安全衛生情報センター
特定化学物質の製造・取扱い事業場における労働災害の防止については、従前からその徹底を求めてき たところですが、昨年8月24日、塩酸貯蔵タンクの移設作業中に別の塩酸貯蔵タンク内に転落し労働者2名 が死亡するという悲惨な災害(別添1参照)が発生したことは、遺憾に堪えません。 特定化学物質である塩酸を製造し、又は取り扱う設備であって移動式以外の物は、特定化学設備に該当 しますが、特定化学設備の改造、修理等の作業は、小規模であるもの等一部の場合を除き、当該特定化学 設備を所有等し、その管理権限を有する事業者から他の事業者に発注して行われることが多く、本災害も これに該当するものです。 本災害原因等の詳細については現在調査中ですが、過去にも同様の災害が発生しています(別添2)。塩 酸等を貯蔵する特定化学設備に係る工事等については、非定常作業であり設備・管理面の事前の検討が十 分でないこともあり、また、作業が複数の事業者にわたること等により災害につながるおそれが高いこと から、同種災害の防止に当たっては下記の事項に特に留意の上、関係事業者が協議のもと、労働災害の防 止に万全を期するよう、傘下会員事業者に対し周知いただきますようお願いします。
1 塩酸等金属腐食性の液体の貯蔵に主に使われている強化プラスチック(FRP)製のタンクは耐腐食性に優 れているものの、長期にわたり塩化水素等の腐食性のガスにさらされること及び屋外におかれている場合 には紫外線にさらされること等から、経年劣化によりプラスチックとガラス繊維の剥離等により強度が低 下することについて、当該タンクの管理権限を有する事業者が十分に認識し、タンクのメーカーから適正 な検査方法についての必要な情報を入手するなどして、必要な点検、作業者への教育、請負人への情報提 供等の実施を徹底すること。 2 経年劣化によりFRPの強度が低下することから、元方事業者及び請負人は、労働者等がFRP製タンクの 天板等に乗ることのないよう、高所作業においては、適切な足場(作業床)を設置しなければ作業を行って はならないことを徹底すること。 3 設備の保守点検・改修作業等を発注する者(以下「発注者」という。)は、作業に伴う危険性に係る情報 をあらかじめ元方事業者に提供するとともに、当該危険性を踏まえた適切な作業が行われるよう指導する こと。 4 発注者は、元方事業者が統括管理体制を確立し、各請負人の作業分担を明確化するよう指導すること。 特に、各請負人が行う作業間の連絡調整等必要な措置を確実に実施させ、それぞれの作業で有害物による 危険が生じない措置を元方事業者に講じさせること。 5 塩酸等を貯蔵する特定化学設備を所有等し、その管理権限を有する事業者は、法定の定期自主検査を確 実に実施するとともに、定期に点検を行うことにより、設備の経年劣化を早期に発見するよう努めること。 6 作業中に予定されていない作業の必要が認められた際に、当該作業を行う請負人の判断に任せることな く、元方事業者との間において作業方法の検討を行う等の対応を予め取り決めておくこと。 7 関係事業者は災害発生時等異常な事態が発生した場合の救護体制の確立、訓練を行うこと。特に、二次 災害の防止の観点を含め教育・指導を行うこと。 以上
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