圧力容器構造規格
第一編 第一種圧力容器構造規格
第三章 工作及び水圧試験(第三十九条−第六十三条) |
圧力容器構造規格
目次
第一節 溶 接
(適用範囲)
第三十九条 第一種圧力容器の圧力を受ける部分の溶接は、この節の定めるところによらなければならな
い。ただし、圧縮応力以外に応力を生じない部分の溶接については、この限りでない。
(溶接方法)
第四十条 溶接は、溶接部が安全上必要な強度を有するような方法によらなければならない。
2 溶接は、著しい曲げ応力が生ずる部分を避けなければならない。
第四十一条 溶接部(溶接金属の縁から六ミリメートル以内の部分を含む。)には、穴を設けてはならな
い。ただし、放射線検査に合格した溶接部については、この限りでない。
2 前項ただし書の放射線検査は、穴の中心から測って両側に穴の径の一・五倍以上の範囲について行わ
なければならない。
(溶接継手の効率)
第四十二条 溶接部の許容引張応力は、第三条又は第四条から求めた値に溶接継手の効率を乗じて得た値
とする。
2 前項の溶接継手の効率は、次の表の上欄に掲げる溶接継手の種類に応じて、それぞれ同表の下欄に掲
げる値による。(表)
(溶接後熱処理)
第四十三条 炭素鋼及び合金鋼の溶接部は、溶接後熱処理を行わなければならない。ただし、漏止め溶接
部、オーステナイト系ステンレス鋼の溶接部等溶接後熱処理の必要がない溶接部については、この限り
でない。
2 前項の規定にかかわらず、設置場所において溶接を行う大型の第一種圧力容器であって、溶接後熱処
理を行うことが困難なものの溶接部については、溶接後熱処理に代えて、予熱その他の方法により応力
を低減させることができる。
3 溶接後熱処理は、日本産業規格Z三七〇〇(溶接後熱処理方法)又はこれと同等と認められる規格
(以下この項において「日本産業規格等」という。)に定めるところにより、炉内で行わなければなら
ない。ただし、胴、管等の周継手等局部加熱の方法によることができると認められる溶接部の溶接後熱
処理は、局部加熱の方法によることができる。この場合において、当該日本産業規格等に定められた保
持温度又は保持時間を低減することができる場合は、現場溶接、使用材料及び構造等により当該日本産
業規格等に定める保持温度及び保持時間で当該溶接後熱処理を行うことが困難な場合又は適当でない場
合に限るものとする。
4 特殊な材料、構造等により、前項に規定する方法で溶接後熱処理を行うことが困難な場合又は適当で
ない場合には、都道府県労働局長が定める方法によることができる。
(溶接部の要件)
第四十四条 溶接部は、溶込みが十分で、かつ、割れ又はアンダカット、オーバラップ、クレータ、スラ
グの巻込み、ブローホール等で有害なものがあってはならない。
(溶接部の機械試験)
第四十五条 溶接部は、次の各号に掲げるところにより作成した試験板について、第四十七条から
第五十三条までに規定する機械試験を行い、これに合格したものでなければならない。
一 胴の長手継手の溶接を行う場合には、試験板は胴端に取り付け、かつ、溶接線が胴の長手継手と
同一直線上にあるようにして胴の長手継手と同時に溶接を行い、胴全体について一個の試験板を作る
こと。ただし、胴各節の長手継手の溶接が同一条件で行われない場合には、各節ごとに一個の試験板
を作ること。
二 胴の周継手等の溶接を行う場合(前号の試験板が胴の周継手等と同一条件で溶接され、第四十七条
から第五十三条までに規定する機械試験を行う場合を除く。)には、試験板は胴等とは別に準備して、
周継手等の溶接に引き続き同一条件によって溶接するものとし、胴全体について一個の試験板を作る
こと。
(試験板)
第四十六条 試験板は、母材が適合する日本産業規格又はこれと同等と認められる規格と同一の規格の
同一の種類に属し、かつ、同一の厚さを有する材料で作るものとし、溶接によって反りを生じないよう
にしなければならない。
2 溶接によって試験板に反りを生じた場合には、溶接後熱処理を行う前に整形しなければならない。
3 試験板は、本体の溶接部と同様に溶接後熱処理を行わなければならない。
(機械試験及び試験片)
第四十七条 試験板について行う機械試験の種類及び試験片の数は、試験板の厚さに応じ、それぞれ次の
表に掲げるとおりとする。(表)
2 機械試験における試験片は、日本産業規格B八二六五(圧力容器の構造−一般事項)又はこれと同等
と認められる規格に定めるところにより採取しなければならない。
(引張試験)
第四十八条 引張試験の方法並びに引張試験片の形状及び寸法は、日本産業規格Z三一二一(突合せ溶接
