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別紙(平成3年1月21日 基発第39号により廃止)

安全衛生教育推進要綱

T 基本的態度
  労働災害を防止するための基本的対策が、機械設備の本質安全化、危険有害環境の改善等物的な要因
 の排除にあることは論をまたないところであるが、物的な面を完全に安全化するには一定の制約もあり、
 また、作業者の不安全な行動、有害要因の健康障害への認識不足等が、労働災害に結びつくことも少な
 くないことから人的な要因の排除を目的とした安全衛生教育の実施も重要な対策である。
  このため、労働安全衛生法においては、新規雇入時、作業内容変更時の安全衛生教育、危険有害業務
 及び職長等に対する安全衛生教育の実施を義務づけている。また、国は、企業における自主的な安全衛
 生活動を促進し、労働災害防止の実効をあげるため、経営首脳者に対する啓発、各級管理者に対する安
 全衛生教育をはじめとして、免許所有者等特殊技能者等に対する安全衛生教育の推進を図つてきたとこ
 ろである。
  一方、近年においては生産技術の進展、産業構造の変化、労働者の高年齢化等に伴う新しい型の労働
 災害、新しい分野での労働災害が発生してきており、これらへの対応が強く要請されている。
  そのためには、計画的・継続的な各種の安全衛生教育の充実強化が必要であり、国は、安全衛生教育
 について、その体系化を図り、国、関係団体、事業者等が一体となつた効果的、効率的な推進を図つて
 いくものとする。
U 安全衛生教育の体系
 一 安全衛生教育の区分
   安全衛生教育は、法定のものはもちろんのこと、労働災害防止に必要なものを継続的に行うことが
  重要である。そのため、労働者の職業生活の全般を通じ、次のような安全衛生教育を行うものとする
  (図1参照)。
  (一) 就業前における安全衛生教育
   ① 学校教育における安全衛生教育
     学校教育においては、特に実業高校等を中心に職業生活において必要な安全衛生に係る基本的
    な教育を行うとともに、危険有害業務に係る教育の推進を行うものとする。このため、国は、教
    育委員会等との連携を図るとともに、教育に必要な教材、教育方法等について指導援助を行うも
    のとする。
   ② 職業訓練における安全衛生教育
     職業訓練においては、安全衛生に係る基本的な教育を行うとともに、危険有害業務に係る教育
    の内容の充実を図るものとする。
   ③ 出稼ぎ労働者に対する安全衛生教育
     出稼ぎ労働者に対しては、送出地において関係機関との連携のもとに、就業先において必要な
    安全衛生教育の実施促進を図るものとする。このため国は、教育に必要な教材、教育の実施等に
    ついて指導援助を行うものとする。
  (二) 就業時における安全衛生教育
   ① 雇入れ時等の安全衛生教育
     事業者の行う労働者の「雇入れ時」及び「作業内容変更時」の安全衛生教育については、その
    徹底及び内容の充実を図るものとする。この場合、雇入れ時等教育の実施体制が十分でない中小
    企業等における教育の徹底を図るため、構外企業系列事業場及び構内下請事業場等については、
    親企業又は元方事業場がこれら事業場の労働者を含めて実施することを指導勧奨するとともに、
    工業団地、事業協同組合等の集団においては、当該集団が共同で実施することを促進するものと
    する。このため、国は、特に、これらの集団における教育を担当する者に必要な知識を付与する
    ものとする。
   ② 特別教育等
     危険有害な業務に従事する者に対する法定の「特別教育」については、その徹底及び教育内容
    の充実を図るとともに、法定以外の危険有害な業務についても「特別教育」に準じた教育を促進
    するものとする。特に、事業者に代わり安全衛生団体(労働災害防止団体、労働災害防止を目的
    とするその他の団体)等が行う教育内容を充実するため、教育を担当する者の資質の向上を図る
    ものとし、このため、国は、その養成教育等を行うものとする。なお、事業者が行う「特別教育」
    についても当該養成教育を修了した者の活用を勧奨するものとする。
     また、技術の進展に伴う作業態様の変化に対応するため、特に変化の著しい業務に従事する者
    について、一定期間ごとに必要な実務向上のための安全衛生教育(以下「実務向上教育」という。)
    を実施するものとし、国は、実務向上教育を担当する者に必要な知識等を付与するものとする。
   ③ 特殊技能者等(作業主任者を除く。)に対する教育
