交流アーク溶接機用自動電撃防止装置構造規格の一部改正について |
改正履歴
基 発 第 666 号
平成3年11月25日
各都道府県労働基準局長 殿
労働省労働基準局長
交流アーク溶接機用自動電撃防止装置構造規格の一部改正について
交流アーク溶接機用自動電撃防止装置構造規格の一部を改正する告示(平成3年労働省告示第70号)は、
平成3年10月1日に公布され、同年12月1日から適用されることとなった。
今回の改正は、近年の技術の進歩に伴う新しいタイプの交流アーク溶接機用自動電撃防止装置(以下
「装置」という。)に対応して所要の整備を図ったものであり、その概要は次のとおりである。
1 主接点に半導体素子を使用した装置について次の規定を設けたこと。
(1) 保護用接点(第8条)
(2) 温度上昇限度(第17条)
(3) 保護用接点の作動性(第19条)
2 内蔵形の装置(交流アーク溶接機の外箱内に組み込んで使用する装置をいう。)について次の規定を
設けたこと。
(1) 構造要件(第5条)
(2) 耐衝撃試験(第14条)
(3) 温度上昇試験(第17条)
3 定格値に関する規定の改正を行ったこと。(第2条、第3条)
4 構造要件に関して次の規定を設けたこと。
(1) 始動感度(第5条)
(2) 充電部分の露出部の覆い(第5条)
(3) 点検用スイッチ(第5条)
(4) 口出線(第6条)
(5) 強制冷却機能の異常時の危険防止措置(第7条)
(6) コンデンサー開閉用接点(第9条)
5 性能要件に関する次の規定の改正を行ったこと。
(1) 周囲温度(第11条)
(2) 絶縁抵抗値(第15条)
(3) 耐電圧試験電圧(第16条)
(4) 温度上昇制度の試験方法(第17条)
6 エンジン駆動の交流アーク溶接機に用いられる装置についての規定を削除したこと。
7 その他の改正を行ったこと。
(1) 表示内容(第20条)
(2) 章の区分を設けたこと。
(3) 用語の整理を行ったこと。
ついては、今回の改正の趣旨を十分に理解し、関係者への周知徹底を図るとともに、特に下記事項
に留意して、その運用に遺憾のないようにされたい。
なお、昭和50年9月4日付け基発第524号「交流アーク溶接機用自動電撃防止装置構造規格の一部改
正について」は廃止し、昭和47年9月18日付け基発第602号「労働安全衛生法及び同法施行令の施行に
ついて」の記のIIの6の(5)中「2次無負荷電圧」を「出力側の無負荷電圧」に改める。
記
1 第1条関係
(1) 「交流アーク溶接機用自動電撃防止装置(以下「装置」という。)の定格周波数」とは、装置への
入力電源の定格周波数をいうものであること。
(2) 「50ヘルツ又は60ヘルツ」とは、いわゆる商用周波数をいうものであり、50ヘルツ・60ヘルツ共
用のものも認められるものであること。
2 第2条関係
(1) 「定格入力電圧」とは、装置への入力電源の定格電圧をいうものであること。
(2) 「入力電源を交流アーク溶接機の入力側からとる装置」とはブロックダイヤグラムで表せば、次
の(イ)及び(ロ)の図に示されるようなものをいうものであること。
(イ) 主接点が入力側にある場合
(ロ) 主接点が出力側にある場合
(3) 「入力電源を交流アーク溶接機の出力側からとる装置」とは、ブロックダイヤグラムで表せば、
次の図に示されるようなものであること。
3 第3条関係
「装置の定格電流」とは、装置の使用に際して交流アーク溶接機の入力電源側の電流又は出力側の
電流が通ずる部分についての定格電流をいうものであること。
4 第4条関係
(1) 「継続負荷した場合の負荷時間の合計」とは、継続して通電した場合の通電時間の合計をいうも
のであること。
