安全衛生情報センター
労働基準行政の推進につきましては、日頃から格別の御配慮をいただき厚く御礼申し上げます。 さて、平成27年3月18日に秋田県内の温泉関係施設において、硫化水素中毒が原因と考えられる災害に より、労働者3名が死亡するという重大な労働災害が発生しました。 現在、原因等の詳しい状況については調査中ですが、過去においても温泉を溜めている貯湯タンク内で 清掃作業を行っていた労働者が硫化水素中毒により死亡に至る等の労働災害が発生しております。 ついては、過去の硫化水素中毒災害の発生状況も踏まえ、同様の作業を行う場合は、下記事項に留意し、 労働者の安全を確保するよう、貴団体の会員への周知をお願いいたします。
1 事業者は、硫黄泉等の硫化水素を含む温泉の温泉関係施設において、温泉の貯湯タンク内の清掃や、 源泉からの送湯管内の空気抜きの作業等、高濃度の硫化水素が生じるおそれがある場所における作業を 行うに当たっては、以下の事項を行うこと。 (1) 作業を行う前に作業場所の硫化水素濃度を測定し、その濃度が10ppmを超える場合は、10ppm以 下になるよう換気すること。換気を行うことが困難である場合は、労働者に呼吸用保護具を使用さ せること。 なお、硫化水素濃度を測定する際には、高濃度の硫化水素が発生している可能性もあるため、保 護具を着用した上で測定する、離れた場所から測定器を近づける等、十分に注意すること。 (2) 作業が終了するまでの間は、硫化水素濃度が10ppm以下になるよう換気を行うこと。 (3) 硫化水素濃度が10ppmを超える場所で作業を行わせる場合は、労働者に呼吸用保護具を使用させ ることはもとより、作業者以外が立ち入ることがないよう、立入禁止の表示を見やすい箇所に行い、 関係者以外の立入を禁止すること。 (4) 積雪の多い地域については、積雪により換気が妨げられることのないよう十分留意すること。 2 安全衛生教育の実施 事業者は、事前に作業の手順及び緊急時の救助方法等について作業標準を定め、関係労働者に教育す ること。 近年における温泉関係施設での硫化水素中毒の事例
災害発生場所 | 被災労働者数(人) | 災害概要 | |
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死亡 | 休業 | ||
源泉付近の送湯管のバルブ周辺 | 3 | 0 | 送湯管のバルブから空気を抜く作業を行っていたところ、送湯管から放出された硫化水素を吸い込み死亡したものと思われる。 |
湯の花製造のための貯湯タンク内 | 0 | 1 | 貯湯タンク内の清掃作業を行っていたところ、異臭を感じ意識を消失し、被災したもの。 |
温泉水と温泉沈殿物を分離するタンク内 | 2 | 0 | タンク内で温泉沈殿物を除去する作業中、温泉水と沈殿物を撹拌したことによって放出された硫化水素を吸い込み死亡したもの。 |
温泉貯湯タンク内部 | 2 | 0 | 貯湯タンク内部の温泉沈殿物の水洗作業中に、貯湯タンク内部の硫化水素を吸い込み死亡したもの。 |
温泉貯湯タンク上部 | 0 | 1 | 貯湯タンク内にある、湯の花をそぎ落とすための固体状の物質を回収するため、タンク上部の蓋を開け、回収作業を行っていたところ、何らかの原因で発生した硫化水素を吸い込み被災したもの。 |
温泉施設近くの雪のくぼ地 | 0 | 2 | 温泉施設付近にあった雪のくぼ地に落ちた観光客を救出するため、救出作業にあたった労働者が、くぼ地に溜まった硫化水素を吸い込み被災したもの。 |