安全衛生情報センター
当局管内の事業場から、風力発電設備の点検、整備等に用いられる特殊な構造を有する下記1のゴンド ラについて照会があり、ゴンドラ構造規格(以下「構造規格」という。)第9条の規定を適用することは、 下記2の理由により困難であるが、下記3の安全対策を講ずることにより、同条の規定に適合するものと同 等以上の性能を有するものであると認められることから、構造規格第45条の規定により構造規格第9条の 適用を除外することとしてよろしいかお伺いします。
1 本件ゴンドラの概要について 本件ゴンドラは、ドイツ国にて風力発電機のブレードの点検、整備等の作業を専用に行うことを目的 として、欧州統一規格EN 1808:1999+A1:2010に基づいて製造されたもので、世界では欧州を中心に、 約100基の製造実績がある。 (ゴンドラの全体図及び作業床の形状を図1及び図2に示す。)
(1) | 種類・型式 | 可搬型(懸垂型デッキ式;風力タービン用) | |
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(2) | 積載荷重 | 0.24t | |
(3) | 製造者 | トラクテル グライフツグ ゲーエムベーハー Tractel Greifzug GmbH |
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(4) | 電動機定格出力 | @ 50Hz 1.9kw×2(左右) A 60Hz 2.4kw×2(左右) |
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(5) | 定格速度 | @ 50Hz 0.15m/s A 60Hz 0.183m/s |
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(6) | 許容下降速度 | @ 50Hz 0.17m/s A 60Hz 0.192m/s |
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(7) | ブレーキ | 電磁ブレーキ、遠心ブレーキ(降下加速防止ブレーキ) | |
(8) | ワイヤロープ | 直径10mm(WS)、許容荷重83kN | |
(9) | 最大楊高 | 100m | |
(10) | 安全装置 | 過負荷制限装置ほか(詳細は下記3に記載) |
2 構造規格第9条の適用が困難な理由 本件ゴンドラは、風力発電設備のブレードの点検、整備等を行うために作業者が当該ブレードの全周 に渡って移動して作業を行う必要がある。 このため、本件ゴンドラの搬器は、ブレードの両側を囲み込む特殊な形状とし、そのために必要な作 業床の面積を確保する必要とするところであるが、構造規格第9条に定める積載荷重とした場合、上昇・ 下降装置、ワイヤロープ等の重量が増大することとなる。 しかしながら、風力発電設備は、荷重影響等に対して一定の制約があるため、ゴンドラの重量が過大 となった場合には、風力発電設備本体に損傷を与えるおそれがあることから構造規格第9条を適用する ことが困難である。 3 安全対策について 安全対策として、積載荷重に達すると搬器の上昇が不可となり、同時にコントロールボックスに警告 サインが点灯する過負荷制限装置を備えることとする。 また、当該装置は次の電子式と機械式の2種類を併用することとする(装置の詳細を図3及び図4に示す)。 (1) 電子式過負荷制限装置について 積載荷重以上の負荷がかかると、シーブを動かすモーターの消費電流を検出し、設定値を超えると、 ホイストの作動が遮断され上昇が止まる。 (2) 機械式過負荷制限装置について ホイスト内を通過するワイヤロープに積載荷重以上の負荷がかかると、その張力を検出し、マイク ロスイッチがピンで押され、ホイストの作動が遮断され上昇が止まる。 (3) 傾斜リミッター及び傾斜監視装置について 傾斜リミッターは搬器の傾きが約6度に達した場合、傾斜スイッチが作動し、左右のホイストの内、 先行している側のホイストが自動停止するものであるが、傾斜リミッターが何らかの理由で作動しな かった場合、常に傾斜監視装置の水銀スイッチが搬器の傾きを監視し、約10度に達すると自動停止す る。なお、搬器の傾きを容易に矯正するためのレバーブロックを左右ホイストの両側に2本ずつ備える。 (4) 速度制御装置について 作業床の下降する速度が許容下降速度を超えた場合、自動停止する。 (5) ライフライン用ワイヤロープについて 本件のゴンドラは、2本の上昇・下降用ワイヤロープに加え、同種・同径のライフライン用ワイヤ ロープ2本を具備し、万一、巻上げ用ワイヤロープが切断した場合においても、作業者の安全が確保 される構造となっている。図1〜4(PDF:250KB)