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改正履歴
労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第28条第1項の規定に基づき、移動式足場の安全基準に関する
技術上の指針を次のとおり公表する。
移動式足場の安全基準に関する技術上の指針
1 総則
1−1 趣旨
この指針は、主として工場、建設工事現場等で使用する移動式足場(動力駆動により移動させるも
のを除く。)の転倒、移動式足場からの労働者の墜落等による災害を防止するため、その設計、製造
及び使用に関する留意事項について規定したものである。
1−2 定義
この指針において、移動式足場とは、作業床、これを支持するわく組構造部及び脚輪並びにはしご
等の昇降設備及び手すり等の防護設備より構成される設備をいう。
2 材料等
2−1 材料
2−1−1 移動式足場の主要構造部分に使用する鋼材及びアルミニウム合金材については、次の表
の左欄に掲げる区分に応じ、それぞれ同表の右欄に定める材料又はこれと同等以上の機械的性質を
有するものとすること。(表)
2−1−2 鋼材及びアルミニウム合金材は、曲がり、へこみ、割れ、二枚割れ等の欠陥のないもの
を用いること。
2−1−3 脚輪のタイヤは、JIS B 8922(ハンドトラック用車輪)の4.2に定める規格に適合す
るタイヤとすること。
2−1−4 作業床、階段の踏板等に使用する木材は、強度上の著しい欠陥となる割れ、虫食い、節、
繊維の傾斜等がないこと。
2−2 強度計算
2−2−1 設計に用いる積載荷重は、作業床の床面積に応じて、次の式により計算を行って得た値
とすること。
A≧2の場合 W=250
A<2の場合 W=50+100A
これらの式において、A及びWは、それぞれ次の値を表すものとする。
A 作業床の床面積(単位 m2)
W 積載荷重 (単位 kg)
2−2−2 移動式足場の主要構造部分は、それぞれ次に掲げる荷重に対し、必要な強度を有するこ
と。
(1) わく組構造部(交さ筋かい、水平交さ筋かい及び連けい材を除く。)にあっては、自重と積載
荷重とを合算した荷重(この場合の積載荷重の作用位置は、作業床の中心位置又は2−3−1(2)
の位置のうち、不利なものをとること。)
(2) 作業床の床材にあっては、200kg/m2の等分布荷重
(3) 交さ筋かい、水平交さ筋かい、連けい材及びこれらの取付け部にあっては、100kgの軸方向荷
重
(4) 脚輪にあっては、200kgの主軸荷重
2−2−3 2−2−2の強度の計算を行う場合における各材料の許容応力の値は、次の各材料の種
類に応じ、それぞれ次の表に定める値又は次の式により計算を行って得た値以下とすること。
(1) 鋼材
イ 許容引張応力、許容圧縮応力、許容曲げ応力、許容せん断応力及び許容支え圧応力の値(表)
ロ 許容座屈応力の値
これらの式において、σc、σ、l及びiは、それぞれ次の値を表すものとする。
σc許容座屈応力(単位 kg/cm2)
σ 許容圧縮応力(単位 kg/cm2)
l 有効座屈長 (単位 cm)
i 最小断面2次半径(単位 cm)
(2) アルミニウム合金材
イ 許容引張応力、許容圧縮応力、許容曲げ応力、許容せん断応力及び許容支え応力の値(表)
許容座屈応力の値
これらの式において、σc、σ、l及びiは、それぞれ次の値を表すものとする。
σc 許容座屈応力 (単位 kg/cm2)
σ 許容圧縮応力 (単位 kg/cm2)
l 有効座屈長 (単位 cm)
i 最小断面2次半径(単位 cm)
(3) 木材(表)
2−2−4 2−2−2の強度について荷重試験を行う場合には、当該試験はできる限り通常の使用
状態に近い状態で行うものとし、かつ、安全率を2.5以上とすること。
2−3 安定性
2−3−1 移動式足場は、次の(1)及び(2)の荷重が同時に作用する状態において、6度の転倒余裕
角度を有すること。この場合において、控わくを有する構造の移動式足場にあっては、次の(1)及
び(2)の荷重の外、次の(3)の反力を考慮することができること。
(1) 移動式足場の自重
(2) 作業床の中心から作業床の辺長の4分の1の値だけ偏心した位置に作用する積載荷重
(3) 控わくのジャッキの底部に作用し、かつ、その大きさが自重と積載荷重の和の2分の1以下で
ある反力。ただし、控わくの高さが控わくの幅の3倍以上であり、かつ、控わくが回転しないよ
うに建わくに取り付けられているものにあっては、当該反力は、その大きさを自重と積載荷重の
和以下とすることができること。
2−3−2 わく組構造部の外側空間を昇降路とする構造の移動式足場にあっては、当該移動式足場