継手の引張試験方法)又はこれと同等と認められる規格に定めるところによらなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、試験片の厚さが厚いため引張試験ができない場合には、薄のこぎりでこれ
を試験可能な厚さに切り分けたものによって引張試験を行うことができる。この場合においては、切り
分けた試験片の全部が引張試験に合格しなければならない。
(引張試験の合格基準)
第四十九条 引張試験は、試験片の引張強さが母材の種類に応じ、それぞれ次の各号に定める値以上であ
る場合に、これを合格とする。
一 九パーセントニッケル鋼、アルミニウム及びアルミニウム合金、銅及び銅合金並びにチタン及びチ
タン合金(許容引張応力の値を超えて使用されるものを除く。) 許容引張応力の値の四倍の値
二 前号に掲げる母材以外のもの 母材の規格による引張強さの最小値
2 前項の引張試験において、試験片が母材の部分で切れた場合には、その引張強さが前項各号の値の
九十五パーセント以上で、かつ、溶接部に欠陥がないときは、当該引張試験に合格したものとみなす。
3 第一項の引張試験において、不合格の原因が母材の欠陥にある場合には、当該試験を無効とすること
ができる。
(曲げ試験)
第五十条 表曲げ試験片、裏曲げ試験片、側曲げ試験片及び縦曲げ試験片の形状及び寸法並びに表曲げ試
験、裏曲げ試験、側曲げ試験及び縦曲げ試験の試験方法及び試験用ジグは、日本産業規格Z三一二二
(突合せ溶接継手の曲げ試験方法)又はこれと同等と認められる規格に定めるところによらなければな
らない。
2 第四十八条第二項の規定は、曲げ試験について準用する。
(曲げ試験の合格基準)
第五十一条 曲げ試験は、試験片の溶接部の外側に長さ三ミリメートルを超える割れ(縁角に生じる小さ
な割れを除く。)が生じない場合に、これを合格とする。
(衝撃試験)
第五十二条 衝撃試験は、日本産業規格Z二二四二(金属材料のシャルピー衝撃試験方法)又はこれと同
等と認められる規格に定めるところにより、熱影響部及び溶接金属ごとにそれぞれ行わなければならな
い。この場合において、当該試験の試験温度は、第一種圧力容器の最低使用温度以下とする。
2 衝撃試験片の形状及び寸法は、日本産業規格Z二二四二(金属材料のシャルピー衝撃試験方法)に規
定するVノッチ試験片又はこれと同等と認められる規格に定めるところによるものとし、日本産業規格
B八二六五(圧力容器の構造−一般事項)又はこれと同等と認められる規格に定めるところにより採取
しなければならない。
(衝撃試験の合格基準)
第五十三条 衝撃試験の合格基準は、日本産業規格B八二六五(圧力容器の構造−一般事項)又はこれと
同等と認められる規格に定めるところによる。
(再試験を行うことができる条件)
第五十四条 第四十九条又は第五十一条の規定により機械試験に不合格となった場合及び前条の規定によ
り不合格となった場合の再試験は、日本産業規格B八二六五(圧力容器の構造−一般事項)又はこれと
同等と認められる規格に定めるところによる。
(再試験の試験片及び合格基準)
第五十五条 引張試験及び曲げ試験の再試験は、引張試験又は曲げ試験に不合格となった試験片一個につ
いて、同一の試験板又はこれと同時に作成した試験板から採取した二個の試験片によって行い、この試
験片が第四十九条又は第五十一条の規定によりともに引張試験又は曲げ試験に合格した場合に、これを
合格とする。
2 衝撃試験の再試験の合格基準は、日本産業規格B八二六五(圧力容器の構造−一般事項)又はこれと
同等と認められる規格に定めるところによる。
3 前二項において、試験板の大きさが試験片を採取するのに十分でない場合は、不合格となった試験片
を採取した試験板を作成したボイラー溶接士によって、新たに同一条件で試験板を作成することができ
る。
(放射線検査)
第五十六条 次の各号に掲げる溶接継手は、その全長について放射線検査を行い、当該検査の結果は
第五十八条各号に掲げる要件(次項及び第六十二条第一項において単に「要件」という。)を具備しな
ければならない。ただし、放射線検査を行うことが困難である溶接継手の部分については、この限りで
ない。
一 厚さが三十八ミリメートルを超える炭素鋼板で作られた胴、鏡板その他これらに類する部分の溶接
継手
二 厚さが二十五ミリメートルを超える低合金鋼板又はオーステナイト系ステンレス鋼板で作られた胴、
鏡板その他これらに類する部分の溶接継手
三 高合金鋼板(オーステナイト系ステンレス鋼板を除く。)で作られた胴、鏡板その他これらに類す
る部分の溶接継手であって、都道府県労働局長が指定するもの
