安全衛生情報センター
有機溶剤中毒予防規則(昭和35年労働省令第24号)は、昭和35年10月31日に公布され、昭和36年1月1日 から施行されることとなった。 最近における科学技術の進歩に伴い、産業の各分野で使用される有機溶剤の種類と量は著しい増加を示 し、労働省がこれら有機溶剤による中毒にかかる危険性もまた強まっているが、特に、昨年夏ベンゼンを 含有するゴムのりによる中毒が社会的問題となったことを契機として、有機溶剤による中毒予防対策の充 実を図ることが労使その他関係者の強い関心の的となっていたところである。 本規則は、このような情勢の下に、次の諸点を基本方針として制定されたものである。 第1に、有機溶剤と呼ばれるもののうちから、現に使用されているもので、人体に対し有害な作用を及 ぼすことが明らかなものを対象とし、その蒸気を吸入することによって生ずる中毒の予防を目的とするこ と。 第2に、有機溶剤による中毒の予防に必要な事項のうち、現行労働安全衛生規則に規定されていない事 項及び規定されてはいるが更に具体的に規定する必要がある事項について、単独の規則を制定して規制す ることとし、その他の事項については、労働安全衛生規則に規定するところによること。 第3に、本規則が対象とする有機溶剤及び有機溶剤含有物を、その有害性に応じて3種類に区分し、それ ぞれの区分に応じて、必要な規制を加えること。 第4に、有機溶剤による中毒の予防に必要な措置の技術的基準については、現在のところ医学的、工学 的に未解明の点が少なくないが、それらの諸点については今後の研究の進歩にまつこととし、現段階にお ける研究成果に基づき、法的規制を加えることが妥当と認められる限度において、技術的基準を定めるこ と。 本規則は、専門的技術的事項を内容とし、また適用業種も極めて多岐にわたっているが、本規則運用の 成否については、労使その他関係者の等しく注目するところであり、その結果如何は、今後の労働衛生行 政ひいては労働基準行政の運営に多大の影響を与えるものといえる。 よって、本規則の施行にあたっては、上記の制定の趣旨を十分に理解し、労使一般に周知徹底せしめる とともに、特に下記事項に留意して、これが運用に遺憾なきを期せられたい。
第1 他の法令との関係 1 労働安全衛生規則との関係 本規則は、前記のとおり、有機溶剤による中毒の予防に必要な事項のうち、現行労働安全衛生規則に 規定されていない事項及び規定されてはいるが、更に具体的に規定する必要がある事項について規定し たものであり、両規則の規定が競合する部分については、労働安全衛生規則を一般法とすれば、これに 対して特別法の関係に立つものであること。従って両規則の規定が競合する場合には、本規則の規定が 優先し、本規則に規定されていない事項については、労働安全衛生規則の規定が適用されるものである こと。 2 ベンゼンを含有するゴムのりを労働基準法第48条の有害物に指定する省令との関係 労働基準法第48条の有害物を指定する省令附則第3項及び第4項の規定により、その製造等を認められ たベンゼンを含有するゴムのりを製造し、又は使用する等の場合において、当該ゴムのりが本規則にい う有機溶剤含有物に該当するときは、本規則の適用を受けるものであること。ただし、同省令附則第3 項の許可を受けて当該ゴムのりを製造し、又は使用している業務については、本規則第2章及び第3章の 規定を満たしているものとして取り扱うこと。 3 消防法及び毒物及び劇物取締法との関係 本規則の規制の対象となる有機溶剤及び有機溶剤含有物のうちには、消防法及び毒物及び劇物取締法 の規制を受けるものがあるが、これらの両法においても、区分の名称、掲示等について規定しているの で、本規則によるものと混同しないよう、事業場に対する指導に努めること。 第2 第1章関係 1 第1条関係 (1) 第1項第1号の「常温」とは攝氏15度ないし20度をいい、「常圧」とは大気圧(1気圧)をいうこと。 (2) 有機溶剤の「蒸溜」は、過、混合、加熱等それぞれの業務として、第1項第3号イの業務に該 当すること。 (3) 「容器若しくは施設への注入」とは、具体的には、ドラム罐、ガロン罐その他の容器へ注入す ること又はタンク等へ導入することをいうこと。 (4) ロの業務は、有機溶剤等が過、混合撹拌又は加熱の結果、他の物と反応して有機溶剤等以外 の物に変化した場合は、その後における工程は含まない趣旨であること。 (5) ニの業務は、具体的には、こけし、陶磁器の絵付け、看板の画描き等をいうこと。 (6) ホの業務は、具体的には、紙、布等の表面のニス引き又はゴム引き、床のタイル張り、壁への 防虫剤又は防腐剤の塗布、繊維の樹脂加工等をいうこと。 (7) リの業務は、手塗り、吹付け、どぶづけ、静電塗装等その方法の如何を問わず、すべて含むも のであること。 (8) ヌの業務は、自然乾燥及び人工乾燥のいずれも含むものであること。 (9) ヲの業務は、有機溶剤等を入れたことのあるタンク内におけるすべての業務をいうものである から、当該タンク内において洗浄、塗装等を行なう業務も、チ又はリの業務としてではなく、ヲ の業務としては握されるものであること。 (10) 「有機溶剤の蒸気の発散するおそれがないタンク」とは、清掃により当該タンク内の有機剤等 が除去されたもの、入れてあった有機溶剤等を排出した後長期間を経過し、又は他の物を貯蔵す る用途に用いたため附着していた有機溶剤が蒸発し、あるいは除去されたもの等をいうこと。 (11) 有機溶剤の区分は、その毒性と蒸発速度とから有害度を決定し、有害度の高度、中等度、低度 の別に応じて、それぞれ第1種有機溶剤から第3種有機溶剤までに区分したものであり、本規則が、 この区分に応じて規制している事項の概要は次のとおりであること。 イ、有機溶剤等の許容消費量 有機溶剤等の消費量が少量な場合の適用除外において、その許容消費量を有機溶剤等の区分に 応じて定めたこと。 ロ、施設 施設については、有機溶剤等の区分に応じて、次の原則に従って規制したこと。 (イ) 第1種有機溶剤等―有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備又は局所排出装置を設けること。 (ロ) 第2種有機溶剤等―有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排出装置又は全体換気装置 の3つのうち、いずれかを設けること。 (ハ) 第3種有機溶剤等―タンク、船艙、坑又は地下室その他通風が不十分な屋内作業場に限り、有 機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排出装置又は全体換気装置の3つのうち、いずれか を設けること。 ハ、換気装置の性能 局所排出装置及び全体換気装置の性能を有機溶剤等の区分に応じて定めたこと。 ニ、健康診断 健康診断実施の義務は、第1種有機溶剤等及び第2種有機溶剤等についてのみ規定したこと。 2 第2条及び第3条関係 (1) 第2条及び第3条は、ともに有機溶剤等の消費量が少量の場合における適用除外を規定したもので あるが、第2条の規定は、作業時間1時間又は1日に消費する有機溶剤等の量が有機溶剤等の許容消費 量をこえない状態が一時的のものであっても適用されるのに対して、第3条の規定は、常態としてか 又は常にそのような状態にある場合に限り適用されるものであること。 (2) 「通風が不十分な屋内作業場」とは、天井、床及び周壁の総表面積に対する窓その他の直接外気 に向って開放しうる開口部の面積の比率が3パーセント以下の屋内作業場をいうこと。 (3) 「作業時間一時間に消費する有機溶剤等の量」は、1日に消費する有機溶剤等の量を当該日の有機 溶剤業務を行なう作業時間で除した平均値で足りるものであること。 (4) 有機溶剤等の許容消費量の算式は、それだけの量の有機溶剤等がすべて蒸発した場合でも、その空 気中における濃度が最大許容濃度をこえないよう、次の算式に、有機溶剤等の区分に応じて、それ ぞれ代表数値を代入し、それを計算して導いたものであること。
この式において C:最大許容濃度(P,P,M)
M:分子量
A:作業場の気積(m3) W:有機溶剤等の許容消費量(g) (5) 第2条第2項の「労働大臣が別に定める数値」は、有機剤含有物を用いて有機溶剤業務を行なう場 合において、その消費量のうちから有機溶剤以外の物を除くことにより蒸発する有機溶剤の量をは 握しようとする趣旨に基づくものであって、有機溶剤含有物の成分に応じて、別途告示をもって定 める予定であること。 (6) 第3条第1項第1号中、「常態としてこえないとき」とあるのは、一時的にこえることはあっても、 通常の状態としてこえなければ足りる趣旨であること。