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改正履歴
チエンソーの使用に伴う振動障害の予防については、昭和45年2月28日付け基発第134号「チエンソー
の使用に伴う振動障害の予防について」をもってその対策を示し、これについての徹底を図るほか所要の
措置を推進してきたところでもある。
今般、当該業務従事者の健康管理区分に応じた管理を進め、振動障害の予防の適正化を図るため、別添
のとおり前記通達のうち作業管理等に関する部分を含めた「チエンソー取扱い業務に係る健康管理指針」
を定めたので、関係者に周知徹底を図るとともに適切な指導を行われたい。
なお、チエンソー以外の振動工具の取扱い業務に係る健康管理についても、実情に応じて本通達(別添
2の「チエンソー取扱い作業指針」に係る部分を除く。)を準用されたい。
おって、林業の実情にかんがみ、本指針の実効が確保されるためには関係労働者の理解と協力の下に、
事業者においての作業の仕組み、労働諸条件の改善が欠かせないので、特にこの点に留意されたい。
チエンソー取扱い業務に係る健康管理指針
本指針は、チエンソー取扱い業務に従事する者の健康管理区分に応じた適切な管理を推進するための基
本となる事項を定めたものである。
事業者は、チエンソー取扱い業務に係る健康診断の結果に基づき、この指針に定めるところにより、管
理を行うこと。
1 健康管理の区分
健康診断の結果に基づき、作業者の健康管理区分を次のように区分する。
管理A
問診、視診、触診において振動の影響とみられる自・他覚症状が認められないか、又は、認められても
一時的であり、かつ、末梢循環機能検査、末梢神経機能検査及び筋力、筋運動検査等の所見(以下「検査
所見」という。)もおおむね正常の範囲にあり、振動ばく露歴に係る調査結果(以下「調査結果」という。)
と併せ、総合的にみて振動による障害がほとんどないと認められるもの。
管理B
[1] 問診、視診、触診において振動の影響とみられる各種の自・他覚症状が認められ、かつ、第一次健
康診断及び第二次健康診断の検査所見において正常の範囲を明らかにこえ又は下廻るものがいくつか認
められ、調査結果と併せ総合的にみて振動による障害を受け又はその疑いがあると認められるが療養を
要する程度ではないと認められるもの。
[2] 管理Cに該当していたが、その後軽快して療養を必要としなくなったと認められるもの。
管理C
振動による影響とみられるレイノー現象、しびれ、痛み、こわばり、その他の自・他覚症状があり、か
つ、問診、視診、触診の所見及び検査所見並びに調査結果と併せ総合的にみて振動による障害が明らかで
あって、療養を必要とすると認められるもの。
注1 健康診断と健康管理区分との関係については、別添1の図を参照すること。
2 管理区分Cの判断に当っては、振動障害の業務上外の認定基準(昭和50年9月22日基発第501
号)を参考にすること。
2 健康管理区分に基づく事後措置
管理Aの者
別添2の「チエンソー取扱い作業指針」(以下「作業指針」という)に従ってチエンソーを取り扱う
業務に従事して差し支えないこと。
管理Bの者
(1) 経過を観察しつつ次の基準に従ってチエンソーを取り扱う業務に従事して差し支えないこと。
(イ) 作業の組合せを変える等により、1日の取扱い時間を作業指針に示すところよりも少なくする
こと又は一週若しくは1月の取扱い日数を健康診断を受ける前より少なくすることにより、振動
へのばく露を少なくすること。
この場合において、その程度は振動によって受けた影響及び使用するチエンソーの振動の程度
に応じて定めること。
(ロ) 「作業指針」に示す対策を一層強化すること。
(ハ) (イ)、(ロ)の措置を講じた後において自・他覚症状の悪化があった場合には、チエンソーの取
り扱いを一時中止し、又は健康診断を受けること。
(2) 管理Cに該当していたが、軽快して療養の必要がなくなった者については、その後医師の指示が
あるまでの間は、チエンソーの取扱い業務に従事することは避けること。
なお、第一次健康診断の結果、第二次健康診断を要すると認められた者については、管理区分の
決定までの間、管理Bに準じ管理を行うこと。
管理Cの者
(1) チエンソーの取扱い業務に従事することは避けること。
(2) 医師の指示により必要な療養をうけること。
3 配置時の措置等
(1) 高年令の者は、一般に振動業務への適応性が小さいとも考えられるので、チエンソーの取扱い業
務に新たに就かせることは、望ましくないと考えられること。
また、現にチエンソー取扱い業務に従事している高年令者については、チエンソーの操作時間の
短縮を考慮することが望ましいこと。
(2) 末梢循環障害、心臓疾患、重度の高血圧、中枢神経及び末梢神経系の障害、重度の運動障害があ
る者はチエンソー取扱い業務に就かせることは望ましくないと考えられること。
別添1 健康管理系統図(図)
別添2
チェーンソー取扱い作業指針
第1 事業者の措置
事業者は、本指針を遵守するとともに、本指針が労働者に守られるよう、必要な措置を講ずること。
1 チェーンソーの選定基準
次によりチェーンソーを選定すること。
(1) 防振機構内蔵型で、かつ、振動及び騒音ができる限り少ないものを選ぶこと。
(2) できる限り軽量なものを選び、大型のチェーンソーは、大径木の伐倒等やむを得ない場合に限っ
て用いること。
(3) ガイドバーの長さが、伐倒のために必要な限度を超えないものを選ぶこと。
2 チェーンソーの点検・整備
(1) チェーンソーを製造者又は輸入者が取扱説明書等で示した時期及び方法により定期的に点検・整
