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改正履歴
基発第383号
平成6年6月23日
建設業における労働災害は、他産業に比べて多く、全産業の死亡災害の約4割、休業4日以上の死傷災
害の約3割を占めており、建設業の労働災害対策は、労働基準行政の最重要課題となっている。
その中でも、近年、元方事業者となることが多い総合工事業者の直接施工が減少していく中にあって請
負人となることが多い専門工事業者の施工比率が高まっており、労働者の死亡災害をはじめとして様々な
休業災害に占める専門工事業者の割合が増加してきている。死亡災害の大幅な減少を期すためには、元方
事業者による安全管理活動の充実と併せ、工事の施工を直接担当し、請負人となることが多い専門工事業
者の安全管理能力の向上及び積極的な安全管理活動の実施が不可欠となっている。
しかしながら、多くの専門工事業者においては、安全管理のノウハウを十分有していないこと、安全衛
生教育を実施できる人材を確保しにくいこと等の理由から、安全管理活動の実施状況は低調である。
このため、これらの専門工事業者を対象に、安全管理計画の作成、安全衛生教育の実施をはじめとする
自主的な安全管理活動の支援等により、労働災害の未然防止を図ること等を目的に、別添「専門工事業者
安全管理活動等促進事業実施要綱」に基づき、専門工事業者安全管理活動等促進事業を実施することとし
たので、下記に留意し、その効果的な推進に遺憾なきを期されたい。
記
1 事業の対象
専門工事業者安全管理活動等促進事業は、専門工事業者のうち労働省労働基準局長が指定する業種
(以下「指定業種」という。)に属する専門工事業者の集団を対象にして行う安全管理活動等促進事業
と、業種を問わず専門工事業者を対象に行う労働災害防止啓発事業から成るが、平成9年度から平成11
年度の指定業種は、鉄筋工事業、左官工事業、塗装工事業及び造園工事業の4業種とすること。
2 行政の指導、援助等
本事業は、建設業労働災害防止協会に委託して行うものであるが、行政としても、その円滑な実施を
図るため、必要な協力、援助に努めること。
なお、建設業労働災害防止協会の都道府県支部から指定された専門工事業者集団の概要、事業の実施
計画、実施状況等について資料が送付されるので、参考とされたいこと。
専門工事業者安全管理活動等促進事業実施要綱
1 趣旨
専門工事業者安全管理活動等促進事業は、[1]建設工事の施工を直接担当する専門工事業者が行う安
全管理計画の作成、安全衛生教育の実施をはじめとする自主的な安全管理活動を支援すること、[2][1]
の自主的な安全管理活動の支援のフォローアップを行うこと、[3]地域単位での啓発の場を設けること
等により、労働災害の未然防止及び専門工事業者の安全意識の高揚を図ることを目的とする。
2 事業の概要
専門工事業者安全管理活動等促進事業は、専門工事業者から成る集団に対して行う安全管理計画の作
成等を支援する安全管理活動促進事業及び当該事業のフォローアップ事業並びに地域単位で専門工事業
者に対し労働災害の防止を啓発する労働災害防止啓発事業から成る。
3 事業の実施
専門工事業者安全管理活動等促進事業は、労働省から委託を受けた建設業労働災害防止協会(以下
「建災防」という。)が実施する。
4 安全管理活動促進事業
(1) 安全管理活動促進事業(以下「促進事業」という。)の対象
促進事業の対象は、労働省労働基準局長が労働災害の発生状況等を勘案してあらかじめ指定する
業種(以下「指定業種」という。)に属する専門工事業者から成る集団(以下「専門工事業者集団」
という。)とする。
指定業種は、4業種とする。
(2) 促進事業の実施期間
促進事業の実施期間は、一専門工事業者集団について3年間とする。
(3) 促進事業の内容
イ 実施体制の整備等
(イ) 安全管理活動促進センターの設置
促進事業の円滑な実施を図るため、建災防の本部に安全管理活動促進センター(以下「セ
ンター」という。)を設置する。
(ロ) 安全管理活動促進指導員の委嘱
センターは、促進事業を実施する上で必要な知識、能力を有する者を建災防の都道府県支
部(以下「支部」という。)及び指定業種ごとに原則として1名、安全管理活動促進指導員
(以下「促進指導員」という。)として委嘱し、各支部に配置する。
(ハ) 専門工事業者集団の指定
支部は、各都道府県における指定業種に属する専門工事業者の団体や各都道府県における
指定業種に属する専門工事業者のリストを基にして、促進事業の対象となる専門工事業者集
団を指定する。
(ニ) 安全管理活動促進事業協力員の配置
支部、促進指導員等と専門工事業者集団を構成する事業者(以下「構成事業者」という。)
との連絡調整等を円滑に行うため、専門工事業者集団に、安全管理活動促進事業協力員(以
下「協力員」という。)を置く。
ロ センターにおける主要実施事項
センターにおいては、支部の実施する事項が円滑に推進されるよう、次の事項を実施する。
(イ) 促進事業運営委員会の設置
有識者等から成る促進事業運営委員会を設置し、センター及び各支部における促進事業の
