ボイラー構造規格
第一編 鋼製ボイラー
第三章
工作及び水圧試験(第四十二条−第六十一条) |
ボイラー構造規格
目次
第一節 溶接
(適用範囲)
第四十二条 ボイラーの圧力を受ける部分の溶接は、この節の定めるところによらなければならない。た
だし、圧縮応力以外に応力を生じない部分の溶接については、この限りでない。
(溶接方法)
第四十三条 溶接は、溶接部が安全上必要な強度を有するような方法によらなければならない。
2 溶接は、著しい曲げ応力が生ずる部分を避けなければならない。
(溶接部に設ける穴)
第四十四条 溶接部(溶接金属の縁から六ミリメートル以内の部分を含む。)には、穴を設けてはならな
い。ただし、溶接後熱処理を行い、かつ、放射線検査に合格した溶接部については、この限りでない。
2 前項ただし書の放射線検査は、穴の中心から測って両側に穴の径の一・五倍以上の範囲について行わ
なければならない。
(溶接継手の効率)
第四十五条 溶接部の許容引張応力は、第三条又は第四条から求めた値に溶接継手の効率を乗じて得た値
とする。
2 前項の溶接継手の効率は、次の表の上欄に掲げる溶接継手の種類に応じて、それぞれ同表の下欄に掲
げる値による。(表)
(溶接後熱処理)
第四十六条 溶接部は、溶接後熱処理を行わなければならない。ただし、漏止め溶接部等溶接後熱処理の
必要がない溶接部については、この限りでない。
2 溶接後熱処理は、日本産業規格Z三七〇〇(溶接後熱処理方法)又はこれと同等と認められる規格
(以下この項において「日本産業規格等」という。)に定めるところにより、炉内で行わなければなら
ない。ただし、胴、管寄せ、管等の周継手等局部加熱の方法によることができると認められる溶接部の
溶接後熱処理は、局部加熱の方法によることができる。この場合において、当該日本産業規格等に定め
られた保持温度又は保持時間を低減することができる場合は、現場溶接、使用材料及び構造等により当
該日本産業規格等に定める保持温度及び保持時間で当該溶接後熱処理を行うことが困難な場合又は適当
でない場合に限るものとする。
3 特殊な材料、構造等により、前項に規定する方法で溶接後熱処理を行うことが困難な場合又は適当でな
い場合には、都道府県労働局長が定める方法によることができる。
(溶接部の要件)
第四十七条 溶接部は、溶込みが十分で、かつ、割れ又はアンダカット、オーバラップ、クレータ、スラグ
の巻込み、ブローホール等で有害なものがあってはならない。
(溶接部の機械試験)
第四十八条 溶接部は、次の各号に掲げるところにより作成した試験板について、第五十一条から第五十四
条までに規定する機械試験を行い、これに合格したものでなければならない。
一 胴の長手継手の溶接を行う場合には、試験板は、胴端に取り付け、かつ、溶接線が胴の長手継手と同
一直線上にあるようにして胴の長手継手と同時に溶接を行い、胴全体について一個の試験板を作ること。
ただし、胴各節の長手継手の溶接が同一条件で行われない場合には、各節ごとに一個の試験板を作るこ
と。
二 胴の周継手又はドーム等の取付部の溶接を行う場合には、試験板は、胴、ドーム等とは別に準備して、
胴の周継手又はドーム等の取付部の溶接に引き続き同一条件によって溶接するものとし、胴全体に対し
て一個の試験板を作ること(前号の試験板が胴の周継手又はドーム等の取付部と同一条件で溶接され、
当該試験板について第五十一条から第五十四条までに規定する機械試験を行う場合を除く。)。
三 管寄せ等のように個数の多いものであって、板の厚さの差が六ミリメートル以内、直径の差が百五十
ミリメートル以内で、かつ、同一材質のものを同一条件で引き続き溶接する場合には、長手溶接線六十
メートル及びその端数ごとに一個の試験板を作ること。
(試験板)
第四十九条 試験板は、母材が適合する日本産業規格又はこれと同等と認められる規格と同一の規格の同一
の種類に属し、かつ、同一の厚さを有する材料で作るものとし、溶接によって反りを生じないようにしな
ければならない。
2 溶接によって試験板に反りを生じた場合には、溶接後熱処理を行う前に整形しなければならない。
3 試験板は、本体の溶接部と同様に溶接後熱処理を行わなければならない。
(機械試験の種類等)
第五十条 試験板について行う機械試験の種類は、試験板の厚さに応じ、それぞれ次の各号に掲げるとお
りとする。
一 厚さ十九ミリメートル未満の試験板 引張試験、表曲げ試験及び裏曲げ試験
二 厚さ十九ミリメートル以上の試験板 引張試験、裏曲げ試験(突合せ両側溶接が行われた試験板に
あっては、表曲げ試験とすることができる。)及び側曲げ試験
2 機械試験における試験片は、日本産業規格B八二六五(圧力容器の構造−一般事項)の附属書十一又
はこれと同等と認められる規格に定めるところにより採取し、その数は機械試験の種類ごとに一とする。
(引張試験)
第五十一条 引張試験の方法並びに引張試験片の形状及び寸法は、日本産業規格Z三一二一(突合せ溶接
継手の引張試験方法)又はこれと同等と認められる規格に定めるところによらなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、試験片の厚さが厚いため引張試験ができない場合には、薄のこぎりでこれ
を試験可能な厚さに切り分けたものによって引張試験を行うことができる。この場合においては、切り
分けた試験片の全部が引張試験に合格しなければならない。
