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液化窒素を用いて冷凍を行う冷凍車の冷凍室内の作業における
酸素欠乏症防止対策の徹底について

改正履歴
基安化発第15号の3
平成11年4月20日
都道府県労働基準局長 殿
労働省労働基準局安全衛生部長

液化窒素を用いて冷凍を行う冷凍車の冷凍室内の作業における
酸素欠乏症防止対策の徹底について


 標記方式の冷凍車の冷凍室の内部(以下「冷凍室内部」という。)は、昭和57年6月14日付け基発第407号 「労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令及び酸素欠乏症防止規則等の一部を改正する省令の施行等 について」において、労働安全衛生法施行令別表第6第11号の酸素欠乏危険揚所に該当することとされて いることから、当該場所における作業(以下「冷凍室内作業」という。)については、酸素欠乏症等防止規 則(以下「酸欠則」という。)に基づく指導を行ってきたところである。
 ところが、平成9年2月に神奈川県において発生した冷凍室内部における酸素欠乏症の災害調査結果等及 び昨年静岡労働基準局が関係事業場に対して実施した調査の結果から、事業者に冷凍室内部が酸素欠乏危 険場所に該当する旨の認識がほとんどなく、大部分の事業場で酸欠則に定められている措置が講じられて いないことが明らかになった(別紙1及び2参照)。この酸素欠乏に対する事業者の危険認識の欠如は、地域 的な問題ではなく、運送業界全体に共通する間題であると考えられる。
 このため、標記について、陸上貨物運送事業労働災害防止協会及び超低温機器協会に対して、それぞれ別 添1及び2のとおり要請したので、各局においても、これらの要請事項に留意の上、自主点検が円滑に実施 されるよう陸上貨物運送事業労働災害防止協会都道府県支部に対して必要な指導を行う等により同種災害 の防止対策の徹底に努められたい。


別添1
基安発第15号
平成11年4月20日
陸上貨物運送事業労働災害防止協会
  会長 長岡毅 殿
労働省労働基準局
安全衛生部長 下田智久

液化窒素を用いて冷凍を行う冷凍車の冷凍室の内部における
酸素欠乏症防止対策の徹底について


 安全衛生行政の推進につきましては、平素から格段の御協カを賜り厚く御礼申し上げます。酸素欠乏症 につきましては、その重篤性にかんがみ労働省といたしましても、平成10年度開始の第9次労働災害防止 計画においてその撲滅を目標の一つにあげる等、職業性疾病予防対策の中の重点項目の一つとしてその防 止対策の推進を図っております。
 さて、標記方式の冷凍車の冷凍室の内部(以下「冷凍室内部」という。)は、労働安全衛生法施行令別表 第6第11号の酸素欠乏危険場所に該当することから、当該場所における作業(以下「冷凍室内作業」という。 )を行うに当たっては、酸素欠乏症等防止規則(以下「酸欠則」という。)に定められている措置を講じなけ ればならないこととされており、労働省といたしましても従来よりこれに基づく指導を行ってきたところ です。
 ところが、平成9年2月に神奈川県において発生した冷凍室内部における酸素欠乏症災害では、災害調査 の結果、酸素濃度測定及び換気の未実施、酸素欠乏危険作業主任者の未選任等、酸欠則に定める基本的な 対策が全く講じられておらず、これらのことから冷凍室内部が酸素欠乏危険場所に該当することについて、 事業者にその認識が欠けていたことがうかがわれます(別紙1参照)。また、昨年静岡労働基準局が冷凍室内 部における酸素欠乏症災害の発生を端緒として関係事業場に対して実施した調査の結果をみても、事業者 に冷凍室内部が酸素欠乏危険場所に該当する旨の認識がほとんどなく、大部分の事業場で酸欠則に定めら れている措置が講じられていないことが明らかになりました(別紙2参照)。
 つきましては、標記方式の冷凍車を保有する会員事業場に対して、冷凍室内部が酸素欠乏危険場所に該 当すること及び冷凍室内作業を行う場合には下記の措置を実施する必要があることについて周知徹底を図 っていただくとともに、別紙3の自主点検表による実態把握等により、同種災害の再発防止指導に努めて いただくようお願い申し上げます。
 なお、本件につきましては、低温液化ガスを貯蔵、移動又は消費する機器を製造する業界団体である超 低温機器協会に対しても、同趣旨の要請を行っていますので申し添えます。



1 酸素欠乏危険作業主任者の選任
 第一種酸素欠乏危険作業主任者技能講習又は第二種酸素欠乏危険作業主任者技能講習を修了した者(以 下「技能講習修了者」という。)のうちから酸素欠乏危険作業主任者を選任し、作業方法の決定、労働者 の直接指揮その他の酸欠則第11条に定められている業務を行わせること。

