法令 安全衛生情報センター:ホームへ
ホーム > 法令・通達(検索) > 法令・通達

清掃工場等における爆発火災防止対策の徹底について

改正履歴


  清掃事業における労働災害の防止については、昭和57年7月28日付け基発第499号「清掃事業における
労働災害の防止について」によりその推進を図ってきたところであるが、平成2年10月19日に仙台市環境
事業局今泉工場で発生した爆発災害の重大性にかんがみ、当面の措置として、平成2年12月25日付け基安
発第23号「清掃工場等における爆発火災防止のための当面の対策について」によりその徹底を図っている
ところである。
  先般、当該工場における爆発災害の結果が別紙のとおり取りまとめられ、仙台労働基準監督署において
関係者を労働安全衛生法違反の疑いで送致したところであるが、同種災害の発生を防止するため、さらに
一層の労働災害防止対策の推進を図ることが必要となっている。
  ついては、都道府県の環境衛生主管部局との連携を一層強化するとともに清掃事業を行う地方公共団体
等に対する監督指導等においては、従来からの労働災害防止対策の徹底に加え、清掃工場における下記の
爆発災害防止対策の徹底を図られたい。
  なお、本件に関しては厚生省及び自治省に対し別添1のとおり、(社)全国都市清掃会議及び(財)地方公
務員安全衛生推進協会に対し別添2のとおり要請したので申し添える。

記
1  清掃工場等における次の施設については、汚水、汚泥等から発生するメタンその他の可燃性ガス(以
  下「ガス」という。)により爆発火災の発生のおそれがあるので、爆発火災の防止対策を徹底すること。
  (1)  汚水、汚泥等が貯留され、ガス発生のおそれがある施設(以下「ガス発生施設」という。)
  (2)  ガス発生施設に近接する施設で、ガス発生施設からのガスが漏えいし、かつ、滞留するおそれの
      ある施設(以下、「近接施設」という。)
2  各施設における爆発災害の防止対策
  (1)  ガス発生施設
    イ  発生するガスの種類、濃度等を定期的に測定し、その結果を記録し、保存すること。
    ロ  施設を密閉化し、ガスの外部への漏えいを防止するとともに、発生するガスは適正に処理するこ
      と。
        なお、密閉化することが困難な施設については、発生するガスの濃度が爆発下限界より十分低く
      なるように、通風、換気等の措置を講ずること。
    ハ  原則として着火源となるものの使用を禁止すること。
    ニ  施設内で清掃、修理、改造等の作業を行う場合は、作業を指揮する者を指名し、その者に作業の
      指揮に当たらせるとともに、次の措置を講ずること。
      (イ)  十分な換気等によるガスの除去を行うとともに、定期的にガスの濃度の測定を行うこと。
      (ロ)  やむを得ず火気等を使用する場合には、爆発火災のおそれのないことを確認するまでは、そ
          の持ち込みを禁止すること。
  (2)  近接施設
        上記(1)のハ及びニと同様の対策を講ずること。
        他の事業者に委託して行う場合には、同様の措置を講ずるよう委託事業者に対する指導を徹底す
      ること。
3  安全管理体制
  (1)  ガス発生施設については、付設のマンホール、配管及びバルブ等からのガスの漏えいの有無並び
      に当該部分の損傷、変形及び腐食等の有無等について定期的に点検を行い、その結果を記録し、保
      存すること。点検に際しては、点検時期、点検箇所、点検者等の点検基準を定めること。また、点
      検の結果、異常を認めた場合は補修等の措置を講ずること。
  (2)  ガス発生施設及び近接施設における清掃、修理、改造等の作業については、作業マニュアルを整
      備し、委託業者を含め関係者に周知徹底すること。また、当該作業中は、安全管理者等の安全担当
      者は定期的に作業場所を巡視すること。
  (3)  安全管理者等の安全担当者については、ガス発生施設等における爆発火災防止のため、その職務
      の励行を徹底させること。
4  安全衛生教育
    ガス発生施設及び近接施設における作業に従事する労働者に対して、次の事項に関する安全衛生教育
  を実施すること。また、委託事業者に対しても、当該事業者の労働者に同様の安全衛生教育を実施する
  よう指導すること。
  (1)  ガスの種類に応じた危険性に関すること。
  (2)  ガス検知の方法に関すること。
  (3)  ガスの漏えい等異常時の措置に関すること。
  (4)  爆発火災の発生等の緊急時の避難方法に関すること。

(別紙)

