防じんマスクの選択、使用等について(平成17年2月7日基発第0207006号により廃止) |
改正履歴
基発第505号
平成8年8月6日
防じんマスクは、空気中に浮遊する粒子状物質(以下「粉じん等」という。)の吸入により生じるじん
肺等の疾病を予防するために使用されるものであるが、その適切な使用等を図るため、昭和37年7月24日
付け基発第781号「労働衛生保護具検定規則の一部を改正する省令の施行並びに防じんマスクの規格及び
防毒マスクの規格の適用について」により基本的事項を示し、昭和59年1月30日付け基発第48号「防じん
マスクの選択、使用等について」により取替え式防じんマスクについて、昭和63年11月15日付け基発第711
号「使い捨て式防じんマスクの選択、使用等について」により使い捨て式防じんマスクについて、その適
正な選択、使用等について指示してきたところである。
今般、その後の防じんマスクの改良及び使用の実態に対応するために最近の科学的知見を踏まえ、防じ
んマスクの選択、使用等について下記のとおり定め、日本呼吸用保護具工業会会長あてに別添のとおり通
知したので、了知の上、今後の防じんマスクの選択、使用等の適正化を図るための指導に当たって遺憾な
きを期されたい。
なお、昭和37年7月24日付け基発第781号「労働衛生保護具検定規則の一部を改正する省令の施行並び
に防じんマスクの規格及び防毒マスクの規格の適用について」、昭和59年1月30日付け基発第48号「防じ
んマスクの選択、使用等について」及び昭和63年11月15日付け基発第711号「使い捨て式防じんマスクの
選択、使用等について」は、本通達をもって廃止する。
記
第1 防じんマスクの選択に当たっての留意点
防じんマスクの選択に当たっては、次の点に留意すること。
1 防じんマスクは、機械等検定規則(昭和47年労働省令第45号)第14条の規定に基づき面体及びろ過
材ごと(使い捨て式防じんマスクにあっては面体ごと)に付されている検定合格標章により型式検定
合格品であることを確認すること。
2 面体は、着用者の顔面に合った形状及び寸法の接顔部を有するものを選ぶこと。
粉じん捕集効率の高い防じんマスクであっても、着用者の顔面とマスクの面体との密着が充分でな
く、漏れのある状態では、その性能が減じること。
このため、事業者は、次に示す方法により、各着用者に密着性の良否を確認させ、着用者の顔面に
合った形状及び寸法の面体を有する防じんマスクを選択、使用させること。
なお、大気中の粉じんや塩化ナトリウムエアロゾルやサッカリンエアロゾルを用いて密着性の良否
を確認する機器もあるので、これらを可能な限り利用し、良好な密着性を確保すること。
(1) 取替え式防じんマスクの場合
イ 作業時に着用する場合と同じように、防じんマスクを着用する。保護帽、保護めがね等の着
用が必要な作業にあっては、保護帽、保護めがね等も同時に着用する。
ロ 防じんマスクの面体を顔面に押しつけないように、フィットチェッカー等を用いて吸気口を
ふさぐ。
ハ 息を吸って、面体の接顔部から空気が面体内に漏れ込まず、面体が顔面に吸いつけられるか
どうかを確認する。
(2) 使い捨て式防じんマスクの場合
使い捨て式防じんマスクの取扱説明書に記載されている漏れ率のデータを参考とし、個々の着
用者にあった大きさ、形状のものを選択する。
3 作業の内容、強度を考慮し、防じんマスクの重量、吸排気抵抗等が当該作業に適したものを選ぶこ
と。このため、選択に当たっては取扱説明書、ガイドブック、パンフレット等(以下「取扱説明書等」
という。)に記載されているデータを参考にすること。
4 作業環境中の粉じん等の発散状況及び作業時のばく露の危険性の程度を考慮し、高濃度ばく露のお
それがあると認められるときは、できるだけ粉じん捕集効率が高く、かつ、排気弁の動的漏れ率が低
いものを選ぶこと。
5 防じんマスクは、作業環境の粉じん等の種類、粒径、発散状況及び濃度により使用限度時間に影響
を受けるので、これらの要因を考慮して選択すること。
防じんマスクの取扱説明書等には吸気抵抗上昇値が記載されているが、これが高いものほど使用限
度時間は短くなること。
また、防じんマスクは一般に粉じん等を捕集するに従って吸気抵抗値が高くなるが、ろ過材の性質
によっては、オイルミスト等を捕集すると、吸気抵抗値が変化せずに急激に粉じん捕集効率等が悪化
するものもあるので、吸気抵抗値の上昇のみを使用限度の判断基準としないこと。
第2 防じんマスクの使用に当たっての留意点
1 防じんマスクは、酸素濃度18%未満の場所では使用してはならないこと。このような場所では送気
マスク等を使用すること。
また、防じんマスク(防臭の機能を有しているものを含む。)は、有害なガスが存在する場所にお
いては使用してはならないこと。このような場所では防毒マスク又は送気マスク等を使用すること。
2 事業者は、衛生管理者、作業主任者等の労働衛生に関する知識、経験を有する者のうちから、各作
業場ごとに防じんマスクを管理する保護具着用管理責任者を指名し、防じんマスクの適正な着用、取
扱方法について必要な指導を行わせるとともに、防じんマスクの適正な保守管理に当たらせること。
3 防じんマスクの使用中に息苦しさを感じた場合は、ろ過材を交換すること。
また、使い捨て式防じんマスクにあっては、使用中に息苦しさを感じた場合又は当該マスクに表示
