圧の配管に設けられている場合も含まれること。
30 第41条関係
(1) 本条第1項各号の規定は、労働安全衛生法施行令(昭和47年政令第318号)第14条の2に規定するス
ライドによる危険を防止するための機構を有する動カプレスについて、プレス作業者の危険を防止
するために定めたものであること。
(2) 第1項第1号及び第3号の「作動中」とは動力プレスによる加工がスライドの下降中に行われる下
降式のものにあっては、下降中を、スライドの上昇中に行われる上昇式のものにあっては、上昇中
をそれぞれ示すものであること。
(3) 第1項第2号の「押しボタン又は操作レバー」は、昭和52年2月12日付け基発第74号通達記の3の
(2)の(i)に示す「起動スイッチ」と同義であること。
(4) 第2項に規定する「切替えスィッチ」を切り替えた場合には、安全プレスは自動的に第l項各号の
いずれかの機能を有する状態に切り替えられるものでなければならないこと。
したがって、1台の安全プレスが切替えの状態によって、ガード式両手操作式又は光線式のいず
れにもなりうるものであること。
(5) 第2項の「操作ステーションの切替え」とは、複数の操作ステーションを単数の操作ステーショ
ンに切り替える等操作ステーションの数を切り替えることをいうこと。
31 第43条関係
(1) 本条は、押しボタン等の片方を押した状態又は片方を無効にした状態で操作することができな
いことを規定したものであること。
(2) 第1号の「両手で同時に」とは、押しボタン等にタッチする時間の同時性をいうものであること。
(3) 第1号の「作動中」とは30の(2)と同様であること。
32 第44条関係
本条は両手押しボタン等が次の図に示すように、押しボタン等の内側において300mm以上離さなけ
ればならないことを規定したものであること。
33 第45条関係
第1号及び第2号の「表面から突出していない」とは、次の図に示す状態をいうこと。
なお、押しボタンの周囲にボタンの高さ以上の高さを有する保護リングを取り付けたものも、これ
と同等とみなされること。
34 第46条関係
(1) 「スライドの下降速度が最大となる位置」とは、一般的にクランク角90゜の位置をいうこと。
(2) 本条の安全距離と押しボタンとの関係を例示すれば次のとおりであること。
例1 C形プレスの場合(図1)
D<a+b+1/3lD の条件を満すように押しボタンの位置を選定する。
D安全距離
a押しボタンからスライド前面までの水平距離
b押しボタンからボルスター上面までの垂直距離
lDダイハイト
図1
例2 ストレートサイド形プレスの場合(図2)
D<a+b+1/3lD+1/6lBの条件を満たすように押しボタンの位置を選定する
D安全距離
a押しボタンからボルスター前面までの水平距離
b押しボタンからボルスター上面までの垂直距離
lDダイハイト
lBボルスターの奥行き
図2
35 第48条関係
(1) 第1項の「スライド調節量」とは、スライドを調節し得る最大の長さをいうこと。
(2) 第1項の「全長にわたり有効」と第2項の「光軸の数は2以上」とにより、防護範囲の上限と下限
に、それぞれ光軸を1ずつ配置することとなるものであること。
(3) 光軸相互の間隔は50mm以下と規定し、光線の防護範囲の限度を400mmとしていることから、光軸
の数は下表に示す数以上となること。
36 第49条関係
ただし書きは、図示のように光軸より50mm以上離れたいかなる位置においても受光器が感応しない
ことを定めていること。
37 第50条関係
本条の安全距離と光軸との関係を例示すれば、次のとおりであること。
D:安全距離
a:光軸からボルスター前面までの水平距離
lBボルスターの奥行き
38 第51条関係
(1) 1号表中「ダイハイト」とは、ストローク下で、かつ、調節上の状態のときのスライドとボルス
ター間の距離をいうこと。
この場合、ストローク下とは、スライドがストロークの下端位置(下死点)にある状態のことをい
い、調節上とは、スライド調節装置によってスライドとボルスター間の距離が最大となる状態をい
うこと。
図においてHDはダイハイトを示すものであること。
(2) 第1号表中の「テーブル長さ」とは、図のLをいうこと。
(3) 第1号表中の「ギャップ深さ」とは、図のCをいうこと。
39 附則関係
「現に製造している」とは、現に設計が完了された以降の過程にあることをいうこと。
なお、同一設計により、量産されるものについては、個別に製作過程にあるか否かにより、現に製
造されているか否かを判断すること。
「現に存する」とは、製造の全過程が終了し、現に設置使用されており、又は使用されないで保管
されているものをいうこと。