仙台市今泉工場における爆発災害の概要

1  発生日時  平成2年10月19日午後5時40分頃
2  発生場所  仙台市環境事業局今泉工場
              仙台市若林区今泉字上新田103
3  災害の型  爆  発
4  被災状況  死亡1名  重傷4名  計5名
5  発生状況
  (1)  工場概要
        同工場は仙台市のごみ焼却施設として、昭和60年12月から収集された生ごみ等の焼却処分、粉砕
        処理等(1日約600トン)を行っている。
        工場に搬入された生ごみ等は、まず、ごみ焼却施設の2階のプラットホームからごみピットに投
        入される。ピットのごみは、クレーンによりホッパーを経由して焼却炉へ送られ焼却処分される。
          また、ごみから発生する汚水はごみ汚水処理系統を経由して焼却炉に噴霧し処理されている。
        (図1参照)爆発はごみ汚水処理系統のごみピット排水処理室で発生した。
  (2)  ごみ汚水処理系統の概要
        ごみ汚水は、スクリーン(ごみと汚水を分離する)を通り地下2階のごみピット排水貯留槽(以
      下「第1槽」という)に貯留され、次いで、地下1階のごみ汚水調整槽(以下「第2槽」という)
      →地上2階のろ過器→地上1階のろ液貯留槽(以下「第3槽」という)の順にそれぞれ汚泥等が除
      かれた後、噴霧ポンプより焼却炉で噴霧処理される。(図2参照)爆発の発生したごみピット排水
      処理室(以下「処理室」という)は第2槽の上部に位置している。
        処理室(間口6.12m、奥行7.78m、高さ5m、容積約234.7m3)には、汚水の移送ポンプ、ろ過
      器、ろ液の噴霧ポンプ等の制御盤、給排気ファンの操作盤、ろ液の噴霧ポンプ等が設置されている。
      処理室と第2槽の間はコンクリート床で仕切られているが、2箇所に丸型マンホールが設置されて
      いる。また、角型マンホールにはごみ汚水移送管及び汲み上げ用ポンプの電気ケーブルが通じてい
      る。(図3及び参照)
        処理室には作業者は常時いることはなく、点検等で必要に応じ入るとのことである。
  (3)  災害発生の直近における処理室での作業の状況
        処理室の換気は、給気ファンによる給気と同室内のチャンバーに設置されている換気扇(換気能
      力2,400〜3,000m3/hr)により行われていたが、同室外の臭気がひどいとの理由で昭和63年2月に
      当該換気扇の稼働を停止する(この時点で処理室内は給気に伴う換気のみの状態となっている)な
      どの工事が行われていた。また、災害発生の直近においても次の工事が行われていた。
    [1]  災害発生の約3ケ月前に、第2槽からろ過器への汚水の流量が予定を下回っていることが判明
        し、平成2年10月24日から既設のごみ汚水移送管(径5cm)を新たな管(径6.5cm)に交換するた
        めの工事を外注して行うこととなっていた。
    [2]  このため、同年9月にその準備工事として、同工場の整備係により次の工事が行われた。
        イ  既設のごみ汚水移送ポンプを停止する。
        ロ  仮設のポンプを用意し、丸型マンホールを通じ第2槽内に汚水の汲み上げ用ビニルホース及
          び電気ケーブルを設置する。
            丸型マンホールには丸型の鋳鉄製の蓋が設置されていたが、当該蓋を撤去しビニルホース及
          び電気ケーブルを通すため鍵状の穴を切り抜いた半割の鋳鉄製のものに代えた。
        ハ  ろ過器から第3槽に通ずるろ液移送管を途中で切断し、上記ロのビニルホースの一端をろ液
          移送管に接続する。
    [3]  10月17日、整備係により処理室内の換気扇等が撤去された。
    [4]  10月18日、整備係により処理室のチャンバー内の排気口(換気扇等による換気のための開口部)
        がベニヤ板で閉塞された。
    [5]  10月19日午後5時40分頃、整備係が処理室で給気ファンの給気量の点検調節作業中、同室内で
        爆発が発生し作業中の5名が被災し、その後1名が死亡した。
          なお、この爆発により丸型マンホールの半割の蓋及び角型マンホールの蓋が処理室内に吹き飛
        び、同室内のビニル被覆に火炎による焼損が認められたほか、第2槽内のビニルホースの表面に
        火炎にあぶられたと思われる変色、丸型マンホール周辺の槽内上部壁面にすすの付着が認められ
        た。
6  災害発生原因
    爆発による被害は処理室及び第2槽内に及んでいることから、これらの場所における危険物など爆発
  の起因物及び着火源の双方について調査を行った。調査結果の概要は次のとおり。
  (1)  起因物については、処理室内には爆発の原因となる危険物等は見当らなかった。第2槽内には家
      庭などから出るごみの汚水が貯留されている。こうした汚水では、一般に嫌気性消化の微生物発酵
      (メタン発酵)によりメタンを主成分とする可燃性ガスの発生が知られている。このことは同工場
      で採取した汚水からも確認されたことから、爆発の起因物としては、第2槽内の汚水から発生した
      メタンを主成分とする可燃性ガスと推定された。メタンは労働安全衛生法の危険物に該当し、空気
      より軽く爆発しやすい物質である。(爆発限界5.0〜15.0 vo1%(空気中濃度)、空気比重0.4)
  (2)  当日に爆発が発生した原因は、通常と異なり、処理室でごみ汚水移送管の交換工事のための準備
      工事が順次行われていたため、次のことにより第2槽内の汚水から発生したメタンを主成分とする
      可燃性ガスが処理室内に滞留したことにある。
    [1]  丸型マンホールの蓋を鍵状の穴を切り抜いた半割の鋳鉄製のものに代えたことにより、空気よ
        り軽いメタン等の可燃性ガスが第2槽内から処理室に流入したこと。
    [2]  処理室内の換気能力が、換気扇の稼働の停止さらに排気口の閉塞により著しく低下したこと。
  (3)  着火源としては、処理室内にある電動機、スイッチ類、蛍光灯等の電気機械器具(何れも防爆構
      造となっていない)、作業者の衣服等の静電気等の可能性があるものの、断定するまでに至らなか
      った。
これらのことから、爆発の発生は、ごみ汚水移送管の交換工事のための準備工事に伴って臨時に取り付けられた丸型マンホールの半割の蓋のすき間から処理室に漏れ出たメタン等の可燃性ガスが、同室内の換気が不十分であったこととメタンは空気より軽いことから、処理室の上方に向かって拡散した結果、室内の上方には高濃度に、下方には低濃度に分布しこの間に爆発限界に入る空気との混合気が形成された。この混合気に何らかの着火源により火が着き、火炎が上方に伝ぱするとともに丸型マンホールの蓋のすき間から第2槽内の混合気に伝ぱし槽内でも爆発が生じたものと推定される。
別添1