(2) 「継続負荷に要した全時間」とは、継続負荷の開始から継続負荷の終了までの時間をいうもので
あること。
(3) 「交流アーク溶接機の定格使用率」については、交流アーク溶接機の定格周波数及び定格入力電
圧のもとにおいて、当該交流アーク溶接機の定格出力電流を継続負荷した場合の負荷時間の合計と、
当該継続負荷に要した全時間との比を百分率によって表した値をいうものであること。なお、この
「定格使用率」について日本工業規格C9301(交流アーク溶接機)においては、次のように定められて
いること。
(4) 「交流アーク溶接機の定格使用率以上でなければならない」とは、装置が交流アーク溶接機の安
全装置であることにかんがみ、交流アーク溶接機の定格使用率と同じ使用率において装置が完全に
作動しなければならないという趣旨であること。
5 第5条関係
(1) 第1号の「装置を作動させ」とは、装置を交流アーク溶接機に接続し、装置に定格入力電圧を加え
ている状態をいうものであること。
(2) 第1号の「装置の主接点」とは交流アーク溶接機の入力側又は出力側に直列に接続された電磁接触
器または、半導体素子の接点をいうものであること。
(3) 第1号の「溶接棒と被溶接物との間の電圧」には、カウジング等を行う際の電極棒と加工される母
材との間の電圧が含まれること。
(4) 第1号の「容易に変更できないもの」とは、安全電圧、遅動時間及び始動感度を切り換えるための
スナップスイッチ等が、装置を使用する者が容易に操作できる位置に設けられていないものをいう
ものであること。
(5) 第2号の「割ピンを用いる等」の「等」には、溶接ねじ止め、爪付座金の使用等が含まれること。
(6) 第3号の規定は、装置による感電防止を図るため設けられたもので、接続端子等を装置に設ける際
にやむを得ず充電部分が露出してしまう場合の措置であり、接続端子等であっても充電部分の露出
がない構造とすることが望ましいこと。
(7) 第4号ロは、水又は粉じんの浸入により装置の機能に障害が生じないように、装置のふた、導線引
込部分等にガスケット、詰物等が使用されていることをいうものであること。
(8) 第4号ハの「点検用スイッチ」とは、例えば労働安全衛生規則第352条の使用前点検等の際に、作
動状態を確認するためのスイッチであること。なお、作動状態の確認は(9)の表示灯により行うもの
であること。
(9) 第4号ハの「表示灯」は、交流アーク溶接機のアークの発生を停止させたとき、装置の主接点が開
路した状態をこの表示灯の点灯又は明暗により外部から確認できるよう設けるものであること。また
(8)の点検用スイッチにより行う作動状態の確認についても、この表示灯の点灯又は明暗により行う
ものであること。
6 第6条関係
口出線は、十分な電流容量を有する「絶縁用口出線」、「ケーブル」等を使用することが望ましい
こと。
7 第7条関係
「危険を防止する措置」とは、ファン等の強制冷却機能に異常が生じ温度上昇があった場合、アー
クの発生を停止させ、交流アーク溶接機が始動できないようにする措置をいうこと。
8 第8条関係
本条は、主接点の半導体素子が熱又は過電圧により故障した場合、当該半導体素子が短絡モードと
なり危険な状態となることを防止するための保護用接点についての規定である。したがって、保護用
接点に半導体素子を用いてはならないこと。
9 第9条関係
交流アーク溶接機には力率改善のためコンデンサーを備えつけているものがあるが、このような交
流アーク溶接機に接続した場合誤作動するおそれのある装置、又は、主接点開閉時にコンデンサー回
路の電流が主接点に流れこみ主接点に損傷を与えるおそれがある装置について、コンデンサー回路開