これに対して、同項第2号において「常にこ えないとき」とあるのは、タンク等通風が不十分な場所においては、一時的にこえる場合であって も、急性中毒が発生するおそれがあることによるものであること。 (7) 第3条の規定による適用の除外について、所轄労働基準監督署長の認定を受けるべきこととされた 趣旨は、第3条第1項各号に規定する事実の存否をすべて使用者の判断に委ねるときは、その恣意的 判断を誘い、本規定の適用関係が不明確になるおそれがあるため、あらかじめ所轄労働基準監督署 長をして当該事実を確認せしめることにより、本規則の厳正な運用を確保しようとしたものである こと。 3 第4条関係 (1) 所轄労働基準監督署長が認定を行なうにあたっての認定基準、実地調査の方法等については、別 途指示するところによること。 (2) 第3条の認定は、第13条の許可と異なり、一定の期間を限って行なうものではないから、当該認定 が取り消されない限り、形式的には存続する。しかし、当該認定は適用除外の効力要件ではなく、 事実確認処分であるに過ぎないから、認定後業務内容の変更等により認定事由に該当する事実が存 しくなくなった場合は、認定取消しの有無にかかわらず、第3条の規定による適用の除外は成立しな いものであること。第4項及び第5項の規定は、このような場合に当該認定を速やかに取り消すこと により、本規則の適用関係を明確ならしめようとする趣旨のものであること。 (3) 第1項第4号の「消費する有機溶剤等の量」とは、第3条第1項第1号に該当する場合は作業時間1時 間に、同項第2号に該当する場合は1日に、それぞれ消費する有機溶剤等の量をいうこと。 第3 第2章関係 1 概要 (1) 本章は、有機溶剤業務を行なう場合に発散する有機溶剤の蒸気により作業場内の空気が汚染 されることを防止するため、それに必要な施設の設置を有機溶剤等の区分及び有機溶剤業務の 態様に応じて規定したものであるが、本章においては単に施設の設置義務のみを規定したもの であり、当該施設の性能及び設置方法等については、第3章に規定するところによるものである こと。 (2) 第2条又は第3条の規定により本章の規定が適用除外される場合は、労働安全衛生規則第173条 の規定が適用される余地はないこと。 2 第5条関係 (1) 第1条第1項第3号ヲの業務は、内壁等に有機溶剤等が附着しているタンク内において行なわれ る業務であり、有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備又は局所排出装置を設けることが不可 能であるか、又は設けても効果がないため本条の規定は適用しないこととされたものであるが、 それに代えて、第25条の規定により、労働者にホースマスクを使用させなければならないもの であること。 (2) 有機溶剤業務を行なう作業場所とは、当該作業場内における個々の作業場所をいい、屋内作 業場内に更に塗装室等が設けられているときは、当該塗装室等が作業場所となるものであるこ と。従って、同一作業場内に第1種有機溶剤等に係る有機溶剤業務を行なう作業場所が2カ所以 上あるときは、それぞれの場所に本条の規定による施設を設けなければならないが、局所排出 装置の場合は、そのフードがそれぞれの作業場所に設けられていれば足りるものであること。 3 第6条関係 (1) 第1条第1項第3号ヲの業務については、全体換気装置の設置を義務づけた場合に当該装置の性 能を発散する有機溶剤の量に応じて定めることが困難なため、本条の規定は適用しないことと され、それに代えて、第25条の規定によりホースマスクの使用が義務づけられているものであ ること。 (2) 全体換気装置には、送気式と排気式があり、いずれも本条の全体換気装置に該当すること。 4 第9条関係 臨時に有機溶剤業務を行なうとは、当該事業において通常行なっている業務のほかに、一時 的必要に応じて有機溶剤業務を行なうことをいい、従って、一般的には作業時間が短期間であ るといえるが、必ずしもそのような場合に限られる趣旨ではないこと。 5 第10条関係 (1) 本条の規定により有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、又は局所排出装置の設置を省略 した場合は、第26条の規定により、労働者にホースマスク又は有機ガス用防毒マスクを使用さ せなければならないものであること。 (2) 第2号中「隔離されている」とは、反応槽等が常置してある当該屋内作業場が他の屋内作業場 から独立した別棟のものであるか、又は他の屋内作業場と同一棟内にあっても、発散する有機 溶剤の蒸気が他の屋内作業場へ拡散しないよう、両者の間が天井に達する壁等をもって遮断さ れていることをいうこと。 (3) 第2号中「労働者が常時立ち入る必要がない」とは、反応槽その他の施設を使用する有機溶剤 業務以外の業務に従事する労働者はもとより、当該有機溶剤業務に従事する労働者であっても、 反応槽等への原材料の仕込み、取出し等に際して立ち入る場合のほか、その場所において継続 して業務に従事する必要がないことをいうこと。 (4) 第2号の規定は、当該施設による有機溶剤業務について適用されるものであり、従って、当該 屋内作業場において他の有機溶剤業務を行なう場合は、当該業務については適用されないもの] であること。 (5) 第3号の「内壁、床又は天井について行なう有機溶剤業務」は、具体的には塗装、洗浄、防腐 剤の塗布等をいうこと。また、これらの業務を第13条第1項第2号の業務と区別して特に本条に おいて施設の特例を認めることとした趣旨は、これらの業務が通常事業場外に出張して行なわ れるものであり、そのつど所轄労働基準監督署長の許可を受けることは実情に合わないことに よるものであること。従って、ここにおいて「発散面が広い」とあるのは、通常携行しうる局 所排出装置によっては有機溶剤の蒸気を吸引することができない程度をいうものであること。 6 第11条関係 (1) 本条は、タンク等通風が不十分な場所において換気装置を設けることは、屋内作業場の場合 に比較して圧力損失が大きく、より以上の負担を必要とすることにかんがみ、特に作業時間が 短時間の場合に限りホースマスクによる代替を認めた趣旨であること。 (2) 「作業時間が短時間である」とは、労働者がホースマスクを装着して当該作業時間中継続し て労働に従事しても生理的に苦痛を感じない程度の時間をいう趣旨であり、マスクの種類その 他の条件によって異なるが、3時間を限度とすること。 (3) 「ホースマスク」には、吸引式、送風式又は圧縮空気式の3種類があり、いずれも本条のホー スマスクに該当すること。 7 第12条関係 (1) 第1号の「その他温熱を伴う施設」とは、加熱反応槽、熱ゴムロール等の施設をいうこと。 (2) 第1号の「排気管等」とは、排気管その他エアカーテン、ウォターカーテン等をいうこと。 (3) 第2号の「開放槽」とは、蓋のない槽であって、槽内の液面が直接作業場内の空気にさらされ ている槽をいうこと。 (4) 第2号の「水等」には、油、プラスチック等を含むこと。また「水等で覆い」とは、有機溶剤 等と水等との比重の差及び溶解能等を利用して、有機溶剤等の表面に水等の層を作り、有機溶 剤の蒸気の発散を抑制することをいうこと。 (5) 第2号の「逆流凝縮機」とは、一名還流冷却機ともいい、冷水、ブラインその他の冷媒を使っ て発散する有機溶剤の蒸気を冷却凝縮して、再び元の容器内に戻す装置をいうこと。 8 第13条関係 (1) 本条の規定による適用の除外は、第1項各号の1に掲げる事由に該当する事実が存すること及 び所轄労働基準監督署長の許可を受けたことの2つの要件が満たされた場合に成立するものであ って、そのいずれの1つが欠けても成立しないものであること。 (2) 許可を行なうにあたっては、第1項各号の1に掲げる事由に該当する事実が存するかどうか、 第2項第5号の期間及び同項第6号の措置が適当であるかどうかについて審査又は調査すべきもの であるが、その許可基準、実地調査の方法等については、別途指示するところによること。 (3) 第1項第1号の「2側面以上が開放されている」とは、作業場の2側面以上に壁その他の障壁が 全然設けられていないとをいうが、関係労働者以外の者の出入を禁止するために粗な金網で囲 んである程度のものも含む趣旨であること。 第4 第3章関係 1 概要 (1) 本章に規定する局所排出装置及び全体換気装置は、第5条から第8条までに規定する局所排出 装置及び全体換気装置並びに第10条の規定により局所排出装置の設置を省略する場合に設けた 全体換気装置をいうこと。 (2) 第16条及び第17条に規定する局所排出装置及び全体換気装置の性能は、設計上の能力をいい、 それを作業中維持することは、第18条及び第19条の規定により義務づけられるものであること。 2 第14条関係 第3号の「有機溶剤の蒸気の比重等」とは、比重その他自然気流の状態、上昇気流の有無等をい うこと。 