別添1

「警戒区域への一時立入許可基準」(公益立入)の解釈、運用について

平成23年6月16日
原子力災害対策本部


 警戒区域への一時立入許可基準(平成23年4月23日原子力災害対策本部長)においては、立入ができなけ
れば著しく公益を損なうことが見込まれる者について、個別に市町村長が原子力災害現地対策本部長と調
整の上、立入態様に関する条件を付して一時立入を許可することとしている。(同基準2.(1))

 この運用において、一時立入の許可によって20km圏内の事業者が操業することは、一定の距離が確保さ
れていないことから、原子力発電所の状況悪化による爆発等で放射性物質が放出された際の避難が困難で
あるとともに、従業員が短期的に放射線の影響を受ける可能性が高く、原則として認めることは適切では
ない。このため、一時立入による設備の持ち出し等により、法人の要望に対応しているものである。

 他方、従来の公益性の基準に加えて、以下の(1)の基準を全て満たす場合には、
[1]原子力発電所から一律に一定の距離を確保するという警戒区域の設定の趣旨を損なうことなく、従業
  員の安全性を確保することが可能であり(A〜C)
[2]ほかに有効な手段もない(D)ことから、
  安全上の観点と、操業により得られる社会的・経済的便益を比較考慮して、個別に市町村長が原子力
 災害現地対策本部長と調整の上、操業のための一時的な立入を許可することは差し支えないものとする。
 この際、許可に当たっては、立入態様に関する以下の(2)の条件を付すこととする。

(1) 基準
 A) 距離
   当該事業所等の敷地の一部が、東京電力(株)福島第一原子力発電所から半径20kmの境界線より外側
  であること。
 B) 屋内退避の措置
   専ら屋内における作業を実施する事業者であり、操業しても屋内退避状況が継続していると認めら
  れること。
 C) 緊急時連絡の体制
   作業中であっても、緊急時の連絡をすぐに受け、敷地内にいる者に周知する体制が組織的に整備さ
  れていること。
 D) 搬出による制限
   設備の搬出が実質的に不可能であり、警戒区域内でしか操業ができないこと。

(2) 条件
 (ア)避難計画
    原子力発電所の状況が悪化した際の避難計画を有し、その準備を行うこと。(市町村及び原子力
   災害現地対策本部に提出し、承認をうけること。)
 (イ)一時的な立入の期間
    一時的な立入の期聞は最長3ヶ月程度とし、必要に応じて避難計画等を見直すこと。その後、再
   度更新することが可能。
 (ウ)敷地内の空間線量率の測定
    敷地内の空間線量率を測定すること。
 ・・1年聞の積算線量が20ミリシーベルトに達するおそれがない場合については、屋外の空間線量率が
   3.8μ Sv/hを下回っていること及び屋内の空間線量率が3.8μ Sv/hを十分に下回っていることを確
   認し、「警戒区域への一時立入許可基準」の6(立ち入る際の装備)及び7(スクリーニング)を求めな
   いこととする。
 ・・1年間の積算線量が20ミリシーベルトに達するおそれがある場合については、「計画的避難区域に
   おいて事業所が例外的に事業を継続する場合に市町村が満たすことが必要な事項」に準ずることと
   する。
 (エ)従業員が受ける線量の管理
    事業者は、複数の従業員を代表する従業員又は全員に個人線量計を携帯させ、事業所において従
   業員が受けた放射線量を計測し、記録することとする。
 (オ)定期的な健康診断
    事業者は、従業員に定期的に健康診断を受けさせることとする。