閉のための「コンデンサー開閉用接点」を有するものでなければならないこととしたものであること。
なお、コンデンサー開閉用接点は十分な電流量を有するものであること。
10 第10条関係
(1) 「定格入力電圧の85パーセントから110パーセントまで」とは、装置に供給される交流電圧の変動
が具体的には次の表に示す値になること。
(2) 「有効に作動する」とは、交流アーク溶接機のアークの発生を停止させた時から1.5秒以内に30ボ
ルト以下の安全電圧が発生することをいい、試験により確認するものであること。
11 第11条関係
「有効に作動する」とは、上記10(2)と同様であること。なお、内蔵形の装置の試験においては、交
流アーク溶接機に装置を組み込んだ状態で又は装置の部分だけを取り出した状態で恒温槽等に入れて
行うことができるものであること。
12 第12条関係
「30ボルト以下でなければならない」とは、装置の入力側の電圧の変動(上記10(1)の表に示す。)が
あった場合で、かつ、周囲温度が摂氏零下10度から摂氏40度の範囲において、30ボルトを超えるおそれ
のない性能のものでなければならないことをいうこと。
13 第13条関係
「1.5秒以内でなければならない」とは、装置の入力側の電圧の変動(上記10(1)の表に示す。)があっ
た場合で、かつ、周囲温度が摂氏零下10度から摂氏40度の範囲において、1.5秒を超えるおそれのない
性能のものでなければならないことをいうこと。
また、入力側の周波数の変動による異常な状態を考慮して、設計上は装置の遅動時間を1.0秒程度に
しておくようにすることが望ましいこと。
14 第14条関係
(1) 「その機能に障害を及ぼす」とは、主要構造部分が脱落、破損、ゆるみ等によって作動不能、異
常な作動、過熱、短絡その他の故障を起こすことをいうものであること。
なお、(3)のキャスター付の面を下側にして行う試験においては、キャスターの破損についてはこ
こでこういう装置の破損には含まれないこと。
(2) 第2項の「高さ30センチメートルの位置から」とは、装置の外箱の外面のうち突起物がない面を下
側にして、その面とコンクリート又は鋼板の面との間の距離を30cmに保こと。
(3) 第2項の「高さ15センチメートルの位置から」とは、交流アーク溶接機の外箱(装置の外箱が外面
に表れている場合には装置の外箱を含む。)の外面のうちの1つを下側にして、その面とコンクリー
ト又は鋼板の面との間の距離を15cmに保つこと。
なお、下側にする面は試験の安全性からみて溶接機の底面とすることが望ましいこと。この場合、
キャスターが付いているものについては、キャスターの下端とコンクリート又は鋼板の面との間の
距離を15cmに保つこと。
(4) 第2項の「落下させ」とは、外力を加えずに、装置の自重により自由落下させることをいうもので
あること。
15 第15条関係
(1) 内蔵形の装置について絶縁抵抗試験を行う場合、各充電部分と交流アーク溶接機の外箱との間の
絶縁抵抗について試験を行うこととなっているが、内蔵形の装置であっても、更に装置の外箱を有
するものについては、装置の外箱と交流アーク溶接機の外箱とを共通電位(アース)として試験を行
うこと。(第16条第2項において同じ。)
(2) 格充電部分と外箱との間にサージ電圧を吸収するための素子等をもつものは、それを外して試験
を行ってさしつかえないものであること。(第16条において同じ。)
16 第16条関係
(1) 第1項の「耐える」とは、装置の機能に障害を及ぼす絶縁破壊等が生じないことをいうものである
こと。
(2) 第2項の「正弦波に近い波形」とは、その波高率(電圧の最大値を実効値で除した値)が1.34から1.
