危険又は有害な業務に現に就いている者に対する安全衛生教育に関する
指針の公示について |
改正履歴
労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第60条の2第2項の規定に基づく危険又は有害な業務に現に就
いている者に対する安全衛生教育に関する指針(安全衛生教育指針第1号)を平成元年5月22日付け官報
に公示した。
本指針は、同条第1項の規定により事業者が危険又は有害な業務に現に就いている者に対して行う安全
衛生教育(以下「安全衛生教育」という。)に関して、その適切かつ有効な実施を図るため、当該教育の
内容、時間、方法及び講師並びに教育の推進体制の整備等について定めたものである。
ついては、事業者又は関係事業者団体等に対して本指針の周知を図るとともに、下記に留意のうえ当該
教育の推進に遺漏なきを期されたい。
記
1 趣旨
我が国における労働災害の動向をみると、社会経済情勢の変化、とりわけ、技術革新の急速な進展に
伴い新たな型の災害が発生している例が多くみられる。これには、新たな技術等の危険性又は有害性に
関する安全又は衛生の教育が徹底していないことがひとつの原因となっている。また、一方で技術革新
等は、労働災害を防止するうえで有効な技術や手法を開発しつつあり、これらを積極的に活用していく
ことも今後ますます重要なこととなってきている。
技術革新の進展、就業構造の変化等の社会経済情勢の変化は労働者の職場における安全と健康の確保
に少なからぬ影響を及ぼすものであるが、これらに適切に対応できるよう安全衛生管理体制の整備及び
安全又は衛生に関する教育の充実をはじめとする事業場における安全衛生水準の向上を図る必要がある。
安全衛生教育は、事業場において危険又は有害な業務に現に就いている者に対し、これらの状況に即
応した労働災害の防止のための知識等を付与することにより当該事業場の安全衛生水準の向上をめざす
ものである。
本指針は、事業者又は事業者の委託を受けた安全衛生団体等(以下「安全衛生団体等」という。)が
安全衛生教育を実施し、又はその機会を付与する場合に必要な事項を定めたものである。安全衛生教育
の実施者は、本指針の趣旨を踏まえ労働災害の動向、技術革新の進展等に対応できるよう適切かつ有効
な教育の実施に努めなければならない。
2 教育の対象者、種類
(1) 対象者
指針のU、1、(3)の「(1)又は(2)に準ずる危険有害な業務に従事する者」は、(1)又は(2)以外
の危険有害な業務であって現に存するもの又は技術革新の進展等に伴って新たに生ずるもののうち、
労働災害の発生状況等を勘案して安全衛生教育の必要性が(1)又は(2)の業務と同等の業務(具体的に
はタイヤ空気充填業務等)の従事者をいうものであること。
(2) 種類
イ 危険又は有害な業務に現に就いている者に対する安全衛生教育は、基本的には技術革新の進展等
に対応して労働災害の防止に関して新たに付与すべき知識等が生じた場合に実施するものである。
この場合の実施時期については、本来、事業者の判断に基づくものであるが、その確実な実施を
確保する観点から、次の[1]及び[2]により実施時期をある程度特定し実施することとしたものであ
ること。
なお、これら以外の場合においても、事業者は必要に応じ、危険又は有害な業務に現に就いてい
る者に対し、安全衛生教育を実施することが望ましいこと。
[1] 当該業務に関連する技術革新の進展等に応じて一定期間ごとに実施する定期教育
この「一定期間」については、最近の技術革新の進展等を勘案して当面5年とし、指針に示し
たカリキュラム(以下「学科教育」という。)により実施すること。
[2] 当該業務従業者の取り扱う機械設備等が新たなものに変わる場合等に実施する随時教育
この「場合等」には、取り扱う機械設備等の操作方法及び作業方法が大幅に変わった場合並び
に操作方法の誤りに起因して労働災害を発生させた場合が含まれること。操作方法の変更等があ
った時には学科教育に加え、運転操作方法及び点検整備等の実技に関する事項(以下「実技教育」
という。)により実施すること。なお、随時教育を実施した場合には、定期教育を実施したもの
とみなして取り扱うものとすること。
ロ 資格等の取得後概ね3年を超えて初めて当該業務に就く者、概ね5年を超えて当該業務から離れ、
