工業用加熱炉の燃焼設備の安全基準に関する技術上の指針 |
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労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第28条第1項の規定に基づき、工業用加熱炉の燃焼設備の安全
基準に関する技術上の指針を次のとおり公表する。
工業用加熱炉の燃焼設備の安全基準に関する技術上の指針
1 総則
1−1 趣旨
この指針は、熱処理、鍛造、焼付け等を行うための工業用の加熱炉(以下「炉」という。)の燃焼
設備に使用する気体燃料又は液体燃料による爆発災害を防止するため、炉の燃焼設備のうち、燃料配
管、バーナ、安全装置等に関する留意事項について規定したものである。
2 燃料配管、バーナ、安全装置等の構造等
2−1 燃料配管等
2−1−1 燃料配管等の構造
(1) 燃料配管及び空気配管並びにこれらの附属品(以下「燃料配管等」という。)は、燃料若しく
は空気の最大供給圧力により破損し、又は燃料若しくは空気が漏えいすることのない構造のもの
とすること。
(2) 燃料配管には、燃料が漏えいした場合にその流出量を最小限にとどめることができるよう、所
定の位置に燃料止め弁を設けること。
(3) 空気が逆流するおそれのある構造の燃料配管には、空気の逆流防止弁を設けること。
(4) 液体燃料を使用する燃焼設備にあっては、燃料配管又はその附属品を接地すること。
2−1−2 燃料配管及びその附属品の設置場所
燃料配管及びその附属品は、これらの表面温度が使用する燃料の発火点を超えるおそれのない箇
所に設置すること。
2−2 バーナ
2−2−1 バーナの構造
(1) 主バーナ及びパイロットバーナ(以下「バーナ」という。)には、それぞれのバーナに適合す
る使用条件(燃料の比重、発熱量、理論空気量、燃焼速度、供給圧等をいう。)を表示した銘板
を取り付けること。
(2) バーナは、炎が正しく安定するよう空燃比を調整することができ、かつ、長時間使用しても空
燃比に変化を生じない構造のものとすること。
(3) パイロットバーナは、主バーナを点火したときにその主バーナの燃焼用空気流等で炎が吹き消
されない構造のものとすること。
2−2−2 バーナの取付け位置等
(1) パイロットバーナは、その燃焼状態が容易に目視確認できるような位置に取り付けること。た
だし、その燃料状態を確認するための燃焼監視装置を設ける場合には、この限りでないこと。
(2) パイロットバーナは、その使用条件の範囲内のすべての場合において、確実に主バーナへの火
移りが行われる位置に取り付けること。
(3) 炉壁に密閉して主バーナが取り付けられている炉にあっては、パイロットバーナ、スパークロ
ッド等の点火装置又は確実に点火できる位置に手動点火バーナ用の点火穴を設けること。
(4) 760℃以下の温度で使用する炉又はひんぱんに点火及び消化を行う炉にあっては、主バーナの
炎が消えても直ちに着火することができるよう、炎の安定したパイロットバーナを設け、かつ、
これを常時燃焼させておくことが望ましいこと。
2−2−3 保炎のための措置
バーナは、当該バーナの使用条件で正しく安定した炎を維持するため、次に定めるところによる
こと。
(1) 保炎能力を有する構造のものとすること。
(2) 前(1)以外のものについては、バーナタイルを設ける等の保炎措置を講ずること。
2−2−4 燃料
燃焼設備には、表示された使用条件に適合しない燃料は使用しないこと。
2−3 安全装置
2−3−1 しゃ断弁
(1) 気体燃料を使用する炉のうち、760℃以下の温度で使用する炉、ひんぱんに点火及び消化を行
う炉又は密閉して使用する炉に用いられる燃料配管には、燃焼用空気の供給が断たれる等の危険
な状態が発生した場合に直ちに燃料の供給をしゃ断することができる燃料安全しゃ断弁(以下
「しゃ断弁」という。)を設け、かつ、これらの炉に用いられる燃料配管及び空気配管には、燃