48までのものをいうものであること。
17 第17条関係
(1) 第1項の「温度上昇限度」とは、温度についての試験において測定した接点(半導体素子を用いた
ものを除く。)及び巻線の最高温度(これらのそれぞれについて温度計法(棒状温度計又は熱電対を用
いる方法)により測定し、又は絶縁被覆を有する巻線については抵抗法(導体部分の電気抵抗の変化
により温度を算出する方法)により算出した温度のうち最高の温度をいう。)と装置の周囲の温度(設
置状態における装置の中心高さで、かつ、装置から約1mの水平距離の箇所において温度計法により
測定した温度をいう。)との差をいうものであること。
(2) 第2項の「温度上昇制限」は、周囲温度摂氏40度において第3項の試験を行ったときの半導体素子
の温度をいうものであること。
なお、温度上昇限度の測定は、室温における測定値に当該室温と摂氏40度の差を加えて行う方法
によることもできるものであること。
(3) 第2項の「半導体素子の最高許容温度」とは、一般的に半導体素子の接合部の温度の許容値がこれ
に相当するものであること。
(4) 第3項の「装置を交流アーク溶接機に取り付けた状態と同一の状態で」とは、外箱のふたの位置及
び取付方向が正常な使用状態であることをいうものであること。
(5) 第3項の「10分間を周期として、定格使用率に応じて定格電流を継続負荷」とは、10分間のうち定
格電流を通電している時間が10分×〔装置の定格使用率〕となるように閉路及び開路を1回ずつ行い、
これを繰り返すことをいい、具体的には、定格使用率が60%の装置にあっては、10分間のうち6分間
通電した後4分間停電することを繰り返すことをいうものであること。
(6) 第3項のただし書きの「接点を閉路した状態で行うことができる」とは、開閉時に生ずるアーク熱
等により測定値に大きな誤差を生ずるおそれのあることを考慮し、開閉を行わず接点を閉路した状
態で通電のみを継続しても差し支えないものであるという意味であること。
18 第18条関係
(1) 第1項の「取り付け、又は組み込み」は、「取り付け」が外付け形の装置について、「組み込み」
が内蔵形の装置について表しているものであること。
(2) 第1項の「その他の損傷」とは、接点又はその附属部分の脱落、ゆるみ、摩耗、過熱等により接点
が引き続き使用することができないような状態をいうものであること。
(3) 第1項の「異常な作動」とは、試験中における開閉の不良等をいうものであること。
(4) 第2項の「出力電流の最大値が定格出力電流の値の110%未満である場合」とは主接点に半導体素子
を使用した装置を内蔵した交流アーク溶接機を想定したものであること。
(5) 第2項の「6秒間を周期として交流アーク溶接機に継続負荷し」とは、6秒間のうち閉路及び開路を
1回ずつ行い、これを取り返すことをいうものであること。
19 第19条関係
(1) 第1項の「作動し」とは、第8条のかっこ書きの機能をいうものであること。
(2) 第1項の「異常な作動」とは、1度作動した保護用接点が自然復帰すること、主接点が正常なとき
に保護用接点が誤作動すること等をいうものであること。
(3) 第2項の試験方法は次に示すこととなること。
イ 定格入力電圧の85%を加えた後、主接点を短絡させる。 10回
ロ 定格入力電圧の100%を加えた後、主接点を短絡させる。 10回
ハ 定格入力電圧の110%を加えた後、主接点を短絡させる。 10回
ニ 主接点を短絡させた後、定格入力電圧の85%を加える。 10回
ホ 主接点を短絡させた後、定格入力電圧の100%を加える。 10回
ヘ 主接点を短絡させた後、定格入力電圧の110%を加える。 10回
なお、入力電源を交流アーク溶接機の出力側からとる装置にあっては、上記イ及びニについては
定格入力電圧の下限値の85%、上記ロ及びホについては定格入力電圧の平均値、上記ハ及びヘについ
ては定格入力電圧の上限値の110%であること。
20 第20条関係
外付け形の装置で、コンデンサーを有する交流アーク溶接機に取り付けることができないものは、
その旨を表示することが望ましいこと。
21 附則関係
適用日において現に製造している装置及び現に存する装置については、旧規格が適用されること。
また、適用日において現に旧規格の型式検定に合格している型式の装置については、型式検定合格
証の有効期間中製造又は輸入されるものには旧規格が適用されること。