は、次の(1)及び(2)の荷重が同時に作用する状態において、6度の転倒余裕角度を有すること。こ
の場合において、控わくを有する構造の移動式足場にあっては、次の(1)及び(2)の荷重の外、次の
(3)の反力を考慮することができること。
(1) 移動式足場の自重
(2) わく組構造部の外側50cmで、かつ、昇降路の上端の位置に作用する70kgの垂直荷重
(3) 控わくのジャッキの底部に作用し、かつ、その大きさが自重と(2)の垂直荷重との和の2分の
1以下である反力。ただし、控わくの高さが控わくの幅の3倍以上であり、かつ、控わくが回転
しないように建わくに取り付けられているものにあっては、当該反力は、その大きさを自重と(2)
の垂直荷重の和以下とすることができること。
3 各部構造
3−1 高さ及び脚輪間隔
3−1−1 脚輪の下端から作業床までの高さと、移動式足場の外かくを形成する脚輪の主軸間隔と
は、次の式によること。ただし、移動式足場に壁つなぎ又は控を設けた場合は、この限りでないこ
と。
H≦7.7L−5
この式においてH及びLは、それぞれ次の値を表すものとする。
H 脚輪の下端から作業床までの高さ(単位 m)
L 脚輪の主軸間隔(単位 m)
3−1−2 控わくを有する構造の移動式足場にあっては、3−1−1の式におけるLの値を、次の
式から得られる値とすることができること。
(1) 控わくの高さが控わくの幅の3倍以上であり、かつ、控わくが回転しないように建わくに取り
付けられている場合
L=A+B1+B2
この式において、L、A、B1及びB2は、それぞれ次の図に示すように測った長さとすること。(図)
(2) (1)の場合以外の場合
この式において、L、A、B1及びB2は、それぞれ次の図に示すように測った長さとするこ
と。(図)
3−2 作業床
3−2−1 作業床は、次の各号のいずれかとすること。
(1) 床材とけた材が一体となったもの(以下「床付き布わく」という。)
(2) 床材として足場板を用いるもの。
3−2−2 床付き布わくは、圧延加工、プレス加工、溶接組立て(これと同等以上の強度を有する
鋲(びよう)接組立てを含む。以下同じ。)等により床材とけた材を一体化した構造とし、かつ、そ
の四隅の端に浮上り防止の機能を有するつかみ金具を設けること。
3−2−3 3−2−1(2)の床材は、透き間が3cm以下となるよう全面に敷き並べ、かつ、支持物
に確実に固定すること。
3−3 わく組構造部
3−3−1 わく組構造部は、次の(1)から(5)までの構成要素により構成すること。この場合におい
て、必要と認められるときは、(6)又は(7)を構成要素に含めること。
(1) 建わく
(2) 交さ筋かい又はこれに代わる連けい材
(3) 建わくジョイント
(4) 水平交さ筋かい又はこれに代わる連けい材
(5) 布わく又は床付き布わく
(6) 拡幅わく
(7) 控わく
3−3−2 建わくは、脚柱、横架材及び補剛材を溶接組立てしたものとし、かつ、交さ筋かいを用
いるものにあっては、脚柱に直径13mm以上で抜止め機能を有する交さ筋かいピンを設けること。
3−3−3 交さ筋かい及び水平交さ筋かいは、筋かい材を中央部でヒンジ結合したものとし、かつ、
筋かい材の両端部に直径15mm以下のピン穴を設けること。
3−3−4 連けい材には、両端に十分なは握機能を有するつかみ金具を設けること。
3−3−5 建わくジョイントは、抜止めの機能を有する差込み式のものとし、かつ、差込み部の長
さは95mm以上とすること。
3−3−6 わく組構造部の下端部には、水平交さ筋かい又は連けい材を設けること。
3−3−7 布わくは、布地材に2以上の腕木材を溶接組立てしたものとし、かつ、布地材の両端に
浮上り防止の機能を有するつかみ金具を設けること。
3−3−8 脚輪の下端から作業床までの高さが、移動式足場の外かくを形成する脚輪の主軸間隔の
3倍を超える移動式足場のわく組構造部は、脚輪と作業床との中間の位置に布わく設けること。
3−3−9 拡幅わくは、溶接組立てしたものとし、かつ、これに脚柱及び脚輪の主軸を差し込むこ
とができる構造とすること。
3−3−10 控わくは、次によること。
(1) 溶接組立てにより三角形を形成すること。
(2) 高さは、当該控わくの幅以上とすること。
(3) 斜材と水平材の交さ部及び垂直材と水平材との交さ部に十分なは握機能を有するつかみ金具を
設けること。
(4) 斜材と水平材との交さ部にジャッキを設けること。
3−4 脚輪
3−4−1 脚輪は、脚柱等へ差し込むための主軸、フォーク、車軸、車輪等により構成し、かつ、
主軸を軸として自由に回転することができること。
