安全衛生情報センター
1. はじめに ○原子力災害対策本部では、平成23年12月26日に「ステップ2の完了を受けた警戒区域及び避難指示区域 の見直しに関する基本的考え方及び今後の検討課題について」を決定し、順次区域の見直しを進めてき た。 ○同決定においては、避難区域見直し後、居住制限区域において将来的に住民が帰還し、コミュニティを 再建することを目指し、インフラ復旧等を計画的に実施することとしており、また、帰還困難区域のイ ンフラ復旧については関係者との協議の上、対応の方向性を検討することとしている。 ○国の直轄事業では、構造物の安全性を前提として、廃棄物の発生量の抑制を図る観点から、従来、廃棄 物の再資源化により得られた再生砕石や再生アスファルト混合物等の再生資材を率先して利用すること としている。 ○今後、避難指示区域等におけるインフラ復旧のための工事が本格化することに伴い、福島県の要望等も 踏まえ、放射性物質の影響を受けた建築物等の解体・修復工事等に伴い発生する建設副産物の再利用及 び再生利用(以下「再利用等」という。)の基本的考え方を次のとおり定める。 2. 建設副産物の再利用等に関する基本的考え方 (1) 建設工事における再利用等について ①建設発生土、アスファルト及びコンクリートの再利用等について 建設副産物の再利用においては、汚染された表面が除去等されることにより放射線量が低減される ことが期待される。また、発生場所から遠く離れた場所で再利用等が行われることは一般的ではない。 このため、建設副産物の再利用等は、放射線量が同等又はより高い区域において行うことを基本とす る。具体的には、帰還困難区域で発生するものについては帰還困難区域において、居住制限区域にあ っては、帰還困難区域又は居住制限区域において再利用等を行うことを基本とする。 なお、避難指示解除準備区域において発生するこれらの建設副産物については、避難指示が行われ ていない区域において発生するものと同様に、再利用等を行う区域の制約を課さないことが再利用等 を促進する観点からも適当である。 ②国及び福島県等が行う公共工事について 国、福島県及び県内市町村が行う復旧工事等の公共工事においては、上記の考え方に基づき、建設 副産物の再利用等を推進することとする。 特に、帰還困難区域・居住制限区域における公共工事においては、①できる限り土壌表面の除去等 の線量低減措置を講じること。②帰還困難区域・居住制限区域から発生した建設副産物の再利用等は 道路、河川等の屋外の公共工事に限定すること、③公共工事の前後の空間線量率及び建設副産物を再 利用等した場所の表面線量率又は表面計数率を測定し、工事の前後でこれらの線量率が有意に上昇し ていないことを確認することにより、作業者又は住民が受ける放射線量の低減を図ることとする。 (2) 金属類及び建設発生木材について 汚染された金属類及び建設発生木材の再利用等を行う場合は、「東京電力株式会社福島第一原子力 発電所事故の影響を受けた廃棄物処理処分等に関する安全確保の当面の考え方」(平成23年6月3日原子 力安全委員会)に示されているとおり、これらを再利用して生産された製品は、市場に流通する前にク リアランスレベルの設定に用いられた基準(10マイクロシーベルト/年)以下になるように、放射性物質 の濃度が適切に管理されていることを確認する必要がある。 なお、金属類及び建設発生木材のうち屋内にあるものは汚染が少ないと考えられるが、平成23年3月 11日の事故発生以降屋外にあったもの及び屋外に面していたものについては、汚染に注意する必要が ある。 3. 発生した区域より放射線量の低い区域における再利用等 帰還困難区域・居住制限区域において発生する建設副産物であっても、以下のいずれかの条件を満た す場合は、発生した区域より放射線量が低い区域において再利用等を行うことができる。 ①建設副産物を再資源化した資材(建設発生土を含む。以下、「再資源化資材」という。)の放射能濃 度が100ベクレル毎キログラム以下である場合。これらの物は、工事制約のない使用を可能とする。 