     就業制限に係る業務等に従事する特殊技能者等(作業主任者を除く。)の養成については、特に
    指定教習機関等における講習の内容の充実を図るものとする。
     なお、指定教習機関等においては、特に講師の資質の向上に努めるものとする。
     また、特殊技能者等について、技術の変化等に伴う作業態様の変化に対応するため、特に変化
    の著しい業務に従事する者等について、一定期間ごとに必要な技能向上のための安全衛生教育
    (「技能向上教育」)を実施するものとし、国は、当該教育を担当する者に必要な知識等を付与す
    るものとする。
  (三) 高年齢労働者に対する安全衛生教育
    高年齢労働者については、労働災害の発生率が高いことから、その防止対策の推進が急がれてい
   るところであるが、安全衛生教育についても事業者に対し、あるゆる機会をとらえ啓発を行うとと
   もに、配置転換等に伴い新たな職務に従事することとなつた者について、特に高年齢労働者に着目
   した「作業内容変更時教育」等の推進を図るものとする。
  (四) 経営首脳者、管理監督者等に対する安全衛生教育
   ① 経営首脳者に対する啓発
     経営首脳者に対しては、安全衛生についての理解を深めるとともに、必要な知識を付与するた
    め「経営首脳者安全衛生セミナー」の開催等により啓発を行うものとする。
   ② 安全・衛生管理特別指導事業場の経営首脳者等に対する安全衛生教育
     安全・衛生管理特別指導事業場等の経営首脳者等に対して、労働災害防止の実効をあげるため、
    安全衛生に関する必要な知識を付与するための教育を実施するものとする。
   ③ 総括安全衛生管理者等に対する安全衛生教育
     総括安全衛生管理者、総括安全衛生責任者等安全、衛生管理のトップに対し、「安全衛生セミ
    ナー」の開催等により職務遂行に必要な教育を実施するものとする。
   ④ 安全・衛生管理者等に対する安全衛生教育
     安全管理者については、安全に関する技術的事項を直接管理する立場にあることから、選任段
    階において、労働災害防止の実務に必要な知識を付与するための教育を実施するものとし、国は、
    受講を勧奨するものとする。また、安全管理者及び衛生管理者に対し、技術の進展等に対応した
    安全・衛生管理活動を行わせるために必要な実務向上教育を一定期間ごとに実施するものとする。
     安全推進員、労働衛生管理員についても一定期間ごとに実務向上教育を実施するものとする。
   ⑤ 作業主任者等に対する安全衛生教育
     作業主任者の養成については、指定教習機関における講習内容の充実を図るものとし、特に講
    師の資質の向上に努めるものとする。また、作業主任者に対し、技術の変化等に伴う作業態様の
    変化に対応するため、特に変化の著しい作業主任者について一定期間ごとに必要な実務向上教育
    を実施するものとし、国は、当該教育を担当する者に必要な知識等を付与するものとする。
     作業指揮者等に対してもその職務遂行に必要な知識等を付与するための教育を実施するものと
    する。
   ⑥ 職長等に対する安全衛生教育
     職長等教育については、その適正な実施を図るものとし、当該教育を担当するトレーナーにつ
    いては、一定規模以上の事業場ごとに確保するよう勧奨するものとする。また、法定以外の業種
    においても労働者を直接指揮監督する者に対し、「職長等教育」に準じた教育を実施するものと
    する。職長等教育を担当する者に必要な知識能力を付与するための「R・S・T講座」については、
    その内容の充実を図るとともに、技術の進展等に対応した安全衛生に関する知識を付与するため、
    その修了者に対し、一定期間ごとに実務向上教育を実施するものとする。
     なお、中小規模事業場であつて、自ら職長等教育の実施が困難な事業場については、「R・S・
    T講座」を修了したトレーナーを有する安全衛生団体が実施援助するものとする。
   ⑦ 計画参画者等に対する安全衛生教育
     建設業に係る「計画参画者」については、その教育内容の充実を図るものとし、法定以外の業
    種等であつて事前評価を担当する者については、これに準じた教育を実施するものとする。
   ⑧ 救護技術管理者に対する安全衛生教育
     建設業等の仕事で、爆発火災等が生じたことに伴い作業者の救護に関する措置がとられる場合
    における技術的事項を管理する者に対する教育については、その養成を促進するとともに、教育
    内容の充実を図るものとする。
   ⑨ 生産技術管理者等に対する安全衛生教育
     化学工業、建設業等特に労働災害の防止のうえで必要ある業種における生産技術管理者、現場
