労働基準法の一部を改正する法律について
基発第1212001号
平成20年12月12日
都道府県労働局長 殿
厚生労働省労働基準局長
労働基準法の一部を改正する法律について
労働基準法の一部を改正する法律(平成20年法律第89号)については、平成19年3月13日に第166回国会
に提出され、審議が重ねられてきたところであるが、第170回国会において一部修正の上、本年12月5日に
可決成立し、本日公布されたところである。この法律は、平成22年4月1日から施行される。
少子高齢化が進行し労働力人口が減少する中で、子育て世代の男性を中心に、長時間にわたり労働する
労働者の割合が高い水準で推移していること等に対応し、労働者が健康を保持しながら労働以外の生活の
ための時間を確保して働くことができるよう労働環境を整備することが重要な課題となっている。
今回の労働基準法の改正は、このような課題に対応するため、長時間労働を抑制し、労働者の健康を確
保するとともに仕事と生活の調和がとれた社会を実現する観点から、労働時間に係る制度について見直し
を行うものであり、その主たる内容は下記のとおりである。
この法律の施行のために必要な関係省令等については、今後、労働政策審議会に諮り、その答申を得て、
制定することとしている。貴職におかれては、この法律の円滑な施行に万全を期すため、以上のことを十
分御理解の上、所要の準備に努められたい。
記
1 時間外労働
(1) 法定労働時間を超える労働に係る労使協定(当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合が
あるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表す
る者との書面による協定をいう。以下同じ。)による労働時間の延長を適正なものとするために厚生
労働大臣が定める基準で定めることができる事項として、割増賃金の率に関する事項を追加するもの
としたこと。(第36条第2項関係)
(2) 使用者が、1箇月について60時間を超えて時間外労働をさせた場合においては、その超えた時間の
労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の5割以上の率で計算した割増賃金を支払わなけれ
ばならないものとしたこと。(第37条第1項関係)
(3) 使用者が、労使協定により、(2)の割増賃金を支払うべき労働者に対して、(2)の割増賃金の支払に
代えて、通常の労働時間の賃金が支払われる休暇(年次有給休暇を除く。)を厚生労働省令で定める
ところにより与えることを定めた場合において、当該労働者が当該休暇を取得したときは、当該労働
者の(2)の時間を超えた時間外労働のうち当該取得した休暇に対応するものとして厚生労働省令で定
める時間の労働については、(2)の割増賃金を支払うことを要しないものとしたこと。(第37条第3項
関係)
2 年次有給休暇
使用者は、労使協定により、次に掲げる事項を定めた場合において、(1)の労働者の範囲に属する労働
者が年次有給休暇を時間を単位として請求したときは、年次有給休暇の日数のうち(2)の日数については、
労使協定で定めるところにより時間を単位として年次有給休暇を与えることができるものとしたこと。
(第39条第4項関係)
(1) 時間を単位として年次有給休暇を与えることができることとされる労働者の範囲
(2) 時間を単位として与えることができることとされる年次有給休暇の日数(5日以内に限る。)
(3) その他厚生労働省令で定める事項
3 その他
(1) 中小事業主(その資本金の額又は出資の総額が3億円(小売業又はサービス業を主たる事業とする
事業主については5,000万円、卸売業を主たる事業とする事業主については1億円)以下である事業
主及びその常時使用する労働者の数が300人(小売業を主たる事業とする事業主については50人、卸
売業又はサービス業を主たる事業とする事業主については100人)以下である事業主をいう。)の事
業については、当分の間、1の(2)は、適用しないものとしたこと。(第138条関係)
(2) その他所要の整備を行うものとしたこと。
4 附則
(1) 施行期日
この法律は、平成22年4月1日から施行するものとしたこと。(附則第1条関係)
(2) 経過措置等
ア 政府は、この法律の施行後3年を経過した場合において、1の(2)及び3の(1)の施行の状況、時間外
労働の動向等を勘案し、1の(2)及び3の(1)について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を
講ずるものとしたこと。(附則第3条第1項関係)
イ この法律の施行に関し必要な経過措置を定めるものとしたこと。(附則第2条関係)
ウ 関係法律について所要の改正を行うものとしたこと。(附則第4条から第6条まで関係)