備し、常に最良の状態に保つようにすること。
(2) ソーチェーンについては、目立てを定期的に行い、予備のソーチェーンを業務場所に持参して適
宜交換する等常に最良の状態で使用すること。
また、チェーンソーを使用する事業場については、「振動工具管理責任者」を選任し、チェーン
ソーの点検・整備状況を定期的に確認するとともに、その状況を記録すること。
3 チェーンソー作業の作業時間の管理及び進め方
(1) 伐倒、集材、運材等を計画的に組み合わせることにより、チェーンソーを取り扱わない日を設け
るなどの方法により1週間のチェーンソーによる振動ばく露時間を平準化すること。
(2) 使用するチェーンソーの「周波数補正振動加速度実効値の3軸合成値」を、表示、取扱説明書、製
造者等のホームページ等により把握し、当該値及び1日当たりの振動ばく露時間から、次式、別紙の
表等により1日8時間の等価振動加速度実効値(日振動ばく露量A(8))を求め、次の措置を講ずること。
日振動ばく露量
(a[m/s2]は周波数補正振動加速度実効値の3軸合成値、
T[時間]は1日の振動ばく露時間)
ア 日振動ばく露量A(8)が、日振動ばく露限界値(5.0m/s2)を超えることがないよう振動ばく露時
間の抑制、低振動のチェーンソーの選定等を行うこと。
イ 日振動ばく露量A(8)が、日振動ばく露限界値(5.0m/s2)を超えない場合であっても日振動ばく
露対策値(2.5m/s2)を超える場合には振動ばく露時間の抑制、低振動のチェーンソーの選定等の
対策に努めること。
ウ 日振動ばく露限界値(5.0m/s2)に対応した1日の振動ばく露時間(以下「振動ばく露限界時間」
TLという。)を次式、別紙の表等により算出し、これが2時間を超える場合には、当面、1日の振
動ばく露時間を2時間以下とすること。
振動ばく露限界時間
(a[m/s2]は周波数補正振動加速度実効値の3軸合成値)
ただし、チェーンソーの点検・整備を、製造者又は輸入者が取扱説明書等で示した時期及び
方法により実施するとともに、使用する個々のチェーンソーの「周波数補正振動加速度実効値
の3軸合成値」aを、点検・整備の前後を含めて測定・算出している場合において、振動ばく露
限界時間が当該測定・算出値の最大値に対応したものとなるときは、この限りでないこと。
なお、この場合であっても1日のばく露時間を4時間以下とすることが望ましいこと。
エ 使用するチェーンソーの「周波数補正振動加速度実効値の3軸合成値」が把握できないものは、
類似のチェーンソーの「周波数補正振動加速度実効値の3軸合成値」aを参考に振動ばく露限界
時間を算出し、これが2時間を超える場合には、1日の振動ばく露時間を2時間以下のできる限り
短時間とすること。
(3) チェーンソーによる一連続の振動ばく露時間は、10分以内とすること。
(4) 事業者は、作業開始前に、(2)ウ及びエに基づき使用するチェーンソーの1日当たりの振動ばく露
限界時間から、1日当たりの振動ばく露時間を定め、これに基づき、具体的なチェーンソーを用いた
作業の計画を作成し、書面等により労働者に示すこと。
なお、事業者は、同一労働者が1日に複数のチェーンソー等の振動工具を使用する場合には、個々
の工具ごとの「周波数補正振動加速度実効値の3軸合成値」等から、次式により当該労働者の日振動
ばく露量A(8)を求めること。
日振動ばく露量
(ahv(rms)iはi番目の作業の3軸合成値、Tiはi番目の作業のばく露時間、
nは作業の合計数、Tvはn個の作業の合計ばく露時間)
(5) 大型の重いチェーンソーを用いる場合は、1日の振動ばく露時間及び一連続の振動ばく露時間を更
に短縮すること。
4 チェーンソーの使用上の注意
(1) 下草払い、小枝払い等は、手鋸、手おの等を用い、チェーンソーの使用をできる限り避けること。
(2) チェーンソーを無理に木に押しつけないよう努めること。また、チェーンソーを持つときは、ひ
じや膝を軽く曲げて持ち、かつ、チェーンソーを木にもたせかけるようにして、チェーンソーの重
量をなるべく木で支えさせるようにし、作業者のチェーンソーを支える力を少なくすること。
(3) 移動の際はチェーンソーの運転を止め、かつ、使用の際には高速の空運転を極力避けること。
5 作業上の注意
(1) 雨の中の作業等、作業者の身体を冷やすことは、努めて避けること。
(2) 防振及び防寒に役立つ厚手の手袋を用いること。
(3) 作業中は軽く、かつ、暖かい服を着用すること。
(4) 寒冷地における休憩は、できる限り暖かい場所でとるよう心掛けること。
(5) エンジンを掛けている時は、耳栓等を用いること。
6 体操等の実施
筋肉の局部的な疲れをとり、身体の健康を保持するため、作業開始前、作業間及び作業終了後に、
首、肩の回転、ひじ、手、指の屈伸、腰の曲げ伸ばし、腰の回転を主体とした体操及びマッサージを
毎日行うこと。
7 通勤の方法
通勤は、身体が冷えないような方法をとり、オートバイ等による通勤は、できる限り避けること。
8 その他
(1) 適切な作業計画を樹立し、これに見合う人員を配置すること。
(2) 目立ての機材を備え付けるようにすること。
(3) ソーチェーンの目立て、チェーンソーの点検・整備、日振動ばく露量A(8)に基づくチェーンソー
の適正な取扱いについての教育を行うこと。
(4) 暖房を設けた休憩小屋等を設置すること。
(5) 防振手袋、耳栓等の保護具を支給すること。
第2 労働者の措置
労働者は、第1の1から8までに掲げる事項を遵守するとともに、振動障害の予防のため事業者が講ず
る措置に協力するように努めること。
別紙(PDF:57KB)