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改正履歴
基安発第1号
平成9年1月8日
標記については、平成8年9月30日付け基安発第21号により、事業場における使用実態、安全上の問題
点、安全対策等について、調査を実施し、その結果を別紙のとおり取りまとめたところである。
この結果によると、自動車運転業務中の連絡方法として、約8割の事業場で携帯電話が使用され、その
うち、9割近くの事業場において注意力が散漫になること、脇見運転、片手運転が行われること等の安全
上の問題点が認識され、同じく8割近くの事業場で安全対策が講じられている一方、交通労働災害やいわ
ゆるヒヤリ・ハットも散見されることが明らかとなったところである。
このように携帯電話は、事業者、各級管理者等が道路上を走行中の労働者に対し業務上の連絡をとる手
段として広く普及しているが、その使用は、指揮命令のための手段そのものが危険性を伴うという新たな
問題を有していることから、事業者として、安全対策を講じていくことが必要である。
ついては、交通労働災害防止対策の一環として、自動車運転業務中の携帯電話の安全な使用に関し、下
記の事項を徹底するよう関係事業者等に対して指導されたい。
なお、労働災害防止団体に対して別添1のとおり要請を行ったので申し添える。
おって、自動車運転中の携帯電話の使用について、関係行政機関の指導内容等を別添2のとおり取りま
とめたので、指導に当たっての参考とされたい。
記
1 自動車運転中の労働者には、携帯電話の発信を行わせず、安全な場所に停車してから発信を行わせる
こと。
2 自動車運転業務中の労働者と事業場との連絡に携帯電話を用いる場合には、自動車運転者からの連絡
を原則とすること。
3 自動車運転中の労働者には、携帯電話の電源を切るなどして、受信させないこととすることが望まし
いこと。
なお、やむを得ず、運転中に受信させる必要がある場合、留守番電話サービス、応答保留機能等を利
用させることが望ましいこと。
4 1から3の自動車運転業務中の携帯電話の安全な使用方法について、自動車運転者に対し教育するこ
と。
5 自動車運転業務中の携帯電話の安全な使用について、必要に応じ、取引先等の理解を求めること。
別紙
自動車運転業務における携帯電話の使用状況等に関する実態調査結果
1 平成8年10月に全国の都道府県労働基準局を通じて通信調査を実施した。調査対象事業場は、業務用
自動車を10台以上所有する事業場275事業場で、その内訳は、表1のとおりである。
2 業務用自動車の主な用途は、表2のとおりであり、営業(50.2%)、運搬・配達(49.8%)、出張作
業(39.3%)の順となっている。
3 自動車運転業務中の連絡方法は、表3のとおりであり、事業場単位で見ると、携帯電話を使用する割
合は77.5%で、公衆電話、無線通信を上回っている。
また、携帯電話を使用する割合を業種別でみると、建設業(94.9%)、ビルメンテナンス業・警備業
(87.5%)をはじめとして、ほとんどの業種で7割を超えている。
なお、陸上貨物運送事業と電気・ガス・水道業では、携帯電話を使用する割合は比較的低い(それぞ
れ70.2%、75.0%)が、無線通信の使用(それぞれ57.9%、87.5%)と合わせると、自動車運転中に連
絡がとれる連絡方法が採られている割合は高い。
4 携帯電話を使用する事業場において、携帯電話を使用している業務用自動車の割合は、表4のとおり
であり、2割以下の使用が59.2%と、自動車単位で見ると使用割合は必ずしも高くない。しかしながら、
建設業では、4割以上の使用が28.6%であり、全体としても、4割以上の使用が20.3%となっている。
5 自動車運転業務中の携帯電話の使用に関わる問題点として、平成8年1月〜6月の携帯電話の使用中
の交通労働災害の発生件数は、建設業における2件のみであるが、携帯電話使用者から危険を感じた等
の報告を受けたことがある割合(事業場で把握している割合)は、携帯電話を使用する事業場の5.6%
となっている(表5)。
報告された危険は、
[1]ブレーキ操作の遅れにより前車に追突しそうになった、アクセルの緩み(速度の減少)により後
続車に追突されそうになった等、アクセル・ブレーキ操作に関するもの
[2]ハンドル操作の不適・ぶれ、急カーブでのハンドル操作の遅れ等により対向車等と衝突しそうに
なったというハンドル操作に関するもの
に大別される。
6 携帯電話の使用について安全上の問題点を感じている割合は、携帯電話を使用する事業場の85.4%で
あり、大部分の事業場で問題意識を持っている(表5)。
その内容は、
[1]注意散漫、脇見運転等の運転への集中力の欠如
[2]片手運転という操作方法の不適
