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別添1


        ニッケル化合物に係る特殊健康診断の実施のためのガイドライン


1 趣旨
  このガイドラインは、ニッケル化合物(ニッケルカルボニルを除き、粉状のものに限る。)(これを
 その重量の1パーセントを超えて含有する製剤その他のものを含む。以下「ニッケル化合物等」という。)
 を製造し、又は取り扱う業務に常時従事する労働者に対する特殊健康診断を実施する際に事業者及び医
 師等が参考とすべき事項について定めたものである。

2 一次健康診断
(1)作業条件の簡易な調査について
   一次健康診断における「作業条件の簡易な調査」は、ニッケル化合物等を取り扱う労働者の当該物
  質へのばく露状況を適切に把握し、健康診断結果の解釈、二次健康診断の実施の必要の有無の判断及
   び健康診断結果に基づく措置を行う際の判断に資することを目的としたものであり、概ね以下の情報
   を収集すること。
   ア 当該労働者が主に従事する単位作業場所における作業環境測定結果
   イ 作業におけるニッケル化合物等の平均的な使用頻度及び前回の健康診断以降の作業工程や取扱
       量等の変更
   ウ 局所排気装置等の有無及び稼動状況
   エ 保護具の使用状況
   オ 事故や修理等の際における大量ばく露
   カ その他
   アについては、原則として事業者から健康診断実施時点までに健康診断を実施する医師に対して提
  供されること。また、イ〜カについては労働者本人から聴取することとし、健康診断実施時点までに
  問診票(別紙)等の方法で収集する、又は健康診断実施時に直接聴取するなどの方法で実施されること。
   なお、問診票を用いた場合には、健康診断個人票とともに保存することが望ましい。
(2)一次健康診断結果の判断について
  ア 「作業条件の簡易な調査」について
    作業条件の簡易な調査の結果、以下の(ア)〜(カ)のような状況が認められる場合は、当該労働者
   の過剰なばく露が疑われるため、その内容を総合的に判断すること。
  (ア) ニッケル化合物等に関して、当該労働者が主に従事する単位作業場所における作業環境測定結
    果が管理区分2又は3である。
  (イ) 前回の健康診断以降に、作業工程や取扱量の大幅な変化があり、そのことに対する適切な対応
    がされていない。
  (ウ) 局所排気装置等が設置されていない、又は適切に稼動されていない。
  (エ) 保護具が適切に使用されていない。
  (オ) 事故や修理等の際に大量のばく露があった。
  (カ) その他、過剰なばく露のおそれに関する当該労働者の申し出がある。
  イ 「ニッケル化合物による皮膚、気道等に係る他覚症状又は自覚症状の既往歴の有無の検査」、
    「皮膚、気道等に係る他覚症状又は自覚症状の有無の検査」及び「皮膚炎等の皮膚所見の有無の検
    査」について
    これらの項目は、ニッケル化合物等による皮膚及び気道に対する刺激又は感作による症状の有無
  を問題としているが、これらの症状はニッケル化合物等へのばく露に起因しない場合も多いことに留
  意する必要がある。従って、ニッケル化合物等へのばく露と、これらの症状の出現に相当程度の関連
  が疑われた場合について、有所見と判断すること。