再び当該業務に就く者に対しても随時教育に準じた教育を実施することが望ましいこと。
3 安全衛生教育の内容、時間、方法及び講師
安全衛生教育の内容、時間、方法及び講師については、教育の対象者ごとに別途示すこととするが、
指針の基本的な考え方は次のとおりであること。
(1) 内容
イ 学科教育の内容は、危険又は有害な業務の種類に応じ異なるが、基本的には、最近の機械設備・
作業の特徴、作業の安全化又は作業環境・作業方法の改善及び健康管理、機械設備の取扱いと点検
及び災害事例とその防止対策とした。なかでも、災害事例とその防止対策を重点と考えていること。
ロ 取り扱う機械設備が新たなものに変わる場合には、学科教育に加え、実技教育を実施することと
したところであるが、この実技教育については労働災害の発生状況、技術革新の進展等を勘案して
必要に応じ実施すべきものであること。
(2) 時間
学科教育の時間は、広く教育の機会を付与することと、教育の効果等を勘案して、1日程度とした
こと。
(3) 方法
学科教育の方法としては、例えば最近の機械設備の特徴及びその取扱いと点検並びに作業の特徴に
関する教育内容については、ビデオ、OHP等を用いた視聴覚教育、災害事例とその防止対策に関す
る教育内容については、シートを用いた事例研究等があること。
また、教材については、原則として教育内容の全般にわたるテキストを用いることとするが、上述
の教育方法に応じた各種適切な補助教材(シート、ビデオ、スライド等)を併用することが効果的で
あること。
(4) 講師
安全衛生教育の適切な実施には、講師が特に重要な位置を占めており、その人材の養成と確保が必
要である。
このため、安全衛生教育を実施する安全衛生団体等は、原則として研修等の実施により人材の養成
を図り、特に地域に配慮した人材の確保に努める必要があること。
事業者自らが行う教育の講師についても、同研修等の修了者を活用することが望ましいこと。
なお、「教育技法についての知識及び経験」とは、具体的には、教育の対象者、教育の内容等に応
じた教育方法の選択、教材の作成又は選定、講師間の調整等教育実施前の準備、教育の実施並びに教
育実施後の効果の評価方法に関する知識及び経験をいうものであること。
4 推進体制の整備等
(1) 実施計画等
安全衛生教育の実施者は、安全衛生教育が危険又は有害な業務に従事する者にとって、当該業務を
通じた計画的な教育となるよう対象者の把握、実施時期の選定等に努めるべきである。このため、安
全衛生教育の実施者には、実施責任者を選任させ、教育の対象者及び種類、実施時期・場所、教育の
方法、教材及び講師、受講予定者又は受講予定者数、修了証の様式等についての実施計画を作成させ
ることとしたこと。安全衛生団体等が実施する場合には、この他、受講料を含めた実施計画の作成が
考えられること。
なお、安全衛生団体等が安全衛生教育を実施する場合には、当該団体等の所在地を管轄する都道府
県労働基準局長は別紙様式第1号及び第2号により、安全衛生教育の実施計画及び実施結果の報告を
求めることとする。
(2) 安全衛生団体等の具備すべき要件
安全衛生教育を実施する安全衛生団体等は、教育の対象者及び種類ごとに別途示すもののほか、中
央労働災害防止協会、業種別労働災害防止協会及びその支部、指定教習機関又は公益法人であって、
かつ、次の要件を具備しているものであることが望ましいこと。
イ 労働災害の防止を事業の目的としていること。
ロ 実施責任者が選任されていること。
ハ 講師及び教材が適切であり、かつ、必要数確保されていること。
ニ 教育に必要な機械、設備、施設等が確保されていること。
ホ その他当該教育を行うに必要な事項が確保されていること。
(3) 事後措置
イ 事業者は安全衛生教育の修了者について、台帳等により個人別に教育歴を記録し、継続して管理
すること。
ロ 安全衛生団体等が安全衛生教育を実施した場合には、修了証を交付すること。
ハ 事業者又は安全衛生団体等は、修了試験、アンケート調査等により教育効果の把握に努めるもの
とすること。
5 その他
危険又は有害な業務に現に就いている者に対する安全衛生教育カリキュラムについては、引き続き必
要性の高いものから順次公表することとしていること。
別紙様式1号
別紙様式2号