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別紙1

東電福島第一原子力発電所の廃炉作業等に係る線量管理に係る留意点について

1 放射線業務及び各種工事従事者の発電所構内への入退所管理
  発電所長は、発電所に立ち入る全ての労働者を漏れなく把握し、(1)から(6)までに係る事項を確実に
 実施すること。
 (1) 労働者の基本情報の入手
   発電所長は、元方事業者と連携し、発電所で放射線業務及び各種工事を行う全ての事業者から、以
  下の基本情報の提出を求め、それを保存すること。
   作業員番号、中央登録番号、元方事業場名、所属事業場名、氏名、生年月日、住所、電話番号、直
  近の健診受診日(特殊、一般)、新規入場者教育(特別教育)実施日
 (2) 新規入場者教育の実施及びその記録等
   発電所長は、元方事業者と連携し、発電所において初めて放射線業務及び各種工事に従事する全て
  の労働者に対して、電離則第52条の7に定める特別教育の内容を含む新規入場者教育を実施し、実施
  記録を労働者の基本情報に追記すること。また、労災補償制度の概要についても周知を図ること。
 (3) 入構証等の発行及び入退所管理
   発電所長は、新規入場者教育を修了した者に対して、ID番号及び写真の付された入構証等を発行し、
  ゲートの入場時刻、退場時刻をID番号に対応させて記録すること。
 (4) 確実な被ばく線量情報の記録
  ア 発電所長は、放射線業務及び各種工事に従事する労働者のAPDのデータを、APDの返却ごとにID番
   号に対応させて記録すること。
  イ 発電所長は、アの記録を、APDの返却時に労働者に書面により通知すること。
  ウ 発電所長は、特定高線量作業に従事する者が、1月ごとに1回、内部被ばくを測定できるよう測定
   期限が迫っている者に対し通知することが可能な管理を行うこと。
 (5) 被ばく線量情報の統合及び通知
  ア 労働者基本情報、被ばく情報の統合
    発電所長は、労働者基本情報及び被ばく情報をID番号別に対応させて統合し、累積線量を積算す
   ること。
  イ 事業者及び労働者への通知
    発電所長は、統合された全ての放射線業務及び各種工事に従事する労働者の被ばく線量を、外部
   被ばく線量については翌日(休日の前日については、休日の翌日)、外部被ばく及び内部被ばくを合
   算した実効線量及びその累計については1月ごとに1回、自社社員及び元方事業者に対して書面又は
   電子データにより通知すること。
 (6) 特定高線量作業中の立入禁止措置等
   発電所長は、平成23年12月16日付け基発1216号第1号通達の記の3により、電離則第7条の緊急被ば
  く限度(100ミリシーベルト)が適用されるとされている作業(発電所に属する原子炉施設並びに蒸気タ
  ービン及びその附属設備又はその周辺の区域であって、その線量が1時間につき0.1ミリシーベルトを
  超えるおそれのある場所において、原子炉施設若しくは使用済燃料貯蔵槽を冷却する設備の機能を維
  持するための作業を行うとき又は原子炉施設の故障、損壊等により、多量の放射性物質の放出のおそ
  れがある場合に、これを抑制若しくは防止するための機能を維持するための作業)(以下「特定高線量
  作業」という。)に従事する労働者と、それ以外の作業に従事する労働者の被ばく線量は区分して管
  理すること。さらに、特定高線量作業者であることを外見上識別できる措置を講じた上で、特定高線
  量作業を実施中にその区域内に関係のない労働者が立ち入らないよう、作業指揮者が監視する等の措
  置を実施すること。

2 APDの管理
  発電所長及び元方事業者は、次に掲げる事項を適切に実施すること。
 (1) APDの貸与
   発電所長は、労働者本人がAPDを受け取ったことを確実に把握するため、個人別の貸与を徹底する
  こと。
 (2) 警報値の設定
  ア 警報設定値は、一日当たりに見込まれる最大の線量を超えないように設定するためのものである
   ことから、警報設定値は、可能な限り1日当たりに見込まれる最大の線量に近い値を設定すること。
  イ また、作業後の被ばく線量の実績値との比較を通じ、継続的に警報設定値を被ばく線量の実績値
   に近付けていくこと。
 (3) APD測定値の確認等
   発電所長及び元方事業者は、APD測定値を把握した後、速やかに、以下の事項を実施すること。
  ア ガンマ線による外部実効線量を確認し、線量が警報設定値に比較して著しく低い等(例:警報設定
   値の5〜10%以下)、不自然な場合には、作業内容等を確認すること。
  イ 作業内容に比して過大な警報設定値が設定されている場合は、適切な値に修正すること。
  ウ 同じ警報値を採用している同一作業グループの中で、他の労働者と比較して被ばく線量が相当程
   度低い者(例:最も被ばく線量が高い者の5〜10%以下)について、作業内容の確認を行うとともに、
   作業内容に比して過大な警報設定値が設定されている場合は、適切な値に修正すること。

3 積算線量計の管理
  発電所長及び元方事業者は、次に掲げる事項を適切に実施すること。
 (1) 管理方法
   適切な職業被ばく測定のためには就業中にのみ積算型個人線量計(以下「積算線量計」という。)を
   着用する必要があることから、発電所長又は元方事業者の管理下で、自社及び関係請負人の労働者
   について、終業時に積算線量計を適切な場所で保管した上で、翌始業時に積算線量計を装着させる
   こと。
 (2) コントロールバッジ
   積算線量計による適切な職業被ばくの測定のためには、就業時以外の被ばくを差し引くコントロー
  ルバッジの適切な運用が重要であることから、使用中の積算線量計の保管場所と同等の空間線量率の
  場所においてコントロールバッジを適切に保管すること。
   また、未使用の積算線量計も、コントロールバッジと同等の空間線量率の場所に保管すること。