3 二次健康診断
(1)二次健康診断の必要性の判断について
   二次健康診断については、一次健康診断の結果、医師が必要と認めるものについて実施するもので
  あるが、その必要性の判断に当たっては以下を参考にすること。なお、二次健康診断の実施を検討す
   る際には、過去の健康診断結果の推移等を充分に考慮に入れることが望ましい。
  ア 「作業条件の簡易な調査」で過剰なばく露が疑われた場合
    「作業条件の簡易な調査」において過剰なばく露が疑われ、かつその他の検査項目において所見
   が認められた場合は、二次健康診断の実施を積極的に検討すること。また、「作業条件の簡易な調
   査」において過剰なばく露が疑われるが、その他の検査項目において所見が認められない場合には、
   二次健康診断において詳細な「作業条件の調査」を実施し、その結果を踏まえてその他の二次健康
   診断項目(臨床検査項目等)の実施の必要性について、積極的に検討すること。
  イ 「作業条件の簡易な調査」で過剰なばく露が疑われなかった場合
    「作業条件の簡易な調査」においては過剰なばく露が疑われないが、その他の検査項目において
   所見が認められた場合は、検査結果に影響する他の要因を考慮のうえ、必要に応じて二次健康診断
   項目の実施について検討を行うこと。
    また、「作業条件の簡易な調査」において過剰なばく露が疑われず、かつその他の検査項目にお
   いて所見が認められない場合には、検査の実施の精度等を確認のうえ、一次健康診断のみの実施で
   差し支えない。なお、その際には、「作業条件の簡易な調査」がばく露の状況のすべてを反映して
   いるわけではないことに充分に留意すること。
(2)「作業条件の調査」について
   二次健康診断における詳細な「作業条件の調査」の実施に当たっては、作業者、管理監督者及び衛
  生管理者等への詳細な聴取、又は作業場を直接確認する等の方法により、以下に挙げる情報のすべて
   又は一部について、収集すること。
  ア 作業環境測定実施時の作業状況
  イ ニッケル化合物等の具体的な使用量
  ウ 作業環境の状況に関する項目
  エ 作業の状況に関する項目
  オ 個人ばく露の状況に関する項目
  (ア) 個人ばく露濃度測定
  (イ) 生物学的モニタリング(「医師が必要と認める場合」に実施する項目のうち、尿中のニッケル
 の量の測定)
  カ 作業以外の要因に関する項目
(3)二次健康診断における「医師が必要と認める場合」に実施する項目に関する考え方について
  ア 基本的な考え方について
    「作業条件の調査」の結果を踏まえ、以下の(ア)、(イ)のように総合的に判断された場合に実施
   すること。なお、その際には、すべての項目を行う必要はなく、医師の判断により必要な項目につ
   いて実施を検討すること。
  (ア) 過剰なばく露の可能性が高いと判断された場合
     「過剰なばく露の可能性が高い」とされる定量的な目安としては、個人ばく露濃度の測定の結
    果が管理濃度を超える場合、生物学的モニタリングの結果が生物学的許容値を超えている場合な
    どがある。ただし、個人ばく露濃度の測定の結果が管理濃度の1/2を超える場合又は生物学的モニ
    タリングの結果が生物学的許容値に近い数値を示す場合にも、過剰なばく露が疑われることがあ
    るため、留意すること。なお、ニッケル化合物等については現時点で生物学的許容値が設定され
    ていないが、生物学的モニタリングは結果の経時的変化の観察又は集団における個人のばく露状
    況の観察等に有効な活用方法であること。また、今後、生物学的許容値が提案された場合には、
    その値を用いることが望ましい。
  (イ) 一次健康診断における検査項目において所見が認められ、その所見がニッケル化合物等へのば
    く露との関連があると判断された場合
  イ 尿中のニッケルの量の測定について
    検査試料の採取にあたっては、労働者がニッケル化合物等にばく露される作業の終了時に行うこ
   とに留意すること。なお、業務以外の要因により尿中のニッケルの量の変動が見られることもある
   ため、結果の解釈にはそのことに留意すること。
  ウ 肺がんを考慮した検査項目について
    ニッケル化合物等に長期間ばく露された労働者については、胸部エックス線直接撮影若しくは特
   殊なエックス線撮影による検査、喀痰細胞診などの肺がんを考慮した検査項目の実施を検討すること。
   なお、その際には喫煙歴等肺がんに関連のあるその他の要因について併せて聴取することが望ましい。

4 健康診断結果に基づく事後措置について
(1)事後措置の内容
   健康診断結果に基づく医師等からの意見の聴取、就業上の措置の決定、健康診断結果の通知、保健
  指導の実施等については、「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」(平成8年健
  康診断結果措置指針公示第1号。以下「指針」という。)の内容に従い実施すること。
(2)「作業条件の簡易な調査」又は「作業条件の調査」の結果に基づく措置
   「作業条件の簡易な調査」又は「作業条件の調査」において過剰なばく露が疑われた場合には、特
  に、指針における2の(3)のハの「(ロ)作業環境管理及び作業管理についての意見」の項に準じて、
  ばく露を低減化するための作業環境管理及び作業管理に関する医師等からの意見を聴取すること。
(3)労働衛生教育の追加実施
   健康診断において、過剰なばく露が疑われた場合又はばく露による健康影響に関する所見が認めら
  れた場合には、当該労働者及び当該業務に従事するその他の労働者等に対して、事後措置の一環として
  必要な労働衛生教育を追加して実施することが望ましい。