床上運転式クレーンを用いて行うクレーン運転士実技試験要領について |
改正履歴
基発第66号
平成10年2月25日
標記については、平成10年2月25日付け基発第65号「クレーン等安全規則及び労働安全衛生規則の一部
を改正する省令の施行並びに揚貨装置運転実技教習、クレーン運転実技教習、移動式クレーン運転実技教
習及びデリック運転実技教習規定の一部を改正する告示等の適用について」において、別途示すこととし
ていたところであるが、今般、別添1のとおり定めたので、床上運転式クレーンを用いて行うクレーン運
転士実技試験の適用に当たっては、その適切な運用に遺憾なきを期されたい。
なお、管内の関係する指定教習機関に対しては、本件の周知徹底を図り、その円滑な実施に向け、必要
な指導に努められたい。
おって、財団法人安全衛生技術試験協会に対しては、別添2のとおり通知したので了知されたい。
別添1
床上運転式クレーンを用いて行うクレーン運転士実技試験要領
1 試験に使用するクレーン
クレーンは、つり上げ荷重が5トン以上の天井クレーンのうち、床上運転式クレーンとする。なお、
当該クレーンは、原則として9つの押しボタンスイッチ(電源入、切、巻上げ、巻下げ、東、西、南、
北、警報)の付いたペンダントスイッチにより操作するものとする。
2 運転
(1) 運行経路
イ 別図1を参考のうえ、運行経路を設定する。
ロ 運行距離は、合計45メートル以上とする。
ハ 運行経路の中には、次の要素を入れることとし、運行経路及び下記(3)に示す障害物の位置は、
適宜、変更することができる。
(イ) 斜行経路を4箇所設定する。
(ロ) 壁障害物を運行経路の前半部分の経路の途中の斜行経路に1箇所設定する。
(ハ) バー越え障害物を運行経路の前半部分の走行経路に1箇所、後半部分の走行経路に1箇所、
運行経路の中間点付近に1箇所の合計3箇所設定する。
(ニ) ポール障害物を運行方向の変化する箇所の近くに2箇所設定する。
ニ 運行経路は白線等で示し、運行方向は矢印で示す。
ホ 試験荷重(以下「荷」という。)の定位置(出発及び帰着点)は、円を描いて示すこととする。円
の大きさは、荷の直径の1.5倍の大きさとする。
(2) 運転者の移動する通路
運転者の移動する通路の幅は2メートルとし、運行経路から2メートル以上離れて設定する。
(3) 障害物
運行経路に設定する障害物は、次のものとし、別図2にその概要を示す。
イ 運行経路の前半部分の障害物は、ポール障害物(別図2の(イ))、バー越え障害物(別図2の(ロ))
及び壁障害物(別図2の(ハ))とする。
ロ 運行経路の中間点付近における障害物は、バー越え障害物(別図2の(ホ))とする。
ハ 運行経路の後半部分の障害物は、ポール障害物(別図2の(ニ))及びバー越え障害物(別図2の(ホ))
とする。
(4) 荷の形状及び質量
荷の形状は円筒形とし、質量は約500キログラム以上とする。
(5) 運転方法
イ 出発点において荷の質量を確認し、荷を1メートルの高さに巻き上げる。荷の高さを測定し、荷
の高さ(荷の底面)が1.3メートルを越えるとき又は0.8メートルを下回るときは、高さを約1メート
ルに修正させる。
ロ 運行経路の中間点付近におけるバー越え障害物を越えた点において、2メートルの高さに巻き下
げる。荷の高さを測定し、荷の高さ(荷の底面)が2.3メートルを越えるとき又は1.8メートルを下
回るときは、高さを約2メートルに修正させる。
ハ コントローラー(ペンダントスイッチ)の運転は、運転者が通路の白線内から逸脱しないで行わせ
る。
ニ 試験員が笛等で合図してから運行経路に沿って下記(イ)〜(ニ)により荷を運搬し、点上(床上約
2メートル)に至ったのち、荷を降ろす。
(イ) ポール障害物の通過
荷の底面がおおむね床上の1メートル又は2メートルの高さを保ち、ポール障害物に接触しな
いように通過する。
(ロ) バー越え障害物の通過
障害物の約1メートル手前で荷を巻上げてバーを越え、障害物を通過した後、約1メートル離
れた位置で荷をおおむね1メートル又は2メートルの高さにもどす。
なお、バーを越えるときは、荷の底面がバーとポール上端の間を通過するものとする。
(ハ) 壁障害物の通過
荷の底面が床上約1メートルの高さを保ち、壁障害物に接触しないように障害物間を通過す
る。
(ニ) (イ)、(ロ)及び(ハ)以外の運行経路上を運行するときは、運転操作通路側の経路は荷の高さ
を約1メートルの高さに保ち、中間点付近におけるバー越え障害物を越えた点以後の運転者の
移動する通路と遠い側の経路は荷の高さを約2メートルの高さに保つ。
ホ コントローラー(ペンダントスイッチ)の操作は、3つの押しボタンスイッチ操作を同時に行うこ
とを禁止し、運行経路中の斜行箇所においては2つの押しボタンスイッチ操作を同時に行うものと
する。
(6) 所要時間
イ 出発点の1メートルの高さにおいて試験員がクレーンの発進合図を行ったときから荷を点に着地
させるまでに要した時間を所要時間とする。但し、荷の高さを変更する地点での荷の高さの測定に
要する時間を除くものとする。
ロ 標準とする所要時間は、クレーンの巻上げ速度、運行距離等によって差異があるので、模範運転
を行い、模範運転時間の30%増しの時間(標準時間)とする。
(7) 採点方法
別紙に示す基準によるところの減点方式により採点し、減点の合計が40点以下(合図が免除になる
者を含む。)の点を合格とする。
(8) その他
運転の試験において、失格の場合又は運転を継続することが危険であると試験員が判断するに至っ
た場合は、その時点で直ちに運転を中止させ不合格とする。
3 合図
クレーンの運転に係る基本的な合図のうち、適宜5つを選択して示し、判別させる。1つの誤りにつ
き2点を減点する。
別紙
採点基準
別添2
基発第66号の2
平成10年2月25日
財団法人安全衛生技術試験協会理事長 殿
労働省労働基準局長
床上運転式クレーンを用いて行うクレーン運転士実技試験要領について
クレーン等安全規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令(平成10年労働省令第3号)は、平成10
年2月25日公布され、同年3月31日から施行されることとなりました。
今回の改正は、床上で運転し、かつ、当該運転をする者がクレーンの走行とともに移動する方式のクレ
ーン(床上操作式クレーンを除く。以下「床上運転式クレーン」という。)のみの運転の業務を行おうとす
る者に対しては、床上運転式クレーンの運転に限定したクレーン運転士免許を与えることができることと
したものです。
今般、当該改正に関連して標記要領を別添のとおり定めたので、床上運転式クレーンを用いて行うクレ
ーン運転士免許実技試験の適用に当たっては、その適切な運用に万全を期されるようお願い申しあげます。
(別添省略)