4 APDと積算線量計の比較及び評価
  発電所長及び元方事業者は、次に掲げる事項を適切に実施すること。
 (1) 積算線量計は、就業中継続して着用が可能であること、方向特性等による誤差がAPDより小さいこ
  と等から、APDより信頼性が高いとされているが、ガンマ線による実効線量について、積算線量計と
  APDの値で、以下に留意の上で各事業者が定める一定の基準を超える乖離がある場合は、データの確
  認等の調査を実施すること。
  ① 日本工業規格(JIS)では、APDの指示誤差として±30%を認めており、また、国際原子力機関(IAEA)
   の安全基準では、二つ別々の測定器による誤差はおおむね35%程度までが認められている。しかし
   ながら、発電所内において、年40ミリシーベルトなど法定被ばく限度に近い被ばく限度まで作業す
   る作業者に対しては、より慎重な取扱が必要であること。
  ② このため、乖離の調査を行うための基準値としては、今回のデータ分析による標準偏差(0.094)
   のおよそ2倍である±20%を上回らない値とすることが望ましいこと。
 (2) (1)のデータの確認を行ってもなおAPDの値が積算線量計より高い場合は、APDの値を記録値として
  採用すること。

5 内部被ばくの測定
  発電所長及び元方事業者は、放射性物質の摂取が疑われる場合は即時にホールボディカウンター(以下
 「WBC」という。)による内部被ばく測定を実施するとともに、やむを得ない緊急の状況により即時のWB
 Cによる測定が困難になった場合には、平成23年8月2日に定めた「福島第一原子力発電所における内部
 被ばく線量の評価方法について」(以下「統一評価方法」という。)により内部被ばく評価を行うこと。

6 線量記録の適切な管理・保管
  発電所長及び元方事業者は、次に掲げる事項について必要な体制を構築すること。
 (1) 将来の検証に備え、同発電所作業者に係る外部被ばく、内部被ばくともに、測定器の種類、測定条
  件、測定結果を可能な限り原票(紙媒体をスキャンした電子媒体を含む。)の形で保管しておくこと。
 (2) 内部被ばく測定の結果、内部被ばく線量が1ミリシーベルトを超えるおそれがあるため核種同定を
  含む内部被ばく線量の評価を行った場合は、スペクトルデータ、検出限界値といった測定の詳細に加
  え、摂取日(作業開始日)の根拠となる、WBCの受検時の関係書類、勤務シフト表、出勤簿、放射線管
  理手帳の写し等の一次記録の保管とともに、内部被ばく線量の計算過程も記録しておくこと。
 (3) 元方事業者は、関係請負人の労働者に係る測定等の結果についても、同様に管理及び保管を行うこ
  と。

7 ベータ線被ばくの評価
  発電所長及び元方事業者は、次に掲げる事項を実施すること。
 (1) ベータ線による被ばくがガンマ線による被ばくの10倍以上になるおそれがある場合は、電離則第8条
  第3項第一号に定める部位に装着する測定器は、1センチメートル線量当量及び70マイクロメートル線
  量当量を測定できる測定器とすること。
 (2) (1)に加え、処理済み廃液を取り扱う場合等、同条同項第三号に該当する場合は、最も多く放射線
  を被ばくするおそれのある部位に70マイクロメートル線量当量を測定できる測定器を装着して測定を
  行うこと。
 (3) ベータ線による被ばく線量の実効線量への加算について
   (1)によって測定された日ごとの70マイクロメートル線量当量が日ごとの1センチメートル線量当量の
  10倍以上ある場合であって、以下のア又はイで算定された値が積算線量計の測定下限値(0.1ミリシー
  ベルト)以上となる場合は、それぞれの場合に応じ、ア又はイの値を月間の累積1センチメートル線量
  当量に加算して月間の実効線量を算定すること。
  ア (2)の測定が行われていないときは、(1)で測定された月間の累積70マイクロメートル線量当量に
   皮膚の組織加荷重係数(0.01)を乗じた値
  イ (2)の測定が行われた場合は、(1)の測定器と(2)の測定器でそれぞれ測定された月間の累積70マ
   イクロメートル線量当量を皮膚の面積で加重平均した値に皮膚の組織荷重係数(0.01)を乗じた値
 (4) 不均等被ばく時の評価について
   遮へい用防護衣を着用することにより、不均等被ばくが生じている場合は、遮へいされた身体の部
  位の全身の表面積に占める割合に応じ、適切に(3)に定める実効線量への加算を行うこと。

8 ガンマ線被ばくに関する不均等被ばくの評価
  発電所長及び元方事業者は、次に掲げる事項を実施すること。
 (1) 遮へい用防護衣を着用することにより、不均等被ばくが生じている場合のガンマ線による被ばくの
  評価については、「外部被ばく及び内部被ばくの評価法に係る技術的指針」(平成11年4月放射線審議
  会基本部会)に定める計算式により実効線量を算出すること。
 (2) 遮へい用防護衣で遮へいされる部位の範囲が同指針で定める範囲より狭い場合は、より適切な評価
  のため、同指針別添4に掲げられている部位別加重係数の表に基づき、遮へいされる部位の範囲に応
  じた計算式を設定し、それを用いて実効線量を算出すること。