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改正履歴 | ||||
発基第54号 平成11年5月21日 |
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都道府県労働基準局長 殿 | ||||
労働事務次官 |
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労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律の施行について |
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労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律は、第145回国会において本年5月14日に成立
し、本日、平成11年法律第45号として公布され、平成12年4月1日(検査業者等の承継規定については、公
布の日から起算して6月を超えない範囲内において政令で定める日)から施行されることとなった。 ついては、下記の事項を了知の上、改正法の施行に遺憾なきを期するよう、命により通達する。 |
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記 |
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第1 | 改正の経緯及び趣旨 最近における労働者の健康状況については、産業構造の変化、高齢化の進展等労働者を取り巻く環境が 変化する中で、脳・心臓疾患につながる所見を始めとして何らかの所見を有する労働者が約4割を占める 状況にあり、労働者の健康に対する不安が高まっている。 特に、深夜業については、公益上・生産技術上の必要性に加え、国民のニーズの多様化や国際化への対 応等の観点から広く行われており、人間の有する1日単位のリズムに反して働くというその特性から健康 へ影響を及ぼす可能性があると指摘されていることを踏まえ、深夜業に従事する労働者の健康管理を充実 させる必要がある。 また、化学物質による労働災害も依然として多く発生しており、表示、作業環境管理、健康管理等に関 する規制の対象となっていない化学物質による労働災害のうち、その化学物質の有害性の情報が伝達され ていないことや化学物質管理の方法が確立していないことが主な原因となって発生したものが併せて半数 以上を占めており、労働災害を防止するためには、労働現場における化学物質の有害性等の情報を確実に 伝達し、この情報を基に労働現場において化学物質を適切に管理することが重要である。 このような状況にかんがみ、労働省としては、本年1月の中央労働基準審議会の建議「労働安全衛生対 策の見直しについて」を踏まえ、労働安全衛生対策の充実を図ることとし、労働安全衛生法及び作業環境 測定法の1部を改正する法律案を取りまとめて国会に提出し、その審議を経て、今回の改正が行われたも のである。 |
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第2 | 改正の内容 | |||
1 | 深夜業に従事する労働者の健康管理の充実 |
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(1) | 自発的健康診断の結果の提出(労働安全衛生法第66条の2関係) 深夜業については、上記第1のような健康影響を及ぼす可能性があると指摘されていることから、 深夜業に従事する労働者の健康管理を充実させる必要がある。 このため、深夜業に従事する労働者であって、その深夜業の回数その他の事項が深夜業に従事す る労働者の健康の保持を考慮して労働省令で定める要件に該当するものは、労働省令で定めるとこ ろにより、自発的に受けた健康診断の結果を証明する書面を事業者に提出できることとしたもので ある。 |
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(2) | 健康診断の結果の記録(労働安全衛生法第66条の3関係) 経年的な健康診断結果の把握により労働者の健康管理を適正に行うため、事業者は健康診断の結 果を記録しておく必要がある。 このため、従来からある労働安全衛生法上の健康診断と同様、事業者は(1)の自発的健康診断の 結果についても、労働省令で定めるところにより、記録しておかなければならないこととしたものである。 |
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(3) | 自発的健康診断の結果に係る医師等からの意見聴取等(労働安全衛生法第66条の4、第66条の5及び
第66条の7関係) 健康診断実施後の就業場所の変更、作業の転換等の措置を的確に実施するためには、医学的知見 を踏まえて実施される必要があるとともに、労働者の自主的な健康管理の取組を一層促進していく ため、医師等による保健指導を実施する必要がある。 このため、事業者が講ずる健康診断実施後の措置の例示として深夜業の回数の減少を加えるとと もに、従来からある労働安全衛生法上の健康診断と同様、事業者は、(1)の自発的健康診断の結果 についても、次の措置を講ずることとしたものである。 |
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イ | 事業者は、自発的健康診断の結果(有所見者に係るものに限る。)に基づき、労働者の健康を保持 するために必要な措置について、労働省令で定めるところにより、医師の意見を聴かなければなら ないこと。 | |||
ロ | 事業者は、イの医師の意見を勘案し、その必要があると認めるときは、当該労働者の実情を考慮 して、作業の転換、深夜業の回数の減少等の措置を講じなければならないこと。 | |||
ハ | 事業者は、自発的健康診断の結果、特に健康の保持に努める必要があると認める労働者に対し、 医師、保健婦又は保健士による保健指導を行うよう努めなければならないこと。 | |||
2 | 化学物質等による労働者の健康障害を防止するための措置の充実 | |||
(1) | 文書の交付等(労働安全衛生法第57条の2関係) 化学物質による労働災害を防止するためには、労働現場における化学物質の有害性等の情報を確 実に伝達し、この情報を基に労働現場において化学物質を適切に管理することが必要である。 このため、労働者に健康障害を生ずるおそれのあるものに係る有害性等の情報提供義務について、 次の措置を講ずることとしたものである。 |