四 放射性物質、致死的物質等の有害な物を入れるために気密な構造とすることが必要とされる第一種
圧力容器の溶接継手
五 第三条第一項第二号の規定を適用して許容引張応力を定めた鋼材によって作られた第一種圧力容器
の溶接継手
六 気圧試験を行う第一種圧力容器の溶接継手
2 前項各号に掲げる溶接継手以外の長手継手、周継手等は、当該継手の全長の二十パーセントに相当す
る部分(長手継手と周継手が交差する部分がある場合にあっては、当該交差する部分を含み、当該二十
パーセントに相当する部分の長さが三百ミリメートル未満である場合には、三百ミリメートルとする。)
について放射線検査を行い、その検査の結果が要件を具備しなければならない。ただし、都道府県労働
局長が放射線検査の必要がないと認めた溶接継手及び外圧のみが加わる溶接継手については、この限り
でない。
3 前二項の規定にかかわらず、長手継手の放射線検査に合格した胴の周継手であって、当該長手継手を
溶接したボイラー溶接士が長手継手を溶接した方法と同一の方法で溶接を行ったものについては、その
放射線検査を省略することができる。
(余盛りの高さ)
第五十七条 放射線検査を行う継手の余盛りは、放射線検査を行うのに支障がないものとしなければなら
ない。
2 裏当てを使用した突合せ片側溶接にあっては、裏当てが放射線検査の障害にならない限り、裏当てを
残したまま放射線検査を行うことができる。
(放射線検査の方法及び合格基準)
第五十八条 放射線検査の方法及びその結果は、母材の種類に応じ、それぞれ次の各号に掲げるところに
よらなければならない。
一 鋼材(ステンレス鋼材を除く。) 日本産業規格Z三一〇四(鋼溶接継手の放射線透過試験方法)
によって行い、第一種から第四種までのきずが当該日本産業規格に定める透過写真によるきずの像の
分類方法により一類若しくは二類であること又はこれと同等と認められる方法によって行い、これと
同等と認められる結果であること。
二 ステンレス鋼材 日本産業規格Z三一〇六(ステンレス鋼溶接継手の放射線透過試験方法)によっ
て行い、第一種から第四種までのきずが当該日本産業規格に定める透過写真によるきずの像の分類方
法により一類若しくは二類であること又はこれと同等と認められる方法によって行い、これと同等と
認められる結果であること。
三 アルミニウム及びアルミニウム合金 日本産業規格Z三一〇五(アルミニウム平板突合せ溶接部の
放射線透過試験方法)によって行い、きず点数及びきず長さが当該日本産業規格に定める透過写真に
よるきずの像の分類方法により一類若しくは二類であって、かつ、割れ若しくは銅の巻込みがないこ
と又はこれと同等と認められる方法によって行い、これと同等と認められる結果であること。
四 チタン及びチタン合金 日本産業規格Z三一〇七(チタン溶接部の放射線透過試験方法)によって
行い、きず点数が当該日本産業規格に定める透過写真によるきずの像の分類方法により一類若しくは
二類であって、かつ、割れ、溶込み不良若しくは融合不良がないこと又はこれと同等と認められる方
法によって行い、これと同等と認められる結果であること。
(超音波探傷試験)
第五十九条 第五十六条第一項各号に掲げる溶接継手(厚さ十ミリメートル以下の溶接部並びにオーステ
ナイト系ステンレス鋼及び九パーセントニッケル鋼の溶接部を除く。)であって、放射線検査が困難な
部分については、超音波探傷試験を行い、当該試験の結果は次項に規定する要件を具備しなければなら
ない。
2 超音波探傷試験は、日本産業規格Z三〇六〇(鋼溶接部の超音波探傷試験方法)によって行い、きず
エコー高さの領域及びきずの指示長さによるきずの分類が当該日本産業規格に定める試験結果の分類方
法により一類若しくは二類であるか、又はこれと同等と認められる方法によって行い、これと同等と認
められる結果でなければならない。
(磁粉探傷試験)
第六十条 第五十六条第一項第五号に掲げる溶接継手並びに放射性物質、致死的物質等の有害な物を入れ
るため気密な構造とすることが必要とされる第一種圧力容器の開口部及び強め材等の取付溶接部(以下
この項及び次条第一項において「溶接継手等」という。)は、その全長について磁粉探傷試験を行い、
当該試験の結果は次項に規定する要件を具備しなければならない。ただし、溶接継手等が非磁性のもの
である場合その他磁粉探傷試験を行うことが困難な場合については、この限りでない。
2 磁粉探傷試験は、日本産業規格Z二三二〇−一(非破壊試験−磁粉探傷試験−第一部:一般通則)、日
本産業規格Z二三二〇−二(非破壊試験−磁粉探傷試験−第二部:検出媒体)及び日本産業規格Z二三二