3 第16条関係 (1) 第1項の「制御風速」とは、有機溶剤の蒸気の拡散の限界点又は拡散範囲の特定点において、 当該蒸気又はこれにより汚染された空気を捕捉し、これらをフードの開口部に入れるために必 要な最小風速をいうこと。 (2) 第2項は、局所排出装置と全体換気装置との選択が認められている場合において局所排出装置 を設けたときは、その性能を全体換気装置の性能に相当する程度まで下げうることを規定した ものであること。 4 第17条関係 (1) 第1項の1分間当りの換気量は、発散する有機溶剤の蒸気の濃度を最大許容濃度以下にするた めに必要な換気量であって、その算式は、次の式に有機溶剤等の区分に応じてそれぞれ代表数 値を代入して導いたものであること。
この式において Q:1分間当りの換気量(m3) W:1時間に消費する有機溶剤等の量(g) M:有機溶剤の分子量 C:有機溶剤の最大許容濃度 (2) 第2項第1号の作業時間1時間に蒸発する有機溶剤の量は、それぞれの作業工程における有機溶 剤の収率又は回収率等をは握することによって間接的に知ることが可能であること。また、有 機溶剤等の蒸発量あるいは消費量がは握し難い場合は、当該作業場所における空気中の有機溶 剤の濃度を測定し、それが最大許容濃度をこえているか否かを知ることにより、全体換気装置 が所定の能力を維持しているか否かを結果的に確認しうるものであること。 5 第18条関係 局所排出装置及び全体換気装置は、作業開始前及び終了後においても、十分な時間稼働させ るように指導すること。 6 第19条関係 (1) 「バッフル」とは、気流の方向を変える衝立又は風向板をいうこと。 (2) 「換気を妨害する気流」とは、車の回転、機械の振動、物体の移動等による気流の乱れ及び 窓の開放による通風等をいうこと。 (3) 換気を妨害する気流を排除する等の「等」には、気流の短絡の防止、作業場内の気圧の低下 の防止等が含まれること。 (4) 「有効に稼働させる」とは、第16条及び第17条に規定する性能が常態として維持されている ことをいうこと。 第5 第4章関係 1 第20条関係 (1) 衛生管理者は、第3条の規定により本条の規定の適用除外を受けた場合においても、なお作業 場の巡視及び衛生教育等労働安全衛生規則第18条及び第19条に規定する職務を行なわなければ ならないものであること。 (2) 「ダンパー」とは、局所排出装置の制御風速を調節するためにダクトに設けられた「しきり 板」をいうこと。 2 第21条関係 掲示場所は、作業中の労働者が見やすい場所でなければならないが、タンク、船艙等において作 業場内に掲示することが困難な場合は、作業場外であっても、作業場への出入りに際して労働者が 容易に認めうるような場所であれば足りる趣旨であること。 3 第22条関係 (1) 本条の規定は、労働者に対して、その現に取り扱っている有機溶剤等の区分を知らしめるこ とを目的とするものであるから、同一作業場において2以上の有機溶剤業務を行ない、区分の異 なる有機溶剤等を取り扱っている場合は、それらの区分を一括表示することなく、それぞれの 業務に従事する労働者が自らの取扱っている有機溶剤等の区分を知りうるように表示すべきも のであること。 (2) 表示方法については、所定の色をもって着色されたものであれば、旗、板、紙等のいずれに よるを問わないが、労働者が容易に識別しうる程度の鮮明さ及び大きさをもつものでなければ ならないこと。 4 第23条関係 (1) 有機溶剤による中毒の予防について必要な知識とは、有機溶剤の性質、有機溶剤の最大許容 濃度、有機溶剤の人体に及ぼす作用、有機溶剤等の取扱い上の注意事項、中毒発生時の応急処 置等をいうこと。 (2) 四エチル鉛を含有するガソリンを入れたことのあるタンクについては、本条の規定と同時に 四エチル鉛危害防止規制第7条の規定も適用されるが、同条第5号の措置を講じた場合は、本条 第5号ハの措置を講じたものと解すること。 (3) 第4号の「設備又は器具等」は、具体的には、命綱、吊り足場(巻き上げ可能なものに限る。)、 はしご等をいうこと。 5 第24条関係 第2項の「安全な方法」とは、監督者の指示のもとに、ホースマスクの装着及び命綱等を使用し て行なう方法をいうこと。 