実施状況を管理する。
(ロ) 安全衛生教育教材の作成
指定業種別に安全衛生教材作成検討委員会を設置して、安全衛生教育教材を作成し、各支
部に送付する。
(ハ) 全国運営会議の開催等
促進事業の全国斉一的な展開を図るため、全国運営会議及び促進指導員に対する研修会を
開催する。また、各支部に対し、促進事業の円滑な実施のための指導等を行う。
(ニ) 安全衛生情報等の提供
構成事業者に対し、各支部を通じて労働災害防止に関する各種の資料、情報等を提供する。
(ホ) 労働災害防止のための調査・研究の実施
指定業種に特有な危険性、作業形態等に着目した労働災害防止のための調査・研究を行う。
(ヘ) その他
事務取扱要領、各種様式、促進事業推進用パンフレット、ポスター等を作成し、各支部等
に配布する。
ハ 支部における主要実施事項
支部においては、構成事業者が行う自主的な安全管理活動を支援するため、集団との連携を図
りつつ次の事項を実施する。
(イ) 安全管理計画作成研修会の開催
構成事業者の適切な安全管理計画の作成に資するため、構成事業者の安全管理者等を対象
として、安全管理計画の作成要領についての研修会を開催する。
(ロ) 経営首脳安全衛生セミナーの開催
構成事業者の経営者又はこれに準ずる者を対象に、安全管理の重要性についての認識をさ
らに深めるための経営首脳安全衛生セミナーを開催する。
(ハ) 安全衛生教育の実施
構成事業者の労働者が必要な技能、知識等を習得し、また、能力向上を図ることができる
ようにするため、次の安全衛生教育を実施する。
a 労働安全衛生法第19条の2に規定する能力向上教育
b 労働安全衛生法第59条第3項に規定する特別教育
c 労働安全衛生法第60条に規定する職長教育
d 労働安全衛生法第60条の2に規定する安全衛生教育
e 作業指揮者に対する教育
f その他労働者に対する安全衛生教育
(ニ) 安全パトロールの実施
建設工事現場における構成事業者の安全管理能力の向上を図るため、専門工事業の産業安
全に見識を有する者からパトロール指導員を委嘱し、建設工事現場の安全パトロールを実施
する。
(ホ) 個別安全衛生指導の実施
必要に応じ、構成事業者に対する個別安全衛生指導を行う。
(ヘ) 全国建設業労働災害防止大会への協力員等の派遣
全国建設業労働災害防止大会における事例研究への参加、他地域の専門工事業者集団との
交流等のため、協力員等を全国建設業労働災害防止大会へ派遣する。
5 安全管理活動促進フォローアップ事業
(1) 安全管理活動促進フォローアップ事業(以下「フォローアップ事業」という。)の対象
フォローアップ事業の対象は、実施期間が終了した促進事業の対象の専門工事業者集団とする。
(2) フォローアップ事業の内容
イ 実施体制の整備等
支部、促進指導員等とフォローアップ事業の対象の専門工事業者集団を構成する事業者との連
絡調整等を円滑に行うため、フォローアップ事業の対象の専門工事業者集団に、フォローアップ
事業協力員を置く。
ロ センターにおける実施事項
労働災害防止に関する各種の資料、情報等を各支部に提供する。
ハ 支部における実施事項
支部においては、構成事業者が行う自主的な安全管理活動の定着を図るため、集団との連携を
図りつつ、地域の状況に応じ次の事項を実施する。
(イ) 安全研修会等の開催
「元方事業者による建設現場安全管理指針」において元方事業者が実施する安全管理の手
法に対応して関係請負人が実施する事項の徹底を図ること等により、建設工事現場における
総合的な安全管理水準の向上を促進するため、安全研修会、安全衛生教育等を実施する。
(ロ) 安全パトロールの実施
建設工事現場における総合的な安全管理水準の向上を促進するため、専門工事業の産業安
全に見識を有する者のうちからパトロール指導員を委嘱し、建設工事現場の安全パトロール
を実施する。
(ハ) 個別安全衛生指導の実施
必要に応じ、構成事業者に対する個別安全衛生指導を行う。
6 労働災害防止啓発事業
(1) 労働災害防止啓発事業(以下「啓発事業」という。)の対象等
啓発事業は、すべての専門工事業者を対象として、労働災害の防止についての啓発を促進するた
めに行うものとする。
(2) 啓発事業の内容
啓発事業は、センター及び支部が実施することとし、センターはハを、支部はイ、ロ及びハを中
心に事業を行う。
イ 安全大会の開催
専門工事業者等の参加による安全大会を支部単位で開催する。
ロ 安全表彰の実施
他の模範となる自主的な安全管理活動を推進している専門工事業者を支部長名で表彰する。
ハ 労働災害防止啓発用ポスター、リーフレット等の作成、配付
専門工事業者の安全に対する認識をさらに深めるため、労働災害防止啓発用ポスター、リーフ
レット等を作成し、配付する。
ニ その他
イからハの事項のほか、啓発事業の円滑な運営に必要な事項を行う。
7 その他
各支部と各都道府県労働基準局との連携を図るため、各支部は、指定した専門工事業者集団の概要、
各事業の実施計画、実施状況等について、適宜、各都道府県労働基準局に資料を送付する。
(図)