料の供給圧又は空気の供給圧が所定の圧力範囲を超えて上昇し、又は低下した場合にこれらの圧
力の異常を検出することができる装置を設け、これらとしゃ断弁とをインターロックすること。
液体燃料を使用する炉についても、同様の措置を講ずることが望ましいこと。
(2) しゃ断弁は、次に定めるところによること。
イ しゃ断弁の作動電流、作動空気圧等が断たれた場合に、自動的に燃料の供給をしゃ断する構
造のものとすること。
ロ 手動又はプレパージ後の自動着火信号により、燃料の供給を再開する構造のものとすること。
ハ 最大供給圧力において燃料が漏えいしない信頼性の高いものを用いること。
ニ 気体燃料を使用する炉に用いられる燃料配管に設けられているしゃ断弁にあっては、燃料の
漏えい試験を行うため、当該弁の下流に、下図のように燃料止め弁及びテストコックを設ける
こと。
なお、漏えい試験は、同図に示す方法により行うこと。(図)
備考 しゃ断弁及び燃料止め弁を閉じ、テストコックにゴム管を連結して、その先端をビーカー等の
容器に入れた水に約10mm浸し、テストコックを開いたときにゴム管先端よりが出るか否かを試験
すること。
2−3−2 燃焼監視装置
(1) 760℃以下の温度で使用する炉、ひんぱんに点火及び消化を行う炉又は密閉して使用する炉に
あっては、燃焼監視装置を設け、主バーナの炎が消えた場合に4秒以内に燃料の供給をしゃ断す
ることができるよう、これとしゃ断弁とをインターロックすることが望ましいこと。
(2) 前(1)の燃焼監視装置は、次に定めるところによること。
イ 炉内ふく射光等により誤動作するおそれのない方式のものとすること。
ロ バーナ点火時のスパーク等により誤動作するおそれのない位置に取り付けること。
3 燃料配管、バーナ、安全装置等の取扱い
3−1 使用開始時の点検
燃焼設備を始めて使用しようとするとき、又は1月を超える期間引き続き使用しない燃焼設備を再
び使用しようとするときは、当該燃焼設備の燃料配管等について最大供給圧力による耐圧試験を行い、
破損又は漏えいのないことを確認すること。
3−2 作業基準
バーナの点火作業については、バーナの使用条件に適合した作業基準を定め、これにより作業を行
うこと。
3−3 プレパージ
バーナに点火する場合には、あらかじめ、次に定めるところにより必ずプレパージを行うこと。
(1) 炉の内容積(煙道の容積を含む。)の4倍以上の空気で行うこと。
(2) 空気の流量は、最大燃焼時の空気の流量の50%以上とすることが望ましいこと。
3−4 点火時
(1) 主バーナへの点火は、パイロットバーナ、スパークロッド等の点火装置又は手動点火バーナを用
いて行うこと。
(2) 主バーナへの点火は、燃料止め弁を開いて5秒以内に行うこととし、着火しなかった場合には、
直ちに燃料止め弁を閉じ、再びプレパージを行うこと。
(3) 2本以上の主バーナを使用する場合にあっては、必ず1本ずつ燃料止め弁を開いて点火すること。
(4) 主バーナの着火は、点火のたびごとに燃焼監視装置、着火確認穴等により確認すること。
(5) 主バーナの容量が大きい炉にあっては、低燃焼スタートが望ましいこと。
3−5 安全装置等の機能の保持
安全装置又は流量調整弁、圧力調整弁等の附属品は、これを取り外す等その機能を失わせてはなら
ないこと。
3−6 消火時
(1) 異常な事態によりバーナの火が消えた場合には、直ちに燃料止め弁を閉止すること。
(2) 前(1)の場合には、その原因を調査し、調査結果に基づき適正な措置を講じた後プレパージを
行うこと。
(3) 炉の作業を一時停止し、又は終了する場合には、必ずバーナの所定の燃料止め弁を閉じ、その
閉止状態を確認すること。
4 保守点検
(1) 燃料配管、バーナ、安全装置等についての点検基準を定め、これにより定期に保守点検を行うこ
と。
(2) 前(1)の点検の結果異常を認めたときは、直ちに補修その他必要な措置を講ずること。