安全衛生情報センター
東日本大震災の被災地においては、地震の揺れ及び津波によって多くの建物が損壊、倒壊しており、今 後の復旧工事に当たっては、膨大な量のがれきの撤去が必要になっている。 これらのがれきについては、建築物に用いられた断熱材やスレート板等に石綿が含まれている可能性が あることから、その撤去に当たっては、石綿の含有の可能性を前提として防護措置を講じることが重要で ある。このため、石綿障害防止規則(平成17年厚生労働省令第21号。以下「石綿則」という。)第44条の規 定を踏まえ、被災地においては屋外におけるがれきの撤去であっても、石綿から防護できる有効な呼吸用 保護具を着用させることが適当である。 他方、東日本大震災は広範な地域に甚大な被害を及ぼしていることから、復旧工事における呼吸用保護 具の需要が急速に高まっているが、既に復旧工事を行う事業者が所定の要件を具備した呼吸用保護具につ いて必要な数量を確保できない事態が生じており、労働者の健康を守る観点から呼吸用保護具の確保を速 やかに行う必要がある。 こうした状況を踏まえ、国家検定を取得していない防じんマスクについて、学識経験者及び国家検定機 関の専門家にその性能について意見を求めたところ、下記2に掲げる諸外国の一定の規格に適合している ものは、国家検定合格品と同等以上の粉じん捕集能力があることを確認したところである。 このため、今般、東日本大震災の復旧工事に携わる労働者の健康障害を予防するための当面の措置とし て、国家検定を取得していないものの、下記2に掲げる諸外国の一定の規格に適合している防じんマスク については、国家検定合格品である防じんマスクの供給量が十分に確保されるまでの間、屋外で行われる がれき処理の作業について、石綿則第44条の呼吸用保護具として使用することを地域を限って認めること としたので、下記に留意の上、その取扱いに遺漏なきを期されたい。
1 特例措置の概要 屋外において石綿を含有するがれきを取り扱う場合には、石綿則第44条の規定に基づき有効な呼吸用 保護具を備付えることが義務付けられており、その具体的要件として、平成17年3月18日付け基発第031 8003号において、防じんマスクについては国家検定に合格しているものであることを求めている。 今般、国家検定合格品である防じんマスクの供給不足に対処するため、当面の措置として、地域、作 業を限定した上で、国家検定は取得していないものの、国家検定合格品と同等以上の性能を有すると認 められる諸外国の一定の規格を満たしている防じんマスクについて、石綿則第44条にの呼吸用保護具と して使用することを認めることとし、労働者が呼吸用保護具を着用しないまま復旧工事に従事すること のないようにしようとするものであること。 2 石綿則第44条の呼吸用保護具として取り扱うために防じんマスクが具備すべき要件について 石綿則第44条の呼吸用保護具として認める防じんマスクは、米国立労働安全衛生研究所(NIOSH)の規 格である、N95、N99、N100規格のいずれかに適合しているものであること。 3 上記2に該当する防じんマスクの使用に当たって留意すべき事項について N95、N99、N100規格については、国家検定規格と比較して、吸気抵抗が大きい、締めひもの引っ張り 試験が行われていないといった相違点がある。このため、N95、N99、N100規格の防じんマスクを使用 する場合には、多少息苦しくても作業中に防じんマスクを取り外したり、締めひもを緩めたりすること 等のないよう、適切な着用方法を徹底させること。また、締めひもが緩んだり、切れているものについ ては、直ちに新しいものと交換させるほか、所定の使用時間での交換を徹底させること。 4 上記2に該当する防じんマスクを石綿則第44条の呼吸用保護具として使用することを認める地域につ いて この取扱いは、建物の損壊、倒壊等の被害が甚大である、青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県、 栃木県及び千葉県に限定すること。 なお、この取扱いは、国家検定合格品である防じんマスクの需給状況等を踏まえて適宜見直しを行う ものであること。 5 特別措置の対象となる作業 本特例措置は、石綿則第6条第2項第1号の規定により隔離を行った作業場所において、同条第1項第1号 に掲げる作業等以下のものには適用されないこと。なお、以下の作業に限らず、石綿則13条に定める石 綿等の切断、穿孔、研磨等の作業は石綿粉じんの発生量が多いため、使い捨て式防じんマスク(国家検定 合格品を含む。)より性能の高いものが適していること。 ・ 石綿等が吹き付けられた建築物の解体等の作業(石綿等を除去する作業) ・ 石綿等が使用されている耐火被覆材等が張り付けられた建築物等の解体等の作業(耐火被覆材等を除 去する作業(石綿等の切断、穿孔、研磨等)) 6 留意事項 この取扱いは、あくまでも当国家検定合格品が十分に供給されるまでの間の当面の取扱いであり、 上記2の要件を満たす防じんマスクの使用を積極的に推奨するものではないこと。すなわち国家検定合 格品である防じんマスクが入手できる場合には、当然それを用いて作業を行うべきものであること。