されている使用限度時間に達した場合には廃棄すること。
4 事業者は、防じんマスクを着用する労働者に対し、当該防じんマスクの取扱説明書等に基づき、防
じんマスクの適正な装着方法、使用方法について十分な教育や訓練を行うこと。
5 事業者は、防じんマスクを使用させるときは、その都度、着用者に次の項目について点検を行わせ
ること。
(1) 排気弁の気密性が保たれていること。
(2) ろ過材が適切に取り付けられていること。
(3) ろ過材が破損したり、穴があいていないこと。
(4) ろ過材から異臭が出ていないこと。
(5) 作業の時間等に合わせ、予備の防じんマスク、ろ過材を用意していること。
6 次のような防じんマスクの着用は、粉じん等が面体の接顔部から面体内へ漏れ込むおそれがあるた
め、行わないこと。
(1) タオル等を当てた上から防じんマスクを使用すること。
(2) 面体の接顔部に「接顔メリヤス」等を使用すること。ただし、防じんマスクの着用により皮膚
に湿しん等を起こすおそれがある場合で、かつ、面体と顔面との密着性が良好であるときは、こ
の限りでないこと。
(3) 着用者のひげ、もみあげ、前髪等が面体の接顔部と顔面との間に入り込んだり、排気弁の作動
を妨害するような状態で防じんマスクを使用すること。
第3 防じんマスク(電離放射線障害防止規則(昭和47年労働省令第41号)第38条の規定に基づき使用す
る防じんマスクを除く。以下同じ。)の保守管理上の留意点
1 予備の防じんマスク、ろ過材その他の部品を常時備え付け、適時交換して使用できるようにするこ
と。
2 防じんマスクを常に有効かつ清潔に保持するため、使用後は粉じん、湿気の少ない場所で、次の方
法により手入れを行うこと。ただし、取扱説明書に特別な手入れ方法が記載されている場合は、その
方法に従うこと。
(1) 面体、吸気弁、排気弁、しめひも等については、乾燥した布片又は軽く水で湿らせた布片で、
付着した粉じん等や汗等を取り除くこと。
また、汚れの著しいときは、ろ過材を取り外した上で面体を中性洗剤等により水洗すること。
(2) ろ過材については、よく乾燥させ、ろ過材上に付着した粉じん等が飛散しない程度に軽くたた
いて粉じん等を払い落とすこと。
ただし、ひ素、クロム等の有害性が高い粉じん等に対して使用したろ過材については、1回使
用ごとに廃棄すること。
なお、ろ過材上に付着した粉じん等を圧搾空気等で吹き飛ばしたり、ろ過材を強くたたくなど
の方法によるろ過材の手入れは、ろ過材を破損させる他、粉じん等を再飛散させることとなるの
で行わないこと。
また、ろ過材には水洗して再生使用できるものと、水洗すると性能が低下したり破損したりす
るものがあるので、取扱説明書等の記載内容を確認し、水洗が可能な旨の記載のあるもの以外は
水洗してはならないこと。
(3) 取扱説明書に記載されている防じんマスクの性能は、ろ過材が新品の場合のものであり、一度
使用したろ過材を手入れして再使用(水洗して再生使用することを含む。)する場合は、新品時
より粉じん捕集効率が低下していないこと及び吸気抵抗値が上昇していないことを確認して使用
すること。
3 次のいずれかに該当する場合には防じんマスクの部品を交換し、又は防じんマスクを廃棄すること。
(1) ろ過材について、破損した場合、穴があいた場合又は著しい変形を生じた場合
(2) 面体、吸気弁、排気弁等について、破損、き裂、著しい変形を生じた場合又は粘着性が認めら
れた場合
(3) しめひもについて破損した場合又は弾性が失われ、伸縮不良の状態が認められた場合
(4) 使い捨て式防じんマスクにあっては、使用限度時間に達した場合又は使用限度時間内であって
も、作業に支障をきすような息苦しさを感じたり著しい形くずれを生じた場合
4 防じんマスクは、積み重ね、折り曲げ等により面体、連結管、しめひも等について、き裂、変形等
の異常を生じないように保管すること。なお、保管に当たっては、直射日光の当たらない場所に専用
の保管場所を設け、管理状況が容易に確認できるようにすること。
5 使用済みのろ過材及び使い捨て式防じんマスクは、付着した粉じんが再飛散しないように容器又は
袋に詰めた状態で廃棄すること。
第4 その他
昭和61年3月29日付け基発第178号「簡易防じんマスクの取り扱いについて」でいう簡易防じんマ
スクについては、臨時の粉じん作業等に限り使用を認めてきたものであるが、この取扱は、従前どお
り認めるものとする。
別添
基発第505号の2
平成8年8月6日
日本呼吸用保護具工業会会長 殿
労働省労働基準局長
防じんマスクの使用、選択等について
労働基準行政につきましては、日頃から格別の御協力を賜り厚く御礼申し上げます。
さて、労働省では防じんマスクの適切な使用、選択を図るため、別添写のとおり平成8年8月6日付け
基発第505号をもって都道府県労働基準局長あて通達したところであります。
つきましては、貴工業会におかれましても会員企業等に対し、下記の事項について関係事業場に対して
専門家の立場から指導するよう周知方お願いいたします。
記
1 防じんマスクの販売に際しては、防じんマスクの使用方法、保管方法、廃棄方法等について、具体的
に指導すること。
2 防じんマスクの装着、管理状況等について、不適切な状態を把握した場合には、その是正について指
導すること。
3 関係事業場から防じんマスクの使用条件、管理方法について説明等を求められた場合には、適切に対
応すること。