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改正履歴
標記については、従来からその徹底を図ってきたところであるが、昨年5月22日、(株)熊谷組横浜支
店(仮称)野川健康センター新築工事現場において、土止め支保工の倒壊により土砂崩壊が発生し、5名
が死亡、2名が負傷するという重大災害が発生したことは誠に遺憾に堪えないところである。
当局では、本災害の重大性にかんがみ、特別調査団(団長 丸安 隆和東京大学名誉教授)を設置し、
現地調査をはじめとして災害原因の究明と同種災害の防止対策の検討を行ってきたが、今般、この調査結
果が別添のとおり取りまとめられ、これを踏まえて、関係業界団体に対し別紙のとおり要請したところで
ある。
ついては、各局においても関係事業者に対し本趣旨を周知するとともに、監督指導、計画の届出に係る
審査等に当たっては、本趣旨の徹底を図り、土砂崩壊災害の防止に万全を期されたい。
(別紙)
(社)日本建設業団体連合会 会長 殿
(社)日本土木工業協会 会長 殿
(社)建築業協会 会長 殿
(社)全国建設業協会 会長 殿
(社)全国中小建設業協会 会長 殿
土砂崩壊災害防止対策の徹底について
平2.5.25 基発第304号
労働災害の防止については、特に死亡災害の撲滅をめざして、種々の対策を推進しているところであり
ます。
しかしながら、昨年5月22日、(仮称)野川健康センター新築工事現場において、土止め支保工の倒壊
により土砂崩壊が発生し、5名が死亡、2名が負傷するという重大災害が発生したことは誠に遺憾に堪え
ないところであります。
労働省では、本災害の重大性にかんがみ、特別調査団(団長 丸安 隆和東京大学名誉教授)を設置し、
現地調査をはじめとして災害原因の究明と同種災害の防止対策の検討を行ってまいりましたが、今般、こ
の調査結果が別添のとおり取りまとめられたところであります。
ついては、貴協会におかれましては、下記事項に留意の上、適切な土砂崩壊災害防止対策を講ずるよう、
会員事業者に対し周知徹底されたく、要請します。
記
1 地質等の調査
地山の掘削の作業を行う場合において、あらかじめ、作業箇所及びその周辺の地山について地質調査
を行うことは当然のことである。特に、現場全体が傾斜地となっている場合等であって、土止め支保工
の設置箇所の地質等の状況が明らかでないときは、当該箇所について地質等の調査を行うこと。
さらに、工事の進行に伴い、掘削時に確認した実際の地質等が着工前の調査結果と異なり、設計や施
工計画の基礎となっているデータと食い違いがあることが判明したときは、施工計画の変更、部材の補
強等の必要な措置を直ちに講ずること。
2 土止め支保工の設計
土止め支保工の設計については、資材の調達上の理由、経済的な理由等を優先した設計ではなく、労
働災害の防止という目的にかんがみ、安全性を優先した設計を行うこと。
3 土止め支保工の施工
土止め支保工を組み立てる場合は、土止め支保工の部材の材質、寸法、配置、取付け時期、取付け順
序等を明記した組立図を作成し、その組立図どおりに施工すること。さらに、施工段階においては、組
立図どおりに施工されていることを必要に応じ確認し、施工精度の確保を図ること。
4 土止め支保工の計測管理
土砂崩壊のおそれのある大規模な掘削工事において使用する土止め支保工については、目視点検だけ
でなく、必要に応じ、土圧計、歪み計、傾斜計、トランシットその他の機器による監視を行うこと。
また、アースアンカーについては、設置後に強度確認試験を実施し、その結果を記録しておくこと。
5 労働災害発生の急迫した危険がある場合の措置
土止め支保工の倒壊に直結するおそれが判明した場合等、労働災害発生の急迫した危険があるときは、
直ちに作業を中止し、労働者を安全な場所に退避させること。
6 安全管理体制等
(1) マニュアル、安全基準等に基づく店社の指導体制
土止め支保工は現場の安全施工上不可欠なものであることを十分に認識し、店社においては、そ
の設計、計算、施工についてのマニュアル、安全基準を作成する等、現場に対する指導体制を充実
すること。
(2) 施工計画の審査等
計画の届出については、法定の期日までに届け出なければならないことを徹底すること。また、
店社における施工計画の審査については、十分な資料により慎重に検討し、実効が上がるものとす
ること。さらに、審査段階での指摘事項については、現場における改善状況を必ず確認すること。
(3) 施工管理体制
土砂崩壊のおそれのある大規模な掘削作業を行う場合には、掘削作業、土止め支保工等について
十分な知識、経験を持った者を現場に常駐させるとともに、現場及び店社において、その施工内容
についてチェックできる体制を確立すること。
また、店社が行う安全パトロールについても、現場の不安全箇所の指摘にとどまることなく、現
場の施工が計画どおりに行われているかを確認すること等により現場の施工管理上の問題点の把握
に努めること。