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イ | 労働者に健康障害を生ずるおそれのある物で政令で定めるもの等(以下「通知対象物」という。) を譲渡し、又は提供する者は、主として一般消費者の生活の用に供される製品として通知対象物を 譲渡し、又は提供する場合を除き、文書の交付その他労働省令で定める方法により、通知対象物の 名称、成分及びその含有量、物理的及び化学的性質、人体に及ぼす作用等の事項を、譲渡し、又は 提供する相手方に通知しなければならないこと。 | |||
ロ | 通知対象物を譲渡し、又は提供する者は、イにより通知した事項に変更を行う必要が生じたとき
は、文書の交付その他労働省令で定める方法により、変更後の事項を、速やかに、譲渡し、又は提
供した相手方に通知するよう努めなければならないこと。 なお、イ及びロの通知に関し必要な事項は、労働省令で定めることとしたものである。 |
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(2) | 指針の公表等(労働安全衛生法第58条第2項及び第3項関係) 化学物質による労働者の健康障害を防止するためには、労働現場において化学物質を適切に管理 することが必要である。 このため、労働大臣は、労働者の健康障害を生ずるおそれのある化学物質等による労働者の健康 障害を防止するため事業者が講ずべき措置の適切かつ有効な実施を図るため必要な指針を公表する とともに、当該指針に従い、事業者に対し、必要な指導等を行うことができることとしたものであ る。 |
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(3) | 法令等の周知(労働安全衛生法第101条第2項関係)
化学物質による労働災害を防止するためには、労働現場における化学物質の有害性等の情報を確
実に伝達することが必要である。 このため、事業者は、上記(1)イ又はロにより通知された事項を、当該事項に係る化学物質等を 取り扱う各作業場の見やすい場所に常時掲示し、又は備え付けることその他の労働省令で定める方法により、当該物を取り扱う労働者に周知させなければならないこととしたものである。 |
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3 | 検査業者及び作業環境境定機関の相続、合併等の場合の承継(労働安全衛生法第54条の5及び作業環境
測定法第34条第1項関係) 検査業者及び作業環境測定機関について事業の全部譲渡、相続又は合併があった場合には、現行では、 改めて登録をしなければ検査業者又は作業環境測定機関となることができないが、検査業者又は作業環 境測定機関として必要な実質的な条件は、合併等の場合、引き続き満たしていると考えられる。 このため、検査業者又は作業環境測定機関がその事業の全部を譲り渡し、又はこれらについて相続若 しくは合併があったときは、その事業の全部を譲り受けた者又は相続人(相続人が二人以上ある場合に おいて、その全員の同意により事業を承継すべき相続人を選定したときは、その者)若しくは合併後存 続する法人若しくは合併により設立された法人は、欠格事由に該当する場合を除き、当該検査業者又は 作業環境測定機関の地位を承継することとしたものである。 |
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4 | 労働安全コンサルタント試験及び労働衛生コンサルタント試験の民間機関への委託等(労働安全衛生
法第83条の2、第83条の3、第85条の2及び第85条の3関係) 労働安全コンサルタント試験及び労働衛生コンサルタント試験の受験者数並びに労働安全コンサルタ ント及び労働衛生コンサルタントの登録者数が急増しており、また、行政改革会議の最終報告(平成9年 12月3日)等の要請もあり、行政事務の簡素合理化の観点から、試験事務等の定型的な事務について極力 民間に移譲する必要がある。 このため、労働大臣は、労働大臣が指定する者に、労働安全コンサルタント若しくは労働衛生コンサ ルタントの試験の実施に関する事務(合格の決定に関する事務を除く。)又は労働安全コンサルタント若 しくは労働衛生コンサルタントの登録の実施に関する事務を行わせることができることとしたものであ る。 |
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5 | その他 罰則その他所要の規定の整備を行うこととしたものである。 |
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6 | 施行期日等 | |||
(1) | 施行期日(附則第1条関係) この法律は、平成12年4月1日から施行することとしたものである。ただし、上記3については、 公布の日から起算して6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしたもの である。 |
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(2) | 経過措置(附則第2条関係) この法律の施行に関し必要な経過措置を定めることとしたものである。 |
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(3) | 検討(附則第3条関係) 政府は、この法律の施行後5年を経過した場合において、上記2に係る規定の実施状況等を勘案し、 これらの規定について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を 講ずることとしたものである。 |
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(4) | その他(附則第4条及び第5条関係) 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(昭和60年 法律第88号)第45条並びに労働省設置法(昭和24年法律第162号)第4条及び第5条の規定について所要 の整備を行うこととしたものである。 |