安全衛生情報センター
1 水産食料品製造業における労働災害の分析結果 (1) 「転倒」による災害 全体の5割強が床や地面で滑って転倒した災害、障害物によりつまずいた災害が全体の2割強となっ ている。滑って転倒した災害の原因として、床や地面が濡れていたことによるもの、床や地面が凍結 していたことによるものがともに3割強となっている。 床の濡れや、床に置いた障害物などによる転倒災害について、災害の概要を確認したところ、少な くとも約4割は4S(整理、整頓、清掃、清潔)を徹底していれば防止できたものと考えられる。 (2) 「はさまれ、巻き込まれ」による災害 機械(食品加工用機械、ロール機、コンベヤー等)及びその一部(機械の駆動部、ベルト、ギア等)に はさまれる、あるいは巻き込まれる災害が全体の7割強を占めている。 これら機械による災害について、作業別にみると、機械の清掃作業中の災害が約3割、機械に付着し た魚の骨やヒレ等を除去する作業中の災害が約4分の1、機械の修理・調整・点検中の災害が1割強と、 いわゆる「非定常作業」における災害が全体の7割弱を占めている。機械による災害の要因としては、 機械を止めないまま点検、修理、清掃等を行って被災した災害が約6割を占めている。その他、機械の 誤操作により被災した災害が1割強となっている。 また、工場内を移動中にバックしてきたフォークリフトに轢かれた災害や、機械に挟まった魚を除 去するため機械を止めて作業を行っていたところ別の作業者が除去作業中であることに気づかずに機 械のスイッチを入れてしまい被災した災害など、作業員間の連絡不備による災害が全体の約1割みられ た。 (3) 「切れ、こすれ」による災害 食材の加工・調理中の災害が全体の約7割を占めている。また、機械(食品加工用機械、ロール機、 コンベヤー等)及びその一部(機械の刃の部分等)による「切れ、こすれ」災害が7割強を占めている。 機械による災害のうち、バンドソーによる災害が少なくとも3割強を占めている。バンドソーによる 災害のうち、その8割以上が、冷凍マグロ等の冷凍魚をカットする作業で手が滑り、バンドソーの刃の 部分が手に触れてしまい被災する、というものであった。 食材の加工・調理以外の災害では、機械に付着した魚の骨やヒレ等を除去する作業中の災害が全体 の1割強を占めており、清掃、点検、修理等も含めたいわゆる「非定常作業」における災害が全体の2 割強であった。 2 分析結果を踏まえた留意点 (1) 「転倒」による災害 ア 4S(整理、整頓、清掃、清潔)の徹底により、床面の濡れや通路に置いた荷物等、転倒災害につな がるリスクを極力排除・低減すること。 イ 床面を水洗いした場合は、水濡れはすぐに除去するようにすること。 ウ 履物について、滑りにくいものを使用するとともに、靴底の摩耗状況を確認し、滑り止めの効果 が低下しているものは交換すること。 (2) 「はさまれ、巻き込まれ」による災害 ア 刃物部分のガードを外す等、安全確保の観点から不適切と思われる方法での機械の使用はしない こと。 イ 機械の点検、掃除、修理等、非定常作業を行う場合には、機械を止め、確実に停止したことを確 認してから作業を行うこと。 ウ 機械に魚の骨やヒレ等が付着したような場合に、これを除去する作業(以下「除去等作業」とい う。)は、通常の作業中に発生するケースもあり、特にそういうケースにおいては機械を止めずに 作業を行ってしまいがちであるが、本来、除去等作業は機械を止めてから行うべき作業であるため、 機械を止め、確実に停止したことを確認してから作業を行うこと。 (3) 「切れ、こすれ」による災害 ア 刃物部分のガードを外す等、安全確保の観点から不適切と思われる方法での機械の使用はしない こと。 イ 機械の点検、掃除、修理等、非定常作業を行う場合には、機械を止め、確実に停止したことを確 認してから作業を行うこと。 ウ 除去等作業は、通常の作業中に発生するケースもあり、特にそういうケースにおいては機械を止 めずに作業を行ってしまいがちであるが、本来、除去等作業は機械を止めてから行うべき作業であ るため、機械を止め、確実に停止したことを確認してから作業を行うこと。 エ バンドソー等を使用しての冷凍魚の加工・整形作業については、冷凍魚が滑ったはずみでバンド ソー等の刃部分に手等が触れるリスクがあることに留意し、バンドソーの歯の切断に必要な部分以 外の部分に覆いを設けること。更に、メッシュ手袋等の保護具を着用する等、リスクの低減を図る こと。 (4) その他 現在行っている作業についてのリスクアセスメントを実施すること。特に、機械を使用する作業に ついて、使用する機械等のリスクアセスメントを実施し、その作業におけるリスクを特定し災害防止 対策を講じること。