第6 第5章関係 1 概要 (1) 有機溶剤による中毒の予防は、換気装置の設置等による環境の改善を原則とし、保護具は、 環境の改善を期待することが困難な場合又は環境の改善のみでは不十分な場合に補足的に使用 されるものであること。 (2) 本章の規定が適用されない有機溶剤業務については、労働安全衛生規則第181条の規定は適用 される余地がないこと。ただし、当該業務について有機溶剤以外の有害な要因が存するときは、 その限度において同条の適用があること。 (3) 本規則の対象とする有機溶剤のうち、皮膚に障害を与えるもの又は皮膚から侵入して中毒を 起すものに係る有機溶剤業務については、労働安全衛生規則第182条の規定が適用されること。 (4) 本章の規定が適用される業務については、労働安全衛生規則第184条の規定が適用されること。 2 第25条関係 第1項第2号の業務は、当該タンク等において有機溶剤業務以外の業務を同時に行なっているとき は、当該業務も含むものであること。このことは、第26条第1項第1号及び第2号の業務についても 同様であること。 3 第26条関係 第1項第3号の業務は、具体的には、ビスコースを製造する工程において硫化機を開く作業等をい うこと。 第7 第6章関係 1 労働安全衛生規則との関係 本章は新たな健康診断実施の義務を規定したものではなく、労働安全衛生規則の規定に基づく健 康診断を行なうにあたっての附加的事項を規定したにとどまるものであるから、第3条又は第31条 の規定により本章の規定の適用が除外される場合においても、なお労働安全衛生規則の規定は適用 されるものであること。 2 第29条関係 (1) 本条の診断項目は、ふるいわけ検査のための項目であるから、これについて検査又は検診を 行なった結果、異常所見が認められた者については、更に精密検査を実施せしめるよう指導す ること。 (2) 診断項目についての検査又は検診の方法等については、昭和31年5月18日付基発第308号によ ること。 3 第31条関係 (1) 本条の許可は、適用除外の成立要件である点において第13条の許可と同様であるが、期間の 定めがない点については第3条の認定と同様であること。 (2) 第1項の「異常所見」とは、有機溶剤中毒の発現過程において疾病としての定型的な症状を形 成する以前の何らかの徴候を示す初期的な段階の症状をいうこと。 (3) 許可を行なうにあたっては、第1項に規定する事由に該当する事実が存するかどうか、当該健 康診断が適正に実施されたかどうか、作業方法、作業場の施設等が申請時の状態どおり維持さ れる見通しがあるかどうか等について審査又は調査すべきものであるが、その許可基準、実地 調査の方法等については、別途指示するところによること。 (4) 第3項第3号の書面は、当該健康診断を行なった医師が証明したものをいうこと。 (5) 第5項の「申請書等に記載された事項に変更を生じた場合」とは、当該変更により労働者に異 常所見を生ずるおそれがあるか否かを問わないものであること。 (6) 第6項の規定により許可を取り消す場合における有機溶剤による異常所見を生ずるおそれがあ るかどうかの認定基準については、別途指示するところによること。 第8 第7章関係 1 労働大臣が指定する有機溶剤としては、簡易測定法による測定が可能なもののうちから選定する こととし、現在のところ次の有機溶剤が予定されていること。 (1) ベンゼン (2) 二硫化炭素 (3) トルエン (4) メタノール (5) 三塩化エチレン (6) アセトン (7) 四塩化エチレン 2 測定の具体的方法については、労働環境測定指針第1集及び第2集を参考として、事業場に対する 指導に努めること。 第9 第8章関係 1 概要 本章の規定は、有機溶剤業務を行なう事業についてはもとより、それ以外の有機溶剤等を販売す る事業及び倉庫業等についても適用されるものであること。 2 第33条関係 (1) 有機溶剤等を貯蔵する場合に、現に有機溶剤の蒸気が発散し衛生上有害であれば、本条とと もに労働安全衛生規則第179条の規定が適用されるが、有機溶剤の蒸気が発散していることが必 ずしも明らかでない場合にも、本条の規定は適用されるものであること。 (2) 第1号の「設備」とは、施錠、縄による区画等をいうこと。 (3) 第2号の「設備」とは、窓、排気管等をいい、必ずしも動力により排出することを要しないこ と。なお、消防法に基づく危険物の規制に関する政令第10条第12号に規定する設備は、本条第2 号の規定を満たすものであること。