2 酸素欠乏危険作業に係る特別教育の実施
 冷凍室内作業を行う労働者(技能講習修了者を除く。)に対して、酸素欠乏危険作業に係る特別教育を 実施すること。

3 作業標準の作成等
 異常時の措置も含めた作業標準を作成し、関係労働者に周知させること。

4 冷凍室内作業を行うに当たって講じるべき措置
(1) 冷凍室内部の酸素濃度の測定
 関係車両に酸素濃度計を備え付け、冷凍室内作業を開始する前に、冷凍室内部の酸素濃度を測定す ること。
(2) 冷凍室内部の換気等
 (1)の測定の結果、酸素濃度が18パーセント未満の場合には、冷凍室内部の換気を十分に行い、再度 測定により酸素濃度が18パーセント以上あることを確認してから労働者を冷凍室内部に立ち入らせる こと。
(3) 人員の点検等
 冷凍室内部に入る人員の点検を行うとともに、監視人を置く等により、異常を早期に把握するため の措置を講じること。
(4) 作業中に閉じ込められないための措置
 労働者が冷凍室内作業を行っている間は、冷凍室の扉が締まらないような措置を講じる等、労働者 が冷凍室内部に閉じ込められないようにすること。
(5) その他
 作業場所への関係者以外立入禁止の表示、空気呼吸器等非常の場合に労働者を避難させ、又は救出 するために必要な避難用具等の設置その他の酸欠則に基づく措置を講じること。

5 荷の送出し人又は受取り人である事業者が冷凍室内作業を行う場合の措置
 荷の送出し人又は受敢り人である事業者が冷凍室内作業を行う揚合は、当該事業者に対して、冷凍室 内部が酸素欠乏危険揚所であること及び当該作業を行うに当たって講じるべき措置について周知させる こと。


別添2
基安発第15号の2
平成11年4月20日
超低温機器協会
  会長 高橋正 殿
労働省労働基準局
安全衛生部長 下田智久

液化窒素を用いて冷凍を行う冷凍車の冷凍室の内部における
酸素欠乏症防止対策の徹底について

 安全衛生行政の推進につきましては、平素から格段の御協カを賜り厚く御礼申し上げます。
 さて、貴会におかれましては、超低温機器等に係る作業の安全衛生の確保について、かねてより御配意 いただいていることと存じますが、平成9年2月に神奈川県において、液化窒素を噴射して冷却中の冷凍車 の冷凍室の内部(以下「冷凍室内部」という。)に立ち入った労働者が酸素欠乏症により被災する災害が発 生いたしました(別紙1参照)。
 冷凍室内部につきましては、労働安全衛生法施行令別表第6第11号の酸素欠乏危険場所に該当すること から、当該場所における作業(以下「冷凍室内作業」という。)を行うときは、酸素欠乏症等防止規則(以 下「酸欠則」という。)に基づく措置を講じなければならないこととされていますが、上記の災害事例で は、原因等の調査の結果、酸素濃度測定及び換気の未実施、酸素欠乏危険作業主任者の未選任等、酸欠則 に基づく基本的な対策が全く講じられておらず、冷凍室内部が酸素欠乏危険場所に該当することについて、 事業者にその認識が欠けていたことがうかがわれます。また、昨年、静岡労働基準局が冷凍室内部におけ る酸素欠乏症災害の発生を端緒として関係事業場に対して実施した調査の結果においても、事業者に冷凍 室内部が酸素欠乏危険場所に該当する旨の認識がほとんどなく、大部分の事業場が酸欠則に基づく措置を 講じていないことが明らかになりました(別紙2参照)。この酸素欠乏に対する事業者の危険認識の欠如は、 地域的な問題ではなく、運送業界全体に共通する問題であると考えられます。
 つきましては、冷凍室内作業を行う事業場における酸欠則に基づく措置の徹底を図るため、貴会の会員 事業場において、標記冷凍車に使用する液化窒素式の低温輸送装置の出荷の際に添付する取扱説明書、パ ンフレット等に、下記の注意事項が明記されるよう、会員事業場に対して周知徹底していただきたくお願 い申し上げます。



1 酸素欠乏の危険性
 冷凍室内部は窒素ガスの充満による酸素欠乏の危険性があることから、労働安全衛生法施行令別表第 6第11号の酸素欠乏危険場所に該当すること。

2 冷凍室内部において作業を行う場合に講じるべき措置
(1) 第一種酸素欠乏危険作業主任者技能講習又は第二種酸素欠乏危険作業主任者技能講習を修了した者 のうちから酸素欠乏危険作業主任者を選任し、作業方法の決定、労働者の直接指揮その他の酸欠則第 11条に定められている業務を行わせること。
(2) 冷凍室内作業を開始する前に、冷凍室内部の酸素濃度を測定すること。
(3) 上記(2)の測定の結果、酸素濃度が18パーセント未満の場合は換気を十分に行い、再度測定により酸 素濃度が18パーセント以上あることを確認した後に労働者を冷凍室内部に立ち入らせること。
(4) その他酸欠則に定められている措置を講じること。