厚生省生活衛生局長  殿
自  治  省  行政局長  殿

清掃工場等における爆発火災防止対策の徹底について

平3.12.10  基発第693号の2

  労働災害防止対策の推進につきましては、平素より格別の御協力を賜り、厚く御礼申し上げます。
  さて、清掃事業における労働災害の防止対策につきましては、従来よりその徹底を図ってきたところで
あります。しかしながら、平成2年10月19日に仙台市環境事業局今泉工場で爆発災害が起こり、5名が
被災し、内1名が死亡するという重大災害が発生いたしました。これについて、仙台労働基準監督署にお
いて関係者を労働安全衛生法違反の疑いで送致したところであります。
  今後、このような災害が再度発生することのないよう、労働災害防止対策の一層の徹底を図っていく必
要があります。
  つきましては、清掃事業を行う地方公共団体に対し、清掃工場等における労働災害防止対策の一層の推
進を図らせるとともに、清掃工場等における爆発火災を防止するため、下記(省略)の事項について周知
徹底を図られるようお願い申し上げます。

別添2

(社)全  国  都  市  清  掃  会  議議長  殿
(財)地方公務員安全衛生推進協会会長  殿

清掃工場等における爆発火災防止対策の徹底について

平3.12.10  基発第693号の3

  労働災害防止対策の推進につきましては、平素より格別の御協力を賜り、厚く御礼申し上げます。
  さて、清掃事業における労働災害の防止対策につきましては、従来よりその徹底を図ってきたところで
あります。しかしながら、平成2年10月19日に仙台市環境事業局今泉工場で爆発災害が起こり、5名が被
災し、内1名が死亡するという重大災害が発生いたしました。これについて、仙台労働基準監督署におい
て関係者を労働安全衛生法違反の疑いで送致したところであります。
  今後、このような災害が再度発生することのないよう、労働災害防止対策の一層の徹底を図っていく必
要があります。
  つきましては、貴会におかれましても、清掃工場等における爆発火災を防止するため、下記(省略)の
事項について関係する地方公共団体等に周知を図られるよう要請いたします。