(引張試験の合格基準)
第五十二条 引張試験は、試験片の引張強さが母材の常温における引張強さの最小値以上である場合に、
これを合格とする。
2 前項の引張試験において、試験片が母材の部分で切れた場合には、その引張強さが母材の常温における
引張強さの最小値の九十五パーセント以上で、かつ、溶接部に欠陥がないときは、当該引張試験に合格し
たものとみなす。
3 第一項の引張試験において、不合格の原因が母材の欠陥にある場合には、当該試験を無効とすることが
できる。
(曲げ試験)
第五十三条 表曲げ試験片、裏曲げ試験片及び側曲げ試験片の形状及び寸法並びに表曲げ試験、裏曲げ試
験及び側曲げ試験の試験方法及び試験用ジグは、日本産業規格Z三一二二(突合せ溶接継手の曲げ試験
方法)又はこれと同等と認められる規格に定めるところによらなければならない。
2 第五十一条第二項の規定は、曲げ試験について準用する。
(曲げ試験の合格基準)
第五十四条 曲げ試験は、試験片の溶接部の外側に長さ三ミリメートルを超える割れ(縁角に生ずる小さ
な割れを除く。)が生じない場合に、これを合格とする。
(再試験を行うことができる条件)
第五十五条 第五十二条又は前条の規定により機械試験に不合格となった場合であって、次の各号のいず
れかに該当するときは、再試験を行うことができる。
一 引張試験において、試験成績が規定の九十パーセント以上のとき。
二 曲げ試験において、溶接部の不合格の原因が溶接部の欠陥以外にあると認められるとき。
(再試験の試験片及び合格基準)
第五十六条 再試験は、不合格となった試験片一個について、同一の試験板又はこれと同時に作成した試
験板から採取した二個の試験片によって行い、この試験片が第五十二条又は第五十四条の規定によりと
もに機械試験に合格した場合に、これを合格とする。
2 試験板の大きさが前項の試験片を採取するのに十分でない場合には、不合格となった試験片を採取した
試験板を作成したボイラー溶接士によって、新たに同一条件で試験板を作成することができる。
(放射線検査)
第五十七条 胴及び鏡板の長手継手、周継手等は、その全長について放射線検査を行い、その検査の結果
は第五十九条に掲げる要件を具備しなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当するものに
ついては、放射線検査を省略することができる。
一 長手継手の放射線検査に合格した胴の周継手であって、当該長手継手を溶接したボイラー溶接士が
長手継手を溶接した方法と同一の方法で溶接を行ったもの
二 都道府県労働局長が放射線検査の必要がないと認めたもの
(余盛りの高さ)
第五十八条 放射線検査を行う継手の余盛りは、放射線検査を行うのに支障がないものとしなければなら
ない。
2 裏当てを使用した突合せ片側溶接にあっては、裏当てが放射線検査の障害にならない限り、裏当てを残
したまま放射線検査を行うことができる。
(放射線検査の方法及び合格基準)
第五十九条 放射線検査の方法及びその結果は、母材の種類に応じ、それぞれ次の各号に掲げるところによ
らなければならない。
一 鋼材(ステンレス鋼材を除く。) 日本産業規格Z三一〇四(鋼溶接継手の放射線透過試験方法)に
よって行い、第一種から第四種までのきずが当該日本産業規格に定める透過写真によるきずの像の分類
方法により一類若しくは二類であること又はこれと同等と認められる方法によって行い、これと同等と
認められる結果であること。
二 ステンレス鋼材 日本産業規格Z三一〇六(ステンレス鋼溶接継手の放射線透過試験方法)によって
行い、第一種から第四種までのきずが当該日本産業規格に定める透過写真によるきずの像の分類方法に
より一類若しくは二類であること又はこれと同等と認められる方法によって行い、これと同等と認めら
れる結果であること。
(放射線検査の再試験)
第六十条 放射線検査の結果が前条に掲げる要件を具備しない場合には、その原因となったきずの部分を完
全に除去して再溶接し、その再溶接した部分について再び放射線検査を行い、その結果が同条に掲げる要
件を具備しなければならない。この場合において、第五十七条ただし書の規定は適用しない。
第二節 水圧試験
第六十一条 ボイラーは、最高使用圧力の一・五倍の圧力(その値が〇・二メガパスカル未満のときは、
〇・二メガパスカル)により水圧試験を行って異状のないものでなければならない。
2 最高使用圧力以上の圧力を受けるおそれのない温水ボイラーは、前項の規定にかかわらず、最高使用圧
力に〇・一メガパスカルを加えた圧力(その値が〇・二メガパスカル未満のときは、〇・二メガパスカル)
により水圧試験を行って異状のないものでなければならない。
3 次の各号に掲げるボイラーの部分は、それぞれ当該各号に掲げる圧力により水圧試験を行って異状のな
いものでなければならない。この場合において、第一号の水圧試験は、穴あけするものにあっては、穴あ
け前に行うものとし、かつ、当該水圧試験圧力が前項に規定する圧力より小さい場合には、同項に規定す
る圧力によるものとする。
一 水管ボイラーの溶接部品 最高使用圧力の一・五倍の圧力
二 鋳鉄品の部分 最高使用圧力の二倍の圧力
4 前項第一号の水圧試験は、ボイラーの組立て後、溶接部について放射線検査又は超音波探傷試験が実施
でき、かつ、当該溶接部の補修が可能である場合には、当該水圧試験を省略することができる。