突風によって走行クレーンが逸走することによる災害の防止について
基安発第0216002号
平成16年2月16日
都道府県労働局長 殿
厚生労働省労働基準局
安全衛生部長
突風によって走行クレーンが逸走することによる災害の防止について
クレーンに係る労働災害の防止については、かねてからその徹底を図ってきたが、昨年10月に屋外に設
置された走行クレーンが突風により逸走し、労働者2名が死亡、5名が負傷する災害が発生した。
本災害について所轄の労働局及び労働基準監督署でこれまで調査を行ってきたところ、災害発生事業場
では、突風に対して作業中止は行ったものの、強風によってその直後にクレーンが逸走し、クレーン同士
の衝突やガーダの落下等によって災害が発生したことが判明した。
ついては、今後、春先の強風や台風等によって同種災害の発生が懸念されるところから、別添により関
係団体に対し、標記の要請を行ったところである。
各局においても、管内の関係事業場に対して必要な指導を行い、同種災害の再発防止の徹底を図られた
い。
基安発第0216001号
平成16年2月16日
社団法人日本クレーン協会 会 長 |
|
殿 |
社団法人ボイラ・クレーン安全協会 会 長 |
港湾貨物運送事業労働災害防止協会 会 長 |
社団法人日本鉄鋼連盟 会 長 |
厚生労働省労働基準局
安全衛生部長
突風によって走行クレーンが逸走することによる災害の防止について
クレーンにおける労働災害の防止については、日頃からその徹底を求めてきたところですが、昨年10月
に屋外に設置された走行クレーンが突風により逸走し、労働者2名が死亡、5名が負傷する重大災害が発生
しました。
所轄の労働局及び労働基準監督署でこれまで調査を行ってきたところ、災害発生事業場では、突風に対
して、作業中止の指示は行ったものの、強風によりその直後にクレーンが逸走し、クレーン同士の衝突や
ガーダの落下によって死亡災害が発生したことが判明しました。
ついては、今後、春先の強風や台風等によって同種災害の発生が懸念されるため、貴協会におかれまし
ては、屋外に設置される走行クレーンについて、下記の事項に留意して同種災害の再発防止に万全を期す
よう傘下会員に対し、その周知をお願いいたします。
記
1 気象情報の把握
地域の暴風警報、強風注意報等の気象情報、特に寒冷前線の通過、降ひょう等短時間のうちに風速が
変化することが予想される気象情報がある場合には、天候の変化及び風速の動向を迅速に把握するとと
もに、風速計等により、屋外に設置したクレーン周辺の風速を把握すること。
2 連絡体制の確立
把握した気象情報、今後予想される風速等に応じて速やかに作業現場で作業中止、退避、逸走防止等
の措置が講じられるよう迅速かつ確実な通信手段を用いた連絡体制を確立すること。
3 逸走防止装置等
強風により作業を中止したとき及び長時間クレーンを使用しないときは逸走防止措置を講じること。
逸走防止装置については、レールアンカが措置可能な箇所を複数設ける等突風に対して即応性のあるも
のとすること。
また、走行レールの両端部については、十分な強度を有するものとすること。
4 点検、訓練等の実施
記1〜3の措置が確実に実施されるよう機会をとらえて安全訓練を実施すること。
別添
突風によって走行クレーンが逸走したことによる災害
1 発生年月日
平成15年10月13日(月)
2 発生場所
臨海コンビナート内の事業場
3 被災者等
死亡2名、負傷5名
4 発生状況
ダウンバーストと呼ばれる突風で、次の災害が発生した。
(1)屋外に設置された天井クレーンが逸走し、レール端部から落下した。この際、運転室にいた
労働者1名が死亡し、2名が負傷した。
(2)レールクランプをかけて留めてあったアンローダが逸走し、同一レール上のアンローダに衝
突した。衝突されたアンローダが倒壊し、労働者1名が死亡し、1名が負傷した。
(3)岸壁に設置された橋形クレーンが逸走し、同一レール上の橋形クレーン3台と玉突き衝突した。
この際、労働者2名が負傷した。
(参考1) ダウンバーストとは
積乱雲の底から爆発的に吹き下ろす気流およびこれが地表に衝突して吹き出す破壊的な気流をいう。通
常、積乱雲の下で発生するが、雄大積雲や搭状積雲の下で発生することもある。予報用語としては「突風」
として扱う。
(出所:気象庁が天気予報等で用いる予報用語)
(参考2) 関係条文
クレーン等安全規則第31条
事業者は、瞬間風速が毎秒30メートルをこえる風が吹くおそれのあるときは、屋外に設置されている
走行クレーンについて、逸走防止装置を作用させる等その逸走を防止するための措置を講じなければな
らない。
クレーン等安全規則第31条の2
事業者は、強風のため、クレーンに係る作業の実施について危険が予想されるときは、当該作業を中
止しなけれならない。