等が挙げられている。
7 携帯電話を安全に使用するための対策を講じている割合は、携帯電話を使用する事業場の77.0%で、
8割近くの事業場で対策を講じている(表5)。
その内容は、
[1]走行中の使用禁止(発受信は停車中に行う、走行中はスイッチを切る・留守番電話とする等)
[2]走行中の使用の制限(走行中である旨伝え、停車後再度連絡をとる、緊急時のみ使用、運転者
以外の使用等)
[3]イヤホンマイクの使用
等が挙げられている。
別添1
基安発第1号の2
平成9年1月8日
中央労働災害防止協会会長 殿
建設業労働災害防止協会会長 殿
陸上貨物運送事業労働災害防止協会会長 殿
港湾貨物運送事業労働災害防止協会会長 殿
林業・木材製造業労働災害防止協会会長 殿
鉱業労働災害防止協会会長 殿
労働省労働基準局
安全衛生部長
自動車運転業務中の携帯電話の安全な使用について
労働安全衛生行政の推進に当たっては、日頃から格別の御協力を賜り、厚く御礼申し上げます。
さて、最近、携帯電話が急速に普及する中で、自動車運転中に携帯電話を使用する場合の危険性が懸念
されています。
このため、労働省では、平成8年10月に全国の都道府県労働基準局を通じて、自動車運手業務中の携帯
電話の使用実態、安全上の問題点、安全対策等について事業場の調査を実施し、その結果を別紙のとおり
取りまとめました。
この結果によると、自動車運転業務中の連絡方法として、約8割の事業場で携帯電話が使用され、その
うち、9割近くの事業場において注意力が散漫になること、脇見運転、片手運転が行われること等の安全
上の問題点が認識され、同じく8割近くの事業場で安全対策が講じられている一方、交通労働災害やいわ
ゆるヒヤリ・ハットも散見されることが明らかとなりました。
このように携帯電話は、事業者、各級管理者等が道路上を走行中の労働者に対し業務上の連絡をとる手
段として広く普及していますが、その使用は、指揮命令のための手段そのものが危険性を伴うという新た
な問題を有していることから、事業者として、安全対策を講じていくことが必要です。
つきましては、労働省では交通労働災害防止対策の一環として、自動車運転業務中の携帯電話の安全な
使用に関し、下記の事項を徹底するよう関係事業者等に対して指導することとしていますが、貴協会にお
かれましても、会員事業場等に対する下記の事項の周知徹底について格別の御協力をお願いいたします。
なお、自動車運転中の携帯電話の使用について、関係行政機関の指導内容等を別添のとおり取りまとめ
ましたので、周知徹底に当たっての参考として下さい。
記
1 自動車運転中の労働者には、携帯電話の発信を行わせず、安全な場所に停車してから発信を行わせる
こと。
2 自動車運転業務中の労働者と事業場との連絡に携帯電話を用いる場合には、自動車運転者からの連絡
を原則とすること。
3 自動車運転中の労働者には、携帯電話の電源を切るなどして、受信させないこととすることが望まし
いこと。
なお、やむを得ず、運転中に受信させる必要がある場合、留守番電話サービス、応答保留機能等を利
用させることが望ましいこと。
4 1から3の自動車運転業務中の携帯電話の安全な使用方法について、自動車運転者に対し教育するこ
と。
5 自動車運転業務中の携帯電話の安全な使用について、必要に応じ、取引先等の理解を求めること。
(別紙及び別添省略)
別添2
関係行政機関等の自動車運転中の携帯電話の安全な使用についての指導内容等
1 警察庁
(1) 平成8年6月及び7月〜9月の携帯電話の使用による交通事故の件数等を調査し、発表した。
(2) 平成8年10月11日に道路交通法第108条(交通の方法に関する教則の作成)の規定に基づく「交通
の方法に関する教則(告示)」を改正し、
「運転中に携帯電話を使用することにより、周囲の交通の状況に対する注意が不十分になると大変
危険です。運転中は使用しないようにしましょう。また、運転する前に電源を切るなどして呼出音
が鳴らないようにしましょう。」
との条項を加えた。
2 運輸省
平成8年8月に、バス、ハイタク、トラックの事業者に対し、携帯電話の使用実態アンケートを行い、
9月に関係事業者団体に対し、当該アンケート結果を通知するとともに、
[1]走行中の携帯電話の発信の禁止
[2]携帯電話の置き場所の確保、着信時の安全な場所に停車しての使用、留守番電話サービス機能等の
使用
について、指導を行った。
3 (社)電気通信事業者協会
IDO、NTTドコモグループ等が構成員である団体で、秋の全国交通安全運動時に自動車運転時の携帯電
話の使用について、全国紙に注意広告を掲載している。
また、小冊子「携帯電話マナー入門」において、自動車運転中の注意力の低下及び片手運転の危険並
びに安全な場所に停車しての利用を訴えている。