3−4−2 主軸は、脚柱等に対して、かん合性の良好な直径を有するものとし、かつ、脚柱等への
取付け部は、容易に離脱しない機能を有すること。
3−4−3 車輪の直径は、125mm以上とすること。
3−4−4 不意の移動を防止するためのブレーキを設けること。
3−4−5 脚輪のブレーキは、250kg・cmの回転力に対し、車輪の回転を防止できること。
3−5 昇降設備
移動式足場には、次の各号のいずれかの昇降設備を設けること。ただし、わく組構造部が次の(1)
のはしごの要件を満たす構造の建わくで構成されている場合は、この限りでないこと。
(1) 踏さんの長さが30cm以上であり、かつ、踏さんが40cm以下の等間隔に設けられたはしご
(2) こう配が50度以下であり、かつ、幅が40cm以上である階段
3−6 防護設備
作業床の周囲には、高さ90cm以上で中さん付きの丈夫な手すり及び高さ10cm以上の幅木を設けるこ
と。ただし、手すりと作業床との間に丈夫な金網等を設けた場合は、中さん及び幅木を設けないこと
ができること。
3−7 加工等
3−7−1 材料の加工は、そり、ねじれ等により強度を低下させないように行うこと。
3−7−2 鋼材の溶接は原則としてアーク溶接とし、アルミニウム合金材の溶接はアルゴン溶接と
すること。
3−7−3 管と管との溶接及び管と棒との溶接については、全周溶接すること。ただし、接合金物
を用いて溶接するものについては、この限りでないこと。
3−7−4 鋼材には、さびを防ぐ効果のある塗装又はメッキを施すこと。
4 使用
4−1 組立て
4−1−1 建わく等の接続部は、使用中容易に離脱しないように確実に結合すること。
4−1−2 最大積載荷重は、2−2−1の積載荷重以下となるように定め、かつ、その旨を移動式
足場の見やすい箇所に表示すること。
4−1−3 2基以上の移動式足場を連結して使用するときは、鋼管と緊結金具とを用いる方法等に
より、それぞれの移動式足場を、確実に連結すること。
4−2 移動
4−2−1 移動式足場を移動させるときは、路面のおうとつ、障害物等による転倒を防止するため、
あらかじめ、路面の状態を確認すること。
4−2−2 移動式足場の移動は、すべての脚輪のブレーキを解除した後に行うこと。
4−2−3 移動式足場に労働者を乗せて移動してはならないこと。
4−2−4 移動式足場の移動中は、転倒等による危険を生ずるおそれがあるところには、関係労働
者以外の労働者を立ち入らせないこと。
4−2−5 控わくを有する移動式足場を移動させるときは、次の措置を講ずること。
(1) 控わくのすべてのジャッキを繰り上げること。
(2) 3−1−1の本文に適合する移動式足場であっても、転倒のおそれがあるときは、転倒のおそ
れのない高さに組み替えること等により、転倒を防止すること。
(3) 控わくが建設物、設備等に接触するおそれがあるときは、控わくを取り外し、又はたたむこと。
4−2−6 壁つなぎ又は控が設けられていた移動式足場を移動させる場合は、転倒のおそれのない
高さに組み替えること、シートを取り外すこと等により転倒防止の措置を講ずること。
4−3 定置
4−3−1 無理のない姿勢で作業を行うため、移動式足場は、作業箇所に近接したところに定置
(作業箇所において使用できる状態にすることをいう。以下同じ。)させること。
4−3−2 脚輪のブレーキは、移動中を除き、常に作動させておくこと。ブレーキを作動させると
きは、その効き具合を確認すること。
4−3−3 おうとつ又は傾斜が著しい場所で移動式足場を使用するときは、ジャッキ等の使用によ
り作業床の水平を保持すること。
4−3−4 控わくを有する移動式足場を定着したときは、控わくの取付け状態、接地状態等につい
て異常のないことを確認すること。
4−3−5 移動式足場にシートを張ったため、強い風圧を受けるおそれのある場合等には、移動式
足場に壁つなぎ又は控を設けること。
4−3−6 移動式足場を架空電路に近接して定置するときは、架空電路を移設し、架空電路に絶縁
用防護具を装着する等架空電路との接触を防止するための措置を講ずること。
4−4 荷重の積載等
4−4−1 移動式足場には、最大積載荷重を超えた荷重をかけてはならないこと。
4−4−2 移動式足場に材料等を載せる場合は、転倒を防ぐため、偏心しないように配慮すること。
4−4−3 移動式足場の上では、移動はしご、脚立等を使用しないこと。
4−4−4 作業又は昇降のため、手すり、中さん等を取り外したときは、その必要がなくなった後、
直ちに原状にもどすこと。
4−4−5 わく組構造部の外側空間を昇降路とする構造の移動式足場にあっては、転倒を防止する
ため、同一面より同時に2名以上の者が昇降しないこと。