〇−三(非破壊試験−磁粉探傷試験−第三部:装置)又はこれと同等と認められる方法によって行う。
3 磁粉探傷試験の合格基準は、日本産業規格B八二六五(圧力容器の構造−一般事項)又はこれと同等
と認められる規格に定めるところによる。
(浸透探傷試験)
第六十一条 前条第一項ただし書に規定する場合には、溶接継手等は、その全長について浸透探傷試験を
行い、当該試験結果は第三項に規定する要件を具備しなければならない。
2 浸透探傷試験は、日本産業規格Z二三四三−一(非破壊試験−浸透探傷試験−第一部:一般通則:浸
透探傷試験方法及び浸透指示模様の分類)又はこれと同等と認められる方法によって行う。
3 浸透探傷試験の合格基準は、日本産業規格B八二六五(圧力容器の構造−一般事項)又はこれと同等
と認められる規格に定めるところによる。
(非破壊試験の再試験)
第六十二条 放射線検査の結果が要件を具備しない場合には、継手の種類に応じ、それぞれ次の各号に定
めるところにより補修及び再検査を行わなければならない。
一 第五十六条第一項各号に掲げる溶接継手にあっては、要件を具備しない原因となったきず部を完全
に除去して再溶接し、その再溶接した部分について再び放射線検査を行い、その結果が要件を具備し
なければならないこと。この場合において、同条第3項の規定は適用しない。
二 第五十六条第二項に規定する継手にあっては、当該継手の任意の二箇所(以下この号において単に
「二箇所」という。)について、次に掲げるところにより放射線検査を行わなければならないこと。
ただし、この検査に代えて、当該継手について同条第一項の規定による放射線検査を行うことができ
る。
イ 再検査の結果、二箇所が要件を具備する場合には、最初の放射線検査において要件を具備しない
原因となったきず部を完全に除去して再溶接し、その再溶接した部分について再び放射線検査を行
い、その結果が要件を具備しなければならないこと。
ロ イに規定する場合以外の場合には、当該継手の全長について放射線検査を行い、その結果が要件
を具備しない原因となったきず部を完全に除去して再溶接し、その再溶接した部分について再び放
射線検査を行った結果が要件を具備しなければならないこと。
2 超音波探傷試験、磁粉探傷試験又は浸透探傷試験の結果が、それぞれ第五十九条第二項、第六十条
第三項又は第六十一条第三項の要件を具備しない場合には、その原因となったきず部を完全に除去して
再溶接し、その再溶接した部分について再びそれぞれの試験を行い、その結果がそれぞれ第五十九条第
二項、第六十条第三項又は第六十一条第三項の要件を具備しなければならない。
第二節 水圧試験
第六十三条 第一種圧力容器は、その種類に応じ、それぞれ次の各号に掲げる圧力により水圧試験を行っ
て異状のないものでなければならない。
一 鋼製又は非鉄金属製の第一種圧力容器 最高使用圧力の一・五倍の圧力に第五項による温度補正を
行った圧力
二 最高使用圧力が〇・一メガパスカル以下の鋳鉄製第一種圧力容器 〇・二メガパスカル
三 最高使用圧力が〇・一メガパスカルを超える鋳鉄製第一種圧力容器 最高使用圧力の二倍の圧力
四 ほうろう引き又はガラスライニングの第一種圧力容器 ほうろう引き又はガラスライニング施工前
にあっては前三号に掲げる圧力、ほうろう引き又はガラスライニング施工後にあっては最高使用圧力
2 メッキを行う第一種圧力容器の水圧試験は、メッキを行った後に行うことができる。
3 大型の第一種圧力容器その他その構造が水を満たすのに適さない第一種圧力容器は、水圧試験に代え
て気圧試験を行い異状のないものでなければならない。この場合において、試験圧力は、最高使用圧力
の一・二五倍の圧力に第五項による温度補正を行った圧力とする。
4 前項の気圧試験は、最高使用圧力の五十パーセントの圧力まで圧力を上げ、それ以降最高使用圧力の
十パーセントの圧力ずつ段階的に圧力を上げて試験圧力に達した後、再び最高使用圧力まで圧力を下げ
て、この圧力において異状の有無を調べるものとする。
5 水圧試験又は気圧試験の圧力の温度補正は、次の算式により行うものとする。
この式において、Pa、P、σn及びσaは、それぞれ次の値を表すものとする。
Pa 補正された水圧試験圧力又は気圧試験圧力(単位 メガパスカル)
P 補正前の水圧試験圧力又は気圧試験圧力(単位 メガパスカル)
σn 水圧試験又は気圧試験を行うときの温度における材料の許容引張応力
(単位 ニュートン毎平方ミリメートル)
σa 使用温度における材料の許容引張応力(単位 ニュートン毎平方ミリメートル)