    技術者等については、安全衛生に関し、必要な知識等を付与するための教育を実施するものとす
    る。
   ⑩ 設計技術者等に対する安全衛生教育
     設計技術者等については、設計の段階で安全衛生を確保することが重要であることから、必要
    な安全衛生に関する教育を実施するものとする。
     また、設計に基づき現場において工作を担当する者についても必要な安全衛生に関する教育を
    実施するものとする。
   ⑪ 定期自主検査者等に対する安全衛生教育
     機械設備、局所排気装置等の定期自主検査を担当する者については、適正な検査を実施するた
    めに必要な安全衛生に関する教育を実施するものとし、国は、当該教育を担当する者に、必要な
    知識等を付与するものとする。特に、特定自主検査を担当する者の教育内容の充実を図るととも
    に、機械等の大型化等技術の進展に対応した安全衛生に関する知識等を付与するため、一定期間
    ごとに実務向上教育を実施するものとする。
     また、機械設備等の整備等を担当する者についても必要な安全衛生に関する教育を実施するも
    のとする。
   ⑫ 作業環境測定士等に対する安全衛生教育
     作業環境測定士等については、技術の進歩等に対応した測定技術、環境管理技術等に関する実
    務向上教育を実施するものとする。
  (五) 安全衛生に関する専門家の資質の向上
    労働安全・衛生コンサルタント、労働災害防止団体に所属する安全・衛生管理士等については、
   技術の進展等に対応した適切な指導が行われるよう、その資質の向上を図るものとする。
  (六) 産業医及び産業歯科医に対する研修
    産業医及び産業歯科医については、専門的知識の向上を図るための研修を関係団体と協力して行
   うものとする。
 二 実施体制
   安全衛生教育を効率的に推進するため、国、安全衛生団体、企業等は相互の連携を密にし、それぞ
  れの分担に応じた適切な教育を実施するものとする。
   また、安全衛生教育の推進に当たつては、労働安全コンサルタント・労働衛生コンサルタント、安
  全・衛生管理士等専門家の活用を図るものとする。
   なお、国は、必要に応じ安全衛生教育のカリキュラム等を策定するものとする。
   実施主体別の教育の区分は図2に示すとおりである。
  (一) 国が行う安全衛生教育
    国は、安全衛生教育推進要綱に定める教育を安全衛生団体、企業等に対して積極的に取り組むよ
   う指導援助するとともに、自らが行う必要があると認められるもの又は、安全衛生団体、企業では
   実効が期し難いと考えられるものについて教育を実施するものとする。
    なお、自らが行うものの一部については、中央労働災害防止協会又は建設業労働災害防止協会の
   「安全衛生教育センター」に委託するものとする。
  (二) 安全衛生団体等が行う安全衛生教育
    業種別、地域別等により行うことが効率的であり、比較的短期間で行える安全衛生教育について
   は、安全衛生団体等が実施するものとする。
    国は、安全衛生団体等が行う教育が適正に行われるようカリキュラム、教育要領、教育資料、講
   師等に関し、必要な指導援助を行うとともに、必要に応じ教育の実施状況の確認を行うものとする。
  (三) 企業が行う安全衛生教育
    企業は、労働安全衛生法第五九条及び第六〇条に規定する安全衛生教育を適正に実施するととも
   に、中間管理者、安全衛生担当者等に対する安全衛生教育を実施するものとする。
    なお、小規模事業場等であつて、自ら適正な安全衛生教育を行うことが困難なところは、その実
   施について安全衛生団体等の援助を受けるものとする。また、国は、企業が行う教育について、資
   料の提供等指導援助に努めるものとする。
V 計画の策定及び推進
 一 実施計画の策定
   国は、本推進要綱に基づく安全衛生教育の計画的な推進を図るため、概ね五か年程度の実施計画を
  策定するものとする。
   また、実施計画の策定に当たつては、関係行政機関、関係団体等との連携を図るものとする。
   また、各局においては、実施計画が円滑に推進されるよう実施主体との連携のもとに、あらかじめ
  重点を置くべき教育の種類、対象者数等について管内状況を把握するとともに、必要な細部事項の策
  定を行うものとする。
   企業に対しては、自らが行う安全衛生教育の実施計画を策定するよう指導するものとする。
 二 実施計画の周知等
   国は、本推進要綱及び実施計画について、その周知徹底を図るとともに、国または安全衛生団体が
  行う教育への受講勧奨を行うものとする。