なお、放射能濃度については、イ)放射性物質による汚染がない深さを測定し、裕度を加えた深さま で除去した物をできる限り高い頻度で測定して確認すること、ロ)できる限り網羅的に測定して確認 することなどが考えられる。 ただし、当面の間の措置として、福島県浜通り及び中通りにおける道路、河川等の屋外の公共工 事に使用する再資源化資材について、表面線量率が0.23マイクロシーベルト毎時以下である場合は 使用可能である。なお、当該表面線量率の測定に当たっては、空間線量率が十分に低い環境又は鉛 遮へいを用いる等により外部の放射線の影響を十分に遮へいできる環境において、できる限り網羅 的に行うこと。 ②利用者・周辺居住者の追加被ばく線量が10マイクロシーベルト毎年以下になるように管理された状 態で屋外において遮蔽効果を有する資材等を用いて利用する場合は使用可能である。例えば下層路 盤材として利用する際には、30センチメートル以上の覆土等を行う場合は、3000ベクレル毎キログ ラム以下の再資源化資材の使用が可能である。なお、工事完了後も適切に管理され、遮蔽された状 態を維持することが必要である。また、再利用等に当たっては、対象となる再資源化資材の発生場 所等の履歴、平均的な放射性セシウム濃度、利用量、利用箇所等を記録し、当該施設の管理者にお いて適切に保管すること。 4. その他 ①作業者が受ける放射線量については、合理的に達成できる限り低くすることが原則である。除染作業 以外の復旧・復興作業等についても対象とする改正が行われた、東日本大震災により生じた放射性物 質により汚染された土壌等を除染するための業務等に係る電離放射線障害防止規則を遵守する等によ り、作業者の放射線量の管理を適切に行うことが必要である。 ②公共工事等に伴い発生する建設副産物のうち、再利用等が困難なものについては、廃棄物処理法及び 放射性物質汚染対処特別措置法に基づき、適切に処理する。 ③建設副産物の再利用等に当たっては、関係法令を遵守する。 ④建設副産物の再利用等に当たり、再生資源化施設における処理が必要な場合は、当該施設周辺の空間 線量率を有意に上昇させることのないように留意する。 ⑤港湾、河川等のしゅんせつを行う場合、地上の土壌の放射能濃度との相違があることが考えられるた め、しゅんせつした土壌の表面線量率等を測定し、しゅんせつした土壌を置く場所において住民が受 ける放射線量を上昇させることのないよう適切に取り扱う。 ⑥なお、建設副産物の再利用等をより適切に促進する観点から、状況の変化等があった場合は、本考え 方の見直しを含め、適切に対応していく。 (参考) 再利用等の目安の検討において参考とした考え方 2. (2)について 全国的に流通することが想定される資材等であり、「東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故の 影響を受けた廃棄物の処理処分等に関する安全確保の当面の考え方について」(平成23年6月3日原子力安 全委員会決定)の再利用の考え方を踏まえて検討した。 3. ①について 当該資材等の使用に伴い受ける放射線量を年間10マイクロシーベルトとして導出される放射能濃度又 は国際原子力機関(IAEA)が提唱する規制免除レベルである放射性セシウムの濃度100ベクレル毎キログ ラムを目安とした。 また、経済産業省の砕石及び砂利の出荷基準に関する専門検討会では、砕石及び砂利の出荷基準につ いて検討し、当面の間、福島県内の浜通り及び中通りの地域にある採石場及び砂利採取場を対象として、 対象製品を製造し出荷する事業者は、100Bq/kg以下であれば出荷可能としている。ただし、対象地域に おける道路、河川等の屋外の公共工事に使用される製品については、当面の間、表面線量率が0.23マイ クロシーベルト毎時以下であれば出荷可能としている。 3. ②について 「管理された状態での災害廃棄物(コンクリートくず等)の再生利用について」(平成23年12月27日環 境省)において、道路等の路盤材等へ利用する場合、利用者・周辺住民の追加被ばく線量が年間10マイク ロシーベルト以下となるよう管理された状態で利用することが可能との考え方を用いたものである。