別紙1
液化窒素を用いて冷凍を行う冷凍車の冷凍室の内部において発生した酸素欠乏症

1 神奈川県における災害発生事例
(1) 発生日
 平成9年2月13日
(2) 被災状況
 休業1名
(3) 発生の場所
 県内の冷凍工場
(4) 災害の概要
[1] 冷凍車に冷凍マグロを積み込むため荷待ちをしている間に、冷凍室の冷却を行っていたが、水抜 き栓を開けたままにしていたことに気付き、それを閉じるために窒素ガスが充満している冷凍室内 部に立ち入り、酸素欠乏症により意識を失った。
[2] 被災者は、意識を失ってから約1時間30分後、冷凍室内のドア付近でドア方向に顔を向けて倒れて いるところを発見された。ドアは半開きの状態であったが、この間窒素ガスは噴射し続けていた。
[3] 通常は、連日冷凍車を使用することにより冷凍室内部が作業前にある程度冷えているため、荷の 積込みを終えてから冷凍室の冷却を開始するが、災害発生時は前日まで修理を行っていたため冷凍 室内部が常温になっており、荷の積込み前に冷却する必要があった。
[4] 水抜き栓は冷凍室内部の最も奥の床面にあり、通常冷却中には閉じられているが、災害発生時は 冷凍室内部を常温にした時に生じた水を抜くために開けられていた。
[5] 酸素濃度測定器の備付け、関係者以外立入禁止の表示、酸素欠乏危険作業主任者の選任及び酸素 欠乏危険作業に係る特別教育の実施はなされていなかった。また、冷凍室内作業は通常運転手1人で 行われており、このため災害発生時も監視人は配置されていなかった。
(5) 発生原因
[1] 冷凍室内部への立入りに際して、酸素濃度を測定しなかったこと。
[2] 冷凍室内部の酸素濃度を18%以上に保つように換気しなかったこと。
[3] 酸素欠乏危険作業主任者を選任していなかったこと。
[4] 作業者に対して酸素欠乏危険作業に係る特別教育を実施していなかったこと。
[5] 監視人を配置していなかったこと。

2 静岡県における災害発生事例
2-1 事例1
(1) 発生日
 平成9年3月22日
(2) 被災状況
 不休1名
(3) 災害の概要
 中央卸売市場において、冷凍室内部の温度を確認したところ少し上がっていたので、窒素ガスを 噴射した。その約40分後に、冷凍室の後扉を開けて出口付近の荷を卸す作業を行ったところ、ふら っとして後ろへ倒れ、コンクリートで後頭部を打ち、気を失った。
2-2 事例2
(1) 発生日
 平成9年10月21日
(2) 被災状況
 不休1名
(3) 災害の概要
 冷凍車の荷を卸す作業において、冷凍室内から外へ出ようとしたところ、酸素欠乏の症状によっ て転倒し、顔面を負傷した。


別紙2
冷凍車使用実態調査結果
1 調査実施者
 静岡労働基準局

2 調査期間
 平成10年8月から同年9月まで

3 調査対象
 冷凍・冷蔵車による運送を行っている事業場:114社(回答率97%)

4 調査結果
(1) 冷凍車(注)を保有する事業場数:34社
(2) 冷凍車保有台数:707台
(3) 冷凍車の運転者数:737人
(4) 冷凍車の使用状況
[1] 積卸し時の冷凍室(注)内部への労働者の立入り
有:24社(73%)、無:9社(27%)
[2] 冷凍室内部への立入り時の液化窒素噴霧
有:7社(21.2%)、無:26社(78.8%)
[3] 冷凍室内部への立入り時の液化窒素の滞留
有:10社(30.3%)、無・:23社(69.7%)
[4] 冷凍室内部への立入り前の換気
自然換気:16社(48.5%)、強制換気:1社(3%)、無:16社(48.5%)
[5] 冷凍室内部への立入り中の換気
自然換気:15社(45,5%)、強制換気:1社(3%)、無:17社(51.5%)
(5) 酸素濃度測定器具の備付け
有:3社(9%)(事務所内)、無:30社(91%)
(6) 酸素欠乏危険作業主任者技能講習修了者
有:1社(3%)、無:32社(97%)
(7) 酸素欠乏危険作業に係る特別教育修了者
有:1社(3%)、無:32社(97%)
(8) 冷凍室内作業時の労働災害の発生
有:3社(9%)(酸素欠乏症2件)、無:30社(91%)
(注)冷凍車:液化窒素を用いて冷凍を行う冷凍車
   冷凍室:液化窒素を用いて冷凍